刑務所を舞台にした異色の感動作『シンシン／SING SING』が、日本での公開を迎える。実話を基にしたこの作品は、ニューヨーク州の最重警備刑務所「シンシン刑務所」で行われた更生プログラムを描いており、アカデミー賞3部門にノミネートされるなど高い評価を受けている。

最大の注目ポイントは、キャスティングのユニークさだ。出演者の85%以上が実際に刑務所に収監されていた元受刑者という異例の構成。彼らが演じる姿はリアルそのもので、観る者を圧倒する説得力を放っている。SXSW映画祭の観客賞を獲得したのも、映画が持つリアルなパワーが評価された証だろう。

主人公は、オスカー候補にも名を連ねる俳優コールマン・ドミンゴと、俳優デビューを飾った元受刑者クラレンス・マクリン。この二人の出会いと演劇を通じた絆が、物語のハイライトとなっている。閉ざされた空間の中でも生まれる友情や再生の希望が、観る者の心に深い感動を残す。
『シンシン／SING SING』は、犯罪や刑務所という重いテーマを扱いながらも、人間の持つ可能性と希望を力強く描いた作品だ。現代社会における「再生」の可能性を見つめる珠玉の一本として、ぜひ注目してほしい。