ウェス・アンダーソンが帰ってきた。しかも今回は、6度の暗殺未遂、疎遠な娘との旅、クセ者出資者たちとの舌戦という、とびきりクセ強な家族の再生劇を連れて。『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』は、いつものウェスらしさに、危機と再生をテーマにしたクライム・ファミリー・コメディの新たな一手を加えた一作だ。

主演を務めるのは、『フレンチ・ディスパッチ』にも出演したベニチオ・デル・トロ。彼が演じるのは、ヨーロッパの富豪にして開発計画「フェニキア計画」を推し進めるザ・ザ・コルダ。だが、その計画は敵だらけ。命を狙われ、資金も底を尽きる。そこで頼ったのは、疎遠だった娘で修道女のリーズル。旅の途中、家庭教師のビョルンも巻き込み、フェニキア全土を横断する資金集めの旅に出る。

旅先で立ちはだかるのは一筋縄ではいかない出資者たち。トム・ハンクス、スカーレット・ヨハンソン、ブライアン・クランストンらが演じる“クセ強キャラ”が次々と登場。特に、ベネディクト・カンバーバッチ演じる異母兄弟ヌバルおじさんとの確執とバトルは、命を賭けた家族ゲンカの域を超えている。

映像美や対話劇に定評のあるアンダーソン作品だが、本作ではそこに“笑いとサスペンス”が濃密に注入されている。資金も家族も壊れかけ、だがどこか希望がある。そんな空気が画面から溢れ出すのだ。

また、特製グッズとして「35mmフィルム風しおり」が付属するムビチケカードも7月18日より数量限定で販売開始。ファンなら見逃せない。

9月19日から全国公開される本作。『グランド・ブダペスト・ホテル』を愛した人にも、ウェス作品初体験の人にも、胸に何かを残してくれる旅になるはずだ。