アメリカの公共図書館がある絵本を審査対象リストに加えた理由が物議を醸した。

「その滑稽さが事態の深刻さを損なうことがあってはならない」

 米アラバマ州にあるハンツビル・マディソン郡公共図書館が、図書館の子ども向けセクションにある本の内部審査において、「性的に露骨な」可能性がある書籍として『Read Me a Story, Stella(物語を読んで、ステラ)』という絵本を審査対象リストに一時加えていたことが10月初めに明らかになった。

 『Read Me a Story, Stella』は、メアリー=ルイーズ・ゲイによる児童向けの絵本。10か国語に翻訳され200万部を売り上げた「ステラとサム」シリーズの一冊で、本に夢中なステラという少女が幼い弟サムに読書の楽しさを教えるといった内容になっている。もちろん「性的に露骨」な内容ではなく、むしろ子どもたちに読むことを勧めたいような絵本といえる。

 では、なぜこの本が審査対象リストに入ってしまったのかというと、著者のメアリーの姓が「ゲイ」だったから。まさかと思うかもしれないが、公共図書館のエグゼクティブディレクターが米CNNに語ったところによると、本のタイトルや著者名で自動キーワード検索をかけ、「ゲイ」という単語が見つかったため、絵本に「性的に露骨な」内容が含まれている可能性があると判断されてしまったという。

 つまりそれは、同性愛者に関わる内容だったら“性的に不適切かもしれない”と図書館が考えていたということ。それは完全なる差別。

 著者であるメアリーの広報担当者はこの事態を受け、「私たちの絵本が、作者の姓がゲイだというだけで検閲対象リストに載るというのは本当にばかばかしいが、その滑稽さが事態の深刻さを損なうことがあってはならない」というコメントを発表した。

 アメリカでは、“子どもに不適切”という名目で有色人種やLGBTQ+に関わる本の閲覧を禁止または制限しようとする動きが保守派の間で広がっており、アメリカ図書館協会(ALA)によると、2023年は1月1日から8月31日の間に、図書館の資料やサービスを検閲しようとする試みが695件確認され、異議申し立ては1,915冊に及んだという。これは、「ALAが20年以上前にデータの集計を開始して以来、最も多くの図書への異議申し立てがあった2022年の同じ報告期間から20%増加しました」とのこと。

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