グローバルチームが集結してNetflixで『幽☆遊☆白書』を実写化
冨樫義博による大ヒット漫画『幽☆遊☆白書』という、日本が世界に誇るIPのひとつを実写シリーズ化するために、Netflixは“日米グローバルワンチーム”という同社らしいスタイルで約5年前から制作を開始した。
主人公の浦飯幽助役には北村匠海を、監督には彼と3度目のタッグとなる月川翔を起用。そして、人間界、魔界、霊界という三つが交錯する壮大な世界観とSS級のバトルアクションを映像化するために、マーベル映画にも関わりアカデミー賞科学技術賞受賞経験がある坂口亮がVFXスーパーバイザーに就任した。世界中からの精鋭クリエイターが集まり“世界で最も革新的なVFXスタジオ”と謳われるスキャンラインVFXの第一線で活躍する坂口、その仕事ぶりには主演の北村も「レベルが違う」と感嘆する。
全世界190ヵ国の観客に配信を行なうNetflixのグローバルな視点と、北村匠海をはじめとした豪華なキャスト陣によるパフォーマンス、そして、グローバルチームで作り上げた壮大なアクションと映像美。このドリームチームによる期待作の配信開始に合わせ、北村に思いを聞いた。
『幽☆遊☆白書』浦飯幽助役・北村匠海にインタビュー
『幽☆遊☆白書』が世界で人気の作品であること、190ヵ国で配信を行なうNetflixによって作られたことの重要性についてはどのように感じていますか?
昨今、我々の世代がすごく考えているのが、どうしても日本の作品が世界に届くきっかけが少ないということ。色々な邦画が出てきていて洗練されていっているのはもちろん素晴らしいことなのですが、そこからもっと世界に届いてほしい。日本の監督、日本の役者、日本の原作、日本の作品はたくさんありますが、なかなか世界で評価されにくい気がして。この作品を通して海外の媒体からの取材も受けたのですが、ちゃんと日本の作品が好きで、面白かったよっていう愛情をすごく感じたので、日本はもっともっと進んでいかなきゃいけないなって思いました。
これは自分の中の構想ですが、ゆくゆくは、今回のようなNetflixさんなどにきっかけをいただいて、邦画が世界の映画の祭典などで肩を並べるようになるといいなって思っています。自分が若いうちにはかなわないかもしれないですが、そのきっかけとして、Netflixさんが『幽☆遊☆白書』に力を入れてくれて、僕を幽助に選んでくれたっていうのはすごく大きなことですし、Netflixさんで作られる意味はすごく大きかったなと思います。
本作でグローバルな製作現場に関わられて、驚いたこと、ローカルでの経験との違いを感じたことはありますか?
今回、撮影期間が2年に渡っていて、僕は準備も含めると2020年くらいから始動しました。当時23歳の僕は、『配信される頃には26歳になっちゃうね』なんて気軽に話していたんです。これだけ長い期間、僕自身もいちスタッフとしてひとつの作品と向き合い、すごく長い期間をかけて撮影できたことは、とても有意義な時間でした。今までの役者的遍歴で言うと、他の作品が近づいてくると今やっている作品の間に準備をしたりするんです。地続きに出来るのでありがたい面もあるのですが、役と向き合う時間は限られている気がして。今回は役者に向き合う時間が担保されているというのはすごく感じました。『幽☆遊☆白書』をやって、ちゃんと質を上げる時間のかけ方、その作品に対する向き合い方や時間のかけ方を改めて肌で実感することができたのはすごく良い経験でした。Netflixという場所だからこそできたことなわけで、仮にこれがスタンダードになったらどんなに豊かだろうって思うことがすごく多かったです。
本作に参加したクリエイターのみなさんと関わられて、勉強になったことはありますか?
まずはVFX技術ですね。本当にすごかったです。ハリウッドで活躍され賞もとられている日本人の方がVFXをやってくれたんですが、自分もCGは撮影で経験してきましたが、ベースのレベルが違うというか。また、アクションにおいても、自分がフルで動き回れるようなフィールド作りに、セットから何から、全部僕たちのことを考えてくれていました。スタッフ陣が、技術的な都合で僕らを制限することがないように心がけてくれて、逆に自分がやれることが無制限に感じすぎて最初はすごく戸惑いました。1日ワンカットしか取らない日とかもあったんです。第1話のトラックがバーッてきて自分がひかれるシーンは、あの一連のワンカットに1日を費やしたんです。あのような技術ひとつ取っても、世界ってまだまだ広いんだなって改めて感じました。
(戸愚呂兄弟を演じた)綾野(剛)さんや滝藤(賢一)さんはロサンゼルスに行ってお芝居の撮影をしていましたが、僕、お芝居ってその瞬間に起こる奇跡だし、そこで撮れるものがすべてだって思っていたんですけど、綾野さんや滝藤さんが(日本の)現場で撮ったものはあくまでリファレンスで、自分はそのリファレンスに対して120%を出してその場の奇跡を出すわけですが、綾野さんたちの本番はロサンゼルスで表情を撮る瞬間なんです。VFXが完成した本編を見たとき、綾野さんは泣いていました。それを見たとき、役者としてのプロフェッショナルさを改めて感じましたね。これは日本にはないハリウッドの撮影手法で、“ここで撮ったのが本番じゃないんだ”じゃなくて、次にまったく環境が違くてもそこが本番なので超える芝居をしていかないといけない。それを成し遂げたお二方は改めてすごいなと思いました。
綾野さんと滝藤さんがLAに行かれたことに対しては、どのような思いでしたか?
僕は行っても何もすることはないんですが、その環境に触れてみたかったです。行けなかったけど、写真とかを送ってもらって、監督は『すごかった。本場は違った』って言っていました。
本作でスタッフ陣の環境の整え方の違いを感じたということですが、具体的にはどのようなことだったのでしょうか?
まだ霊力が使えない幽助が闘う最初のアクションシーンでは、町を1個作っているんです。ちゃんと燃やせるようにとか、リアリティとVFXで足される部分とでちょうど良いところを取ってくれているんです。あとは、いくら転がっても痛くない床とか。今回のアクションはリアルな痛みよりも、スタイリッシュさや映像美が重要視されているんです。でも、アクションって痛さに恐怖が出た途端に萎縮してしまう。僕自身、吹き飛ばされても大丈夫という技術は教えてもらっていましたが、どれだけ無茶しても撮影が止まらないような大丈夫さがあるフィールドを作ってもらえたのは本当に素晴らしかったですね。
『幽☆遊☆白書』の予告編が出たとき、日本と海外のオーディエンスの反応には一致する部分もあった一方で異なる部分もありました。例えば、日本のオーディエンスには馴染みのあるヤンキーの制服や髪型も海外のオーディエンスにとっては物珍しかったようで、SNSで盛り上がっているのを見ました。グローバルのオーディエンスも見据えて意識した部分はありますか?
日本から飛び出して世界に届くときにどういう印象を持たれたいか、衣装製作もそういう部分から始まりました。衣装あわせを4、5回して、学ランの生地も4個くらい作り、全部着て映像を撮って、写真を撮ってという作業を何回も繰り返したんです。色味は日本の原作ファンに受け入れてもらえるものでありつつ、海外向けに、いわゆるザ・学ランというよりはモードでファッショナブルであることを意識しました。学ランの形や生地からもグローバルな視点は始まっていたのです。日本にしかない日本のヤンキーの文化は変えることなく、シルエットとして海外に向けられるように。ヤンキー文化を知らない人にとっては、楽しんでほしいところでもあります。
アニメ『幽☆遊☆白書』のオープニングテーマは、グラミー賞受賞アーティストのメーガン・ジー・スタリオンも「アニメのなかで最もお気に入りのオープニング音楽」だとXで投稿するほどアイコニックなものですが、本作では音楽面についてはどう感じてらっしゃいますか?
僕も主題歌に「微笑みの爆弾(※アニメ版のテーマソング)」とかくるのかなと思っていたのですが、そういうことではなくて、あくまで映像に寄り添った音楽がつけられていたので、そこは作品の壮大な世界観を伝えることを支えてくれたなと思っています。自分も色々やっていますが、日本のアニメソングは本当に象徴的なものが多いなかで、今回はあくまでも『幽☆遊☆白書』という世界観を重視したのかなと感じています。
最初と最後に撮られたシーンの間で感じられた成長や変化のようなものはありますか?
幽助ってずっと強いんですよ。弱さがない。自分が『東京リベンジャーズ』で演じたタケミっちは最弱からビルドアップしていくんですが、幽助はある意味で絶対的な存在なので成長の物語ではないんです。幽助には彼の信じる正義があり、霊力が強くなっていくなかで少しずつ自分の大切なものが増えていくことに気づいていく。そのマインドの進化は見て頂ければわかるかなと思います。例えば今回はパンチ一発に対しても、力の流れる軌道と心の軌道が合っていないというNGが多かったんです。ただパンチを打つだけでも、ちょっとした顔の振り方の違いで幽助のその一発にこもった気持ちが表れてくる。技術でマインドを表現するわけですが、アクションの中にこもる幽助のマインドの進化っていうのは一番顕著に出ているんじゃないかと思います。
Netflixシリーズ『幽☆遊☆白書』
Netflixにて独占配信中
©Yoshihiro Togashi 1990年-1994年
原作/冨樫義博「幽☆遊☆白書」(集英社「ジャンプコミックス」刊)
出演:
北村匠海 志尊淳 本郷奏多 上杉柊平
白石 聖 古川琴音 見上愛 清水尋也
町田啓太 梶芽衣子 滝藤賢一
稲垣吾郎 綾野 剛
監督:月川翔
脚本:三嶋龍朗
VFXスーパーバイザー:坂口亮(Scanline VFX)
エグゼクティブ・プロデューサー:坂本和隆(Netflix)
プロデューサー:森井輝
制作協力:THE SEVEN
制作プロダクション:ROBOT
企画・製作:Netflix