“第2のスノーデン”と呼ばれたリアリティ・ウィナー
2017年、米国家安全保障局(NSA)契約社員だった25歳のリアリティ・ウィナーがFBIに逮捕された。罪状は、ロシアのハッカーによる2016年アメリカ大統領選挙介入疑惑に関する報告書をメディアにリークした「国家機密の漏洩」。
「トランプ大統領誕生は、ロシア政府に仕組まれたものだった――?」トランプ政権を揺るがすそのセンセーショナルなニュースは世界中を驚愕させ、リアリティは個人の情報漏洩罪として史上最長となる懲役5年の刑を言い渡され、一躍<第ニのスノーデン(※)>として注目の的となった。
11月18日(土)より公開の映画『リアリティ』では、米演劇シーンにおいて“超新星”と評される劇作家であり、本作が映画監督デビューとなるティナ・サッターが、実際のFBI尋問音声記録をほぼリアルタイムで完全再現。何気ない会話や息遣い、咳払いひとつに至るまで<一言一句>完全再現するという独特な手法は、ベルリン国際映画祭パノラマ部門正式出品をはじめ、世界中で絶賛を集めた。
※アメリカ政府による国際的な監視システムを告発した元NSA職員。
ごく平凡な若者リアリティ・ウィナーとは何者か?
今回公開された特別映像から見えてくるのは、本作の主人公となったリアリティ・ウィナーが、「リーク事件」と聞いて一般的にイメージされるようなプロフェッショナルなスパイやサイバーテロリストなどではなく、家族と動物を愛するいたって普通の女性だということ。
事件についての特集記事を読んでリアリティ・ウィナーを知ったというティナ・サッター監督は、「政治スキャンダルの中心人物になりそうもない」ごく一般的なの20代の女性が、実際に事件の中心人物となり「普通の若い女性が、FBI捜査官と対峙する」という、予想外でドラマティックな状況に惹きつけられたという。
本作でリアリティを演じたシドニー・スウィーニーは、リアリティという人物を「すごく複雑で矛盾した側面を持っている」と分析。「女性は1つの顔しか持たないと思うのは間違いだし、彼女が持つ側面は特に多いと思う」と語り、複雑で多面的な女性であるリアリティ・ウィナーを演じたのは俳優として「楽しい」経験だったと特別映像で明かす。
シドニーと言えば、大人気ドラマ『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』『ユーフォリア/EUPHORIA』『ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾートホテル』で若者を中心に熱狂的な支持を集め、アルマーニやMiu Miuといった一流ファッションブランドのイメージキャラクターも務める、ハリウッドきっての若手人気俳優。本作では、これまでの華やかだったりエキセントリックな役とは180度違うキャラクターへと変身し、実在の人物を繊細かつ鬼気迫る演技で表現し、新境地を切り開いている。
そして、今回公開された特別映像でとくにひきつけられるのは、リアリティ・ウィナー本人が「リアリティとは何者か?」を語るシーン。リアリティは、FBI捜査官による尋問を受けて逮捕された2017年の“あの1日”への想いを明かしていく。
現在は刑務所から出所し、保護観察下に置かれながらも少しずつ日常生活を取り戻しつつある彼女だが、未だにFBI尋問についての記事を読むことも、再現を見ることもできないのだという。本作が製作・公開されたことを通して、自身の生活を見つめ、大切な家族の存在に気付くことができたという複雑な心情が、真摯な言葉で明かされていく。
リアリティ・ウィナーの人生を一変させ、深いトラウマを残すことになった“FBIによる尋問”。この衝撃の実話を、本作『リアリティ』は記録文書を忠実に再現することで、圧倒的なリアリズムと緊迫感を持って描き出す。
映画『リアリティ』は11月18日(土)シアター・イメージフォーラム、シネ・リーブル池袋ほか全国ロードショー。