アリアナ・グランデを右腕としてサポートしてきたヴィクトリア・モネ

「『Jaguar II』は今夜(アルバム・オブ・ザ・イヤーだね)! さあ行け!親友!行け行け!」ーヴィクトリア・モネが『Jaguar II』をリリースする日にアリアナ・グランデがインスタグラムストーリーズに綴って
MVで見られる70s風のファッションにも注目してほしい。ヴィクトリア・モネ『Jaguar II』に収録の「Smoke feat. Lucky Daye」
ヴィクトリア・モネが2023年8月に最新アルバム『Jaguar II(ジャガー II)』をリリースした際、「アルバム・オブ・ザ・イヤー」という最大限の祝福の言葉を送ったのは、彼女と一緒に自分の楽曲をいくつも共作してきたシンガーのアリアナ・グランデだった。
2019年にはコラボ曲「MONOPOLY」をリリースしたこともある2人だが、実は、ヴィクトリアはソングライターとしてアリアナの数々の名曲を手がけてきた。
ヴィクトリアとアリアナの付き合いは10年に及ぶもので、アリアナが2013年にデビューアルバム『ユアーズ・トゥルーリー』をリリースしたときから。同作の「Honeymoon Avenue」などで共作して以来、ヴィクトリアはアリアナがこれまでリリースしてきたすべてのアルバムに参加。

実はヴィクトリアが『Jaguar II』をリリースした同日に自身も『ユアーズ・トゥルーリー』の10周年記念作をリリースしたアリアナだったが、自身のアルバムを差し置いて、親友の最新作を「アルバム・オブ・ザ・イヤー」だと3億人以上のフォロワーに紹介した。
そのなかには、共に全米1位シングルとなった「7 Rings」と「Thank U, Next」も含まれていて、ヴィクトリアは「7 Rings」でグラミー賞の最優秀レコード賞に、同曲が収録されたアリアナのアルバム『thank u, next(サンキュー, ネクスト)』で同最優秀アルバム賞にノミネートされた。

第62回グラミー賞授賞式に出席したヴィクトリア・モネ。
<ヴィクトリア・モネが共作したアリアナ・グランデの楽曲の一部>
フィフス・ハーモニーやBLACKPINKも!多くの名曲をソングライターとして共作
カリフォルニア州サクラメントに生まれ育った現在34歳のヴィクトリアが音楽の道を進もうと志したのは、幼少期の頃。はじめはダンサーを夢見ていた彼女だったが、次第にシンガーやソングライターとしても活動したいと思うようになり、楽曲制作の分野においても才能を開花させていった。

17歳の頃からはレコーディングもするようになり、MySpaceにそれらの楽曲をアップすると、業界人の耳にも留まることに。2019年にThe Guardianに明かしたところによれば、ヴィクトリアはこの頃から自身の書いた楽曲が他のアーティストに売れるということに気がつき、どうにかそれを「私の歌声を残したまま使ってもらえないか努力」していたという。結果として、ナズやT.I.らラッパーたちの耳に留まり、彼らの楽曲にフィーチャリングで参加するようになっていった。
2015年にはEP『Nightmares & Lullabies Act 2』をリリースして、ソロアーティストとして正式にデビューしたヴィクトリアだったが、シンガーとしての活動よりも最初に大きな注目を集めたのは、アリアナらの楽曲を手がけたことで得た、ソングライターとしての手腕への評価。
ヴィクトリアは音楽シーンの最前線を担うソングライターの1人として、アリアナの楽曲の他にも、グラミー賞で最優秀R&B楽曲賞にノミネートされたクロイ X ハリーの「Do It」や、BLACKPINKとセレーナ・ゴメスによる「Ice Cream」、フィフス・ハーモニーの「Reflection」などを手がけてきた。
<ヴィクトリア・モネが共作した名曲たち>
ソロとしても覚醒!セレブたちも魅了するヴィクトリア
EP『Jaguar』でソロでも注目を集めるように
他のアーティストたちとの共作でソングライターとしての評価を高めていきながら、ヴィクトリアは2020年にリリースした5枚目のEP『Jaguar』で、ついにシンガーとしての覚醒の予感を漂わせ始める。同作はH.E.R.やカリードなどを手掛ける敏腕R&BプロデューサーであるD.マイルが全面プロデュースし、カリードとSGルイスが参加した収録曲「Experience」も高い注目を集めた。
愛はいつだって心地がいい 本物のときには
愛はあまりにほろ苦いものになる あなたのときには
私は愛を切らしてしまった あなたが捨ててしまったから
あの経験があなたを変えることを願ってる
「Experience」歌詞抜粋
ヘイリー・ビーバーやゼンデイヤなどセレブにもファン多数
もちろん、これまで多くのアーティストたちから客演やソングライターとして引っ張りだこだったことが証明しているように、セレブたちの間でもヴィクトリアの人気は高い。自身のメイク動画のBGMにヴィクトリアの楽曲を使ったこともあるヘイリー・ビーバーはその1人で、夫のジャスティン・ビーバーと一緒にヴィクトリアの最新ツアーをデートで訪れたほど。

「ヴィクトリア・モネを観に行くデートナイト」とキャプションを添えて、自身のインスタグラムにヘイリーとヴィクトリアとの写真を投稿したジャスティン。
ヘイリーのように、自身のインスタグラムの投稿などのBGMとしてヴィクトリアの楽曲を使用するセレブは多く、ジェニファー・ロペスやケリー・ローランドが自身の投稿のBGMに彼女の楽曲を使用。さらには、ほとんどBGM付きのリール動画を投稿しないゼンデイヤも、ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)の2024ウィメンズ春夏コレクションのショー会場に降臨した瞬間を収めた渾身の動画のBGMに、ヴィクトリアの「On My Mama」を使用した。
「彼女はとってもピュアな人で、だからこそ、私たちは繋がれたと私は思っています」と、大親友のアリアナ・グランデは米Billboardとのインタビューでヴィクトリアの魅力についてそう証言する。「この業界において、業界にちっとも染まっていなかったり、クレイジーなエゴを持ったりしていない人に出会うのはものすごく貴重なことなので。彼女は時代を超えるライターであり、ボーカリストであり、私が知っている最高に素敵な人の1人なので、彼女には何もかもがふさわしい!」

自身のツアーにもヴィクトリアを呼ぶなど彼女を多方面でサポートしてきたアリアナ。
「一緒に取り組んできた仕事を誇りに思っていますし、彼女がアーティストとして大きくなっていくのを見るのをものすごく楽しみにしています」とアリアナは続けた。
なぜセレブをも惹きつける?カッコ良すぎるヴィクトリアの魅力と楽曲
ヴィクトリアがオーディスンスのみならずセレブたち同業者たちも惹きつける魅力はどこにある? 彼女の魅力を、最新作『Jaguar II』の楽曲とともに紹介する。
何でも自分で!1人3役を目指す努力家
愛娘ヘーゼルや自身の母親も出演する「On My Mama」のミュージックビデオでキレッキレのダンスを見せているヴィクトリアは、元々はダンサーを志していたこともあって、ダンサーとしての実力もS級。自分で曲を書いて、歌って、踊ってと、すべてを高いレベルでマルチにこなしてみせるヴィクトリアだが、彼女にとって、複数のことをこなせるようになるのは幼少期から目標にしていたこと。

「子どもの頃から、私にとって複数のことをこなすのは大切なことでした。祖母によく言っていたのが、三拍子そろった人になりたいということでした。ダンサー兼女優兼シンガーになりたいと思っていたんです。そのなかにソングライターはありませんでしたが、クリエイターとしてのあらゆる役割を包括する存在がシンガーだと思っています」とヴィクトリアはComplexに語っている。
「On My Mama」
これはママのおかげ 地元のおかげ
私は最高にイカしてるし ルックスもいい
私のバッグには触れないよ そう願ってな
私は最高にイカしてるし ルックスもいい
「On My Mama」歌詞抜粋
娘に背中で見せる!女性のロールモデルになる女性
MVでは親子3代で共演した「On My Mama」で母親という存在にトリビュートを捧げているように、現在2歳になった娘ヘイゼルを産んですぐに取り掛かり始めた『Jaguar II』の大きなテーマの1つは、娘ヘイゼル。ヴィクトリアは娘をアルバムにも参加させており、彼女にとっての憧れの存在だったというアース・ウィンド・アンド・ファイアーとのコラボが実現した「Hollywood」には、ヘイゼルの声も収録されている。

2023年のハロウィンにパートナーであるフィットネストレーナーのジョン・ゲインズと、彼との娘ヘイゼルと一緒に『アダムス・ファミリー』の仮装を楽しんだヴィクトリア。
ヘイゼルを産んで間もなくして、スタジオで授乳もしながら育児と並行して『Jaguar II』をレコーディングしたヴィクトリア。そこには、母親になっても夢を諦めないでほしいという、娘が大きくなったときに伝えたいメッセージが込められているという。「娘には、もちろんママはあなたのことを一番に考えているけど、ママがママ自身のことも愛しているということを知ってもらいたいのです。それはすごく重要な考えだと思っています。子どもを持ったことがきっかけで自分が追いかけていたものを追いかけられなくなったことが原因で、母親と子どもの関係のイメージが悪くなってしまうという話をたくさん耳にしてきたので」とヴィクトリアはTeen Vogueに語っている。
「なので、私はそういう物語にはしないと自分に誓いました。娘が将来振り返ったときに、たとえ難しいものだったとしても、私が娘に娘の望む世界を与えただけでなく、私が自分自身にも自分の望む世界を与えたということを分かってもらえるはずです。誰1人として、夢や目標は妥協しなくていいんだということも」
「Hollywood feat. Earth, Wind, & Fire and Hazel Monét」
何のために生きる?
何のためにここにいる?
何のために呼吸する?
何のために立ち上がる?
何のためなら死ねる?
でも私はハリウッドにいる
自分に相応しくないほどビッグなことを夢見て
「Hollywood」歌詞抜粋
狙った獲物は逃さない!音楽業界の“ジャガー”がいよいよ噛みつく
幼少期の頃から、アーティストとして成功を収めるためにずっと努力を惜しまなかったヴィクトリア。「最初のEPを出した頃は、チームもなければ、マネージャーもいませんでした。本当に私1人だったんです。ツアーに出るときは、自分でヘアメイクをやって、自分でいろいろと管理して、それから音響とビデオのスタッフがいたので彼らの滞在費も私が払っていました。自分でやらなければいけないことがたくさんありました」とVultureに話したように、インディペンデントの頃にはすべてを1人でこなしていたほど。

そんな彼女が、ソングライターとしての経験を重ねながら、ヘイゼルの出産を経て、育児をしながら完成させた『Jaguar II』は、彼女がリリースする初めてのアルバムでもある。そのような記念すべきアルバムのタイトルには、2020年にリリースした『Jaguar』が引き継がれているが、そもそも直訳すると動物の“ジャガー”を意味するこのタイトルには、どのような意味が込められているのだろうか?
「Party Girls feat. Buju Banton」
パーティーガールズが忘れられない
彼女たちが世界を照らす
パーティーガールズに拍手を
彼女たちが世界を照らす
「Party Girls」歌詞抜粋
「ジャガーと聞いて思い浮かべるのは、ジャングルに生息しているということです。ジャガーたちは頻繁に目撃されるわけではありませんが、確かにジャングルには生息しています。そして、ジャングルに生息する動物の中でも屈指の噛む力を持っています。狩猟の達人でもあって、望んだ獲物を捕獲してみせます」と、ヴィクトリアはComplexとのインタビューで説明する。
そう、アリアナらのヒット曲をソングライターという形で陰から支えてきたヴィクトリアは、自らが音楽業界における“ジャガー”なる存在だということを自負しているのだ。「私にとって、音楽業界はジャングルで、私は黒いジャガーでした。私の存在は常に見えていたわけではありませんでしたか、私はいつだって、その木の葉や木々の間に存在していたのです」

大物ポップスターたちの陰に隠れている期間が長かったヴィクトリアというジャガーだが、その噛み付く力がいかに強いかは、彼女がこれまでに共作してきた大ヒット曲が既に証明している。そして、『Jaguar II』を聴けば、このジャガーが満を持して表に出てくる準備を終えたことがわかるだろう。「私はついにそこから飛び出して、明かりのもとで噛みつこうとしているのです」。待ちに待った本格的な狩猟のシーズンに入ったジャガーのこれからに注目してほしい。
<リリース情報>
Victoria Monét | ヴィクトリア・モネ
Jaguar II | ジャガーII
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<収録曲>
1. Smoke (feat. Lucky Daye)
2. Smoke (Reprise)
3. Party Girls (feat. Buju Banton)
4. Alright
5. Cadillac (A Pimp’s Anthem) 6. How Does It Make You Feel
7. On My Mama
8. I’m The One
9. Stop (Askin’ Me 4Shyt)
10. Hollywood (feat. Earth, Wind and Fire)
11. Good Bye
Photo:ゲッティイメージズ,ニュースコム