【2024年洋楽の注目株】UKで半世紀ぶりの記録樹立！ケニヤ・グレースを推したい

ケニヤ・グレースの「Strangers」が記録を樹立中

　過去にはアデルやエリー・ゴールディング、サム・スミスらを輩出してきたことで知られる、UKにおける新人アーティストの登竜門の1つである＜BBCサウンド・オブ＞の2024年版のリストに選出された、ケニヤ・グレース（Kenya Grace）をご存知だろうか？

　UKで最も名誉ある音楽賞であるBRITアワードでも、期待の新人に贈られるライジング・スター賞の今年の候補にもなっていたケニヤ・グレース。彼女が広く知られるようになったのは、2023年にリリースした、ワーナー・レコーズのダンスレーベルであるメジャー・レコーディングスからのメジャーデビューシングル「Strangers（ストレンジャーズ）」がきっかけ。

　デビューシングルにもかかわらず、ケニヤは「Strangers」でいきなり全英シングルチャートの1位を獲得！ シンガーソングライターであるケニヤは、ソングライティングはもちろん、プロダクションから歌唱まですべてを自分で手がけているのだが、女性アーティストがソングライティング／プロダクション／歌唱のすべてを自分で手がけた楽曲が全英1位を獲得したのは、ケイト・ブッシュが1978年に「Wuthering Heights」で達成して以来45年ぶり、実におよそ半世紀ぶりの快挙となった。

ケニヤ・グレース「Strangers」が樹立した記録

「Strangers」がこれまでに樹立している記録の一例は以下の通り：

○女性アーティストがソングライティング／プロダクション／歌唱のすべてを自分で手がけた楽曲として45年ぶりに全英シングルチャートの1位（3週）

○米ビルボードのグローバル200チャートで5位にランクイン。

○米ビルボードのHotダンス／エレクトロニック・ソングスチャートで5週1位

○SpotifyのGlobal Chartで3位にランクイン。

○Shazamのダンス・チャートで1位を獲得

○楽曲を使ったUGC作成件数（※）：300万件以上
※UGC（User Generated Contents）＝一般ユーザーが作ったSNS動画などのコンテンツのこと。

○UGC視聴回数：1,000億回以上

総再生回数5億超え！「Strangers」ってこんな曲

　全世界での再生回数が5億7,800万回を記録するなど、世界各地で音楽ファンを惹きつけている「Strangers」は、魅力的なシンセサウンドと中毒性のあるドラムベースが特徴的な楽曲だが、そのインスピレーションになったのは、マッチングアプリなどでの恋愛経験。ソーシャルメディア時代ならではの切なくもリアルな歌詞が、同世代をはじめとした多くの人たちの共感を呼んでいる。

「歌詞の面では、自分や他の人たちの恋愛遍歴から最近気がついたことをテーマにしています。長い間誰かと話をしていたのに、何故かある夜を境に突然、二度とその人と話をしなくなってしまうということです。HingeやTinderといったマッチングアプリを通した出逢いによって、そういう極端な変化が今はよくあることになっていますよね。あまりに簡単に人を捨てているように感じます。悲しいけど、本当にそうです」ーイギリス版Vogueに語って

ここに注目！ケニヤ・グレースに注目したい3つの“推しポイント”

①楽曲制作は独学で学んだ

　南アフリカで生まれ、イギリスのサウサンプトンで育ったケニヤ。大学はロンドン・アカデミー・オブ・コンテンポラリー・ミュージックで学ぶなど、学生時代から音楽の道を志していた彼女だが、楽曲制作の技術は独学で習得。大学を卒業してからも、YouTubeにアップされているチュートリアル動画などを観ながら、自分で学んだという。

　元々は、幼少期に自宅で母親が聴いていたノラ・ジョーンズのような音楽に影響を受けたというケニヤが、現在制作しているようなBPMの速いドラムベースと呼ばれるジャンルに魅了されたのは10代の頃。当時通っていたクラブで流れていた音楽や、ケイトラナダやディスクロージャーといったエレクトロニック系のアーティストに影響を受けたという。「当時は彼らがあらゆるチャートを席巻していた頃で、私も夢中になりました」と、ケニヤはMusicTechとのインタビューで振り返った。

②楽曲ができるまでをSNSで公開している

　楽曲のリリース前から、同曲を使った一般ユーザー発信のコンテンツが1日で11.9万以上作成され、わずか24時間で4.2万以上のプリセーブを獲得するなど、リリースしていないにもかかわらず大きな注目を集めていた「Strangers」。それもそのはず、ケニヤは楽曲をリリースする前から、楽曲の制作過程をインスタグラムやTikTokといった自身のSNSで公開している。

「Strangers」のリリース前に同曲の抜粋を披露する動画をTikTokにアップしたケニヤ・グレース。

　「Strangers」は、完成前の抜粋が大注目を集めたあまり、レーベルが方向転換して、急遽メジャーデビューシングルとしてリリースすることが決まったという逸話も。とはいえ、ケニヤがリリース前にアップするのは、あくまで“完成前の音源”。同曲の抜粋が注目を集めた後も、「韻を踏む歌詞に書き直しました」と米Billboardに明かすなど、楽曲が肉付けされていく過程をリアルタイムで見守れるような親密さも、ケニヤの大きな魅力の1つ。

③オルタナティブなスタイルを愛している

　身体のさまざまなパーツに入ったタトゥーに、鼻や耳についたピアスが印象的なケニヤ。「学生時代からずっとこういうのが好きで、よくピアスを着けていましたし、自分でもピアスの穴を開けていました」とイギリス版Vogueに語るように、学生時代から確立されていたという唯一無二のスタイルも、ケニヤの魅力。

　「私はオルタナティブな空間が大好きなんです。ピアスもタトゥーもそう。近いうちに全身をタトゥーで覆いたいなと思っています」とケニヤは話す。もちろん、服にもこだわりを持っており、ヴィンテージの服がお気に入りだそう。「それから、ヴィンテージの服も好きです。カムデンにある中古のレザーショップに行くのがお気に入りなんです」。今後、どんどんファッションアイコンとしても注目を高めていきそうな予感。

2024年にデビューアルバムのリリースを見込んでいる

　2024年には「ダークで、ムーディーで、ダンスにインスパイアされた」デビューアルバムのリリースを見込んでいると米Billboardに明かしたケニヤ。アルバムについての詳細は明らかになっていないが、「Strangers」をリリースして以降に発表してきたシングルたちも、アップテンポなビートに乗せたケニヤの繊細なボーカルに、思わず身体が動き出してしまうような切なくも魅惑的な楽曲ばかり。

「Only In My Mind」

　「Only In My Mind」で歌われるのは、別れてしまった恋人を思う切ない気持ち。ケニヤが囁くような歌声で繰り返す「でもそれは私の頭の中だけ」というフレーズと、その悲しみに相反するように高揚していくビートが、聴くものに中毒性をもたらす1曲。

「Paris」

　ケニヤが世界随一のおしゃれシティであるフランスのパリを舞台に「Paris」で展開するのは、「Strangers」にも通ずるような、現代のSNS社会を風刺するかのような“上辺のラブストーリー”。ケニヤは「私をパリへ連れて行って」とお願いしながら、「インスタに載せるために恋愛してるように見せかけよう」と提案する。

　メジャーデビュー前からSNSを中心にジワジワと人気を集め、シングル「Strangers」でついに人気が爆発して、全英チャートの頂点に登り詰めたケニヤ・グレース。イギリスで最も将来を期待されている新人の1人である彼女から、2024年は目が離せなそうな予感。今のうちにチェックしておいて。

<リリース情報>
Kenya Grace / ケニヤ・グレース
シングル「Strangers / ストレンジャーズ」
配信中
ダウンロード／ストリーミングはコチラ。

Photo:©️HANNAH DIAMOND,©️Michelle Hèlena Janssen,©️KenyaGrace/Instagram