日本の長編アニメーション映画『屋根裏のラジャー』のために主題歌「Nothing's Impossible」を書き下ろした、グラミー賞受賞アーティスト、ア・グレイト・ビッグ・ワールドのイアン・アクセルにインタビュー。スタジオポノックの西村義明氏からの熱烈オファーで実現したオリジナルソング製作。「世界は残酷で愛に溢れている。 ようこそ、イマジナリの世界へ。」というタグラインを持つ映画の世界観を楽曲でどのように伝えたのか?

映画『屋根裏のラジャー』主題歌は「ナッシング・インポッシブル」

 『メアリと魔女の花』のスタジオポノックによる6年ぶりの長編アニメーション映画『屋根裏のラジャー』は、イギリスの詩人・作家のA.F.ハロルドによる小説『The Imaginary』(「ぼくが消えないうちに」こだまともこ訳・ポプラ社刊)を原作としたファンタジー超大作。

画像1: © 2023 Ponoc

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 ストーリーの主人公は、少女アマンダと彼女の想像から生まれた“誰にも見えない存在”ラジャー。現実と想像が交錯する世界で起こる、人間には見えない大冒険を通して、信じることや想像することの大切さ、そして、友情や喪失などのテーマを、スタジオポノックの美しいアニメーションで描く。

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 本作の主題歌を決めるにあたり、スタジオポノックプロデューサーの西村義明氏が求めたのは、クリスティーナ・アギレラとのデュエット曲「セイ・サムシング」で全米シングルチャート1位を獲得したア・グレイト・ビッグ・ワールド。語りかけるような柔らかな歌声で、歌詞のひとつひとつに重みを与える歌い方をするイアン・アクセルの声が頭に浮かんだのだという。

 「数ページに及ぶ美しいポエムのような手紙」で熱烈アプローチをした結果、ア・グレイト・ビッグ・ワールドのイアンとチャドは「Nothing's Impossible(「ナッシングス・インポッシブル)」を製作。デュエット相手に「ファイト・ソング」で知られるレイチェル・プラッテンを迎え、壮大なバラードを通して「不可能はない」という、映画とリンクするメッセージを歌う。

ア・グレイト・ビッグ・ワールドのイアン・アクセルにインタビュー

画像: ア・グレイト・ビッグ・ワールドのイアン・アクセルにインタビュー

スタジオポノックプロデューサーの西村義明氏はお子さんと寝る前に「セイ・サムシング」を聴くなど、100回以上はあの曲を聴いていらっしゃるそうです。あなたの歌声について「透明であり純粋であり、心の内部に染み入りながら抱擁するような歌声」と評しており、その歌声こそが主題歌をオファーした理由だったそうですが、それを聞いてどう思われましたか?

本当に光栄でした。西村さんから数ページに及ぶ美しいポエムのような手紙が届いたんです。映画や僕たちの音楽について熱く綴られており、彼がどのような楽曲を求めているか、どのようなテーマが合っていると思うか、歌詞は脚本そのままではない方がいいなど、いろいろと意見ももらえました。とくに記憶に残っているのは、“生きていた、生きている、これからも生きる”という映画のメッセージに関するくだり。複雑でヘビーなテーマを持つ映画なので、それを楽曲で伝えるのは簡単なことではありませんが、西村さんは僕たちならばできると思ってくれたのです。

この曲を作るのが難しかった理由はどこにあったのでしょうか?

僕たちは曲を作るときは1曲をミニストーリーとして考えているのですが、映画が伝えるいくつかのテーマやメッセージのなかからどれを選び、どう伝えることが正しいのかを決めるのが難しかったです。“人生には喜びと苦しみが共存していて、すべての瞬間に奇跡が起きているから美しい”というメッセージをどのように楽曲で表現するのか? しかも子どもにも伝わらなくてはいけない。曲を作りながら、息子との会話や関係を思い起こしましたね。“離れていても一緒だよ、去ってしまった人たちも私たちの中で存在し続けるよ”という考えは親子で話してきたことなので、非常にパーソナルな製作でした。それも、製作を複雑にした理由でもあるんだと思います。

画像3: © 2023 Ponoc

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「ナッシングズ・インポッシブル(意味:不可能はない)」というタイトルにはどのように辿りついたのでしょうか?

僕たちはいつもメロディから作ります。僕がピアノを弾きながら歌い、チャドも歌い、そこから歌詞が生まれていくことが多い。メロディを作っているときは何も考えなくなり、独特のゾーンに入っていくんですが、そこからふと歌詞が生まれることがあり、そこを中心に制作を進めていく。「ナッシングズ・インポッシブル」もメロディから生まれたフレーズです。“人生にはいたるところに魔法と美があり、私たちには理解しきれないことも多いけど、私たちにはお互いという存在がいて、いつもつながっている”という感覚を楽曲を通して呼び起こしたかったのですが、作りながら「ナッシングズ・インポッシブル」がしっくりきたのです。そして、スタジオポノック側も気に入ってくれました。

楽曲製作の過程でスタジオポノック側と何度もミーティングを重ねたそうですね。

最初に、西村さんとZoomで数時間話し合いました。アイディアを出し合ったり、ストーリーの意味について深掘りしたり。そこから、私とチャドでバースとコーラスを書いて、送って、先方からその方向性でいってほしいとコメントをもらって、という感じで、スタジオ側とのコラボレーションを通して作られた楽曲なのです。彼らのディテールへのこだわりには目を見張るものがあります。僕らが歌詞を送ったら、Zoomで言葉のチョイスなどを議論して、非常に細かい意見をくれたのです。製作の励みになりましたね。

映画をご覧になって、どのシーンが楽曲とのリンクを最も強く感じましたか?

とてもエモーショナルでパワフルな映画で、何度か涙してしまいました。ロジャーが、自分はすべてを見てきたと言うシーンがあるんです。私たちは大人になると、まわりに存在する美やその時の瞬間を見落としがちになる。しかし、イマジナリーであるロジャーの人生はとても短くはかない。だからこそ彼は物事を当然のことと考えず、それがゆえにすべてを見ることができる。その部分には強く共感しました。楽曲の出だしの一節「There is magic all around. It's right there waiting to be found(この世界のたくさんの奇跡がきみの近くで見つかるのを待っている)」とリンクしますよね。

画像4: © 2023 Ponoc

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ア・グレイト・ビッグ・ワールドはあなたとチャドさんのハーモニーの美しさで知られていますが、今回はレイチェル・プラッテンさんとのデュエットになりましね。最初にレイチェルさんの名前が出たときはびっくりしたそうですが、その経緯について教えてもらっていいですか?

楽曲を作る前から、西村さんには女性とのデュエットにしたいと言われていました。この曲にぴったりの歌声を持つのは誰だろうとチャドと相談を続けていたのですが、一向にアイディアが浮かばなかった。そんななか、西村さんからレイチェルの名前が出たのです。僕らは『え? レイチェル?僕らが15年前から知ってるあのレイチェル!?』と驚きました。レイチェルとはお互いがNYでライブをしていた駆け出し時代からの仲で、『彼女でいいなら、今すぐ連絡できるけど』って感じで、連絡して、脚本と曲を彼女に送ったら、彼女も気に入ってやろうって言ってくれて実現したんです。

製作中は新型コロナウイルスのパンデミック中で、あなたはNY、レイチェルはLAと、離れての共同作業となりましたが、どのように製作したのでしょうか?

まずテレビ電話で楽曲について話し合って、その場で彼女がデモっぽい感じで歌ってハーモニーを確認しました。後日、彼女がレコーディングを行ない、彼女のエンジニアが曲を仕上げて、送ってきて、それでオッケーが出た。すごくスムーズな流れでしたよ。彼女はとても美しく繊細な歌声をしている。僕らは彼女の歌い方を分かっているし、彼女も僕らの歌い方を分かっているから、まるで前にも一緒に歌ったことがあるかのようにしっくりきましたよ。

「ナッシングズ・インポッシブル」を製作中は、ご自身のお子さんとの会話や関係にインスパイアされたとのことでしたが、曲を聴いた息子さんの反応はどうでしたか?

息子は6歳半なのですが、そういうことは言ってくれないですね(笑)。ただ、ふとした時に歌っていることがあり、それを聞くと『よし』と思います。息子はそれより、私がポケットモンスターの祖国である日本に来ていることに興奮していますよ。私もポケットモンスターで育ってきたので、息子とはカードを集めて遊んでいます。

グッズはたくさん買って帰らないとですね。イアンさんはこれまで、日本文化とは接点はあるのですか?

幼い頃は、日本のゲーム音楽に強く影響を受けました。近藤 浩治さんによる『ゼルダの伝説』や『スーパーマリオブラザーズ』シリーズ…とくに『ゼルダの伝説 時のオカリナ』の音楽には圧倒されましたね。

私はゲーム派だったので、アニメーションに関する知見はあまり深くないのですが、だからこそ今回『屋根裏のラジャー』に参加したことで、彼らのディテールへの強いこだわり、手描きで作り上げる職人技、すべてに疑問を持ち、すべてに意図がある製作姿勢には感銘を受けました。音節ひとつにまでこだわる自分の音楽製作との類似点に気づき、非常に実りのあるプロセスでした

 映画『屋根裏のラジャー』は12月15日(金)より全国ロードショー。シングル「ナッシングズ・インポッシブル」と「ナッシングズ・インポッシブル」が収録された映画のオリジナル・サウンドトラックは発売中。

<映画>
『屋根裏のラジャー』
2023年12月15日(金)全国公開
声の出演:寺田心 鈴木梨央/安藤サクラ/仲里依紗 杉咲花 山田孝之/高畑淳子 寺尾聰/イッセー尾形
監督:百瀬 義行
プロデューサー:西村義明
原作:A.F.ハロルド 「The Imaginary」(「ぼくが消えないうちに」こだまともこ訳・ポプラ社刊)
制作:スタジオポノック
製作:「屋根裏のラジャー」製作委員会
公式HP:www.ponoc.jp/Rudger
© 2023 Ponoc

画像1: 『屋根裏のラジャー』主題歌に込めた思い ー ア・グレイト・ビッグ・ワールドのイアンにインタビュー

<シングル>
「ナッシングズ・インポッシブル」
ア・グレイト・ビッグワールド featuring レイチェル・プラッテン
配信中

画像2: 『屋根裏のラジャー』主題歌に込めた思い ー ア・グレイト・ビッグ・ワールドのイアンにインタビュー

<アルバム>
『屋根裏のラジャー』オリジナル・サウンドトラック
ヴァリアス・アーティスツ

【CD】
◎品番:UICE-1217
◎価格:税抜3,000円(税込3,300円)
◎仕様:CD(1枚組)
◎収録内容:
01:イマジナリのテーマ~ようこそ!イマジナリの世界へ
02:憂鬱な気分を吹っ飛ばせ
03:伝説のクリスマスツリー
04:雪男襲来
05:ぼくが見えるの?
06:バンティングのテーマ
07:ラジャーの絶望
08:家が欲しいな/ルチッラ・ガレアッツィ
09:エミリのテーマ(出会い)
10:家が欲しいな(instrumental)
11:ようこそ!イマジナリの世界へ(ヴェネチア)
12:ヴェネチアの宴
13:私を泣かせてください
14:エミリのテーマ(初仕事)
15:ツァラトゥストラかく語りき(導入部)
16:イマジナリのテーマ(夕暮れ)
17:バンティングのテーマ(再会)
18:ナッシングズ・インポッシブル(屋根裏部屋)
19:スケーピング
20:バンティングからは逃げられない(廃墟)
21:エミリの消失~ラジャーの絶望
22:イマジナリ賛歌(決意)
23:ぼくはアマンダの元へ!
24:バンティングからは逃げられない~ようこそ!イマジナリの世界へ~黒髪少女
25:ナッシングズ・インポッシブル(ストリングス)
26:イマジナリ賛歌
27:ナッシングズ・インポッシブル/ア・グレイト・ビッグ・ワールドfeaturing レイチェル・プラッテン
28:ナッシングズ・インポッシブル(ウィズ・ドラムス)/ア・グレイト・ビッグ・ワールドfeaturing レイチェル・プラッテン
◎封入物
歌詞/日本語歌詞・対訳付/解説(内本順一)付
封入特典:映画『屋根裏のラジャー』ビジュアル使用 
カード風しおり(全6種からランダム1枚封入)

【LP】
◎品番:UIJE-9003
◎価格:税抜4,500円(税込4,950円)
◎仕様:LP(1枚組)/生産限定盤/カラーヴァイナル
◎収録内容:
《SIDE A》
01:イマジナリのテーマ~ようこそ!イマジナリの世界へ
02:憂鬱な気分を吹っ飛ばせ
03:伝説のクリスマスツリー
04:雪男襲来
05:ぼくが見えるの?
06:家が欲しいな / ルチッラ・ガレアッツィ
07:エミリのテーマ(出会い)
08:ヴェネチアの宴
09:私を泣かせてください
10:ツァラトゥストラはかく語りき(導入部)
《SIDE B》
01:バンティングのテーマ(再会)
02:エスケーピング
03:バンティングからは逃げられない(廃墟)
04:エミリの消失~ラジャーの絶望
05:ぼくはアマンダの元へ!
06:イマジナリ賛歌
07:ナッシングス・インポッシブル/ア・グレイト・ビッグ・ワールドfeaturing レイチェル・プラッテン
◎封入物
歌詞/日本語歌詞・対訳付/解説(内本順一)付
封入特典:映画『屋根裏のラジャー』ビジュアル使用 
アザージャケット(全4種からランダム1枚封入)

【デジタル配信】
◎収録内容:CDと同内容
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