「また、会おうね。」──そんな一言に込められた想いが胸に沁みる。
韓国で35万人を動員し、芸術・独立映画としては異例の大ヒットを記録したヒューマンドラマ『最後のピクニック』が、9月12日から日本公開される。単館規模の公開でありながら、5年ぶりにヒット記録を塗り替え、10代から80代まで幅広い層の心をつかんだ本作。その理由は、60年ぶりに再会したふたりの老女がたどる“人生の最終章”に、誰もが自分を重ねられるからだろう。
主人公ウンシムを演じるのは、名作『怪しい彼女』で知られる名優ナ・ムニ。そして、親友グムスン役には「イカゲーム」のキム・ヨンオク。実生活でも長年の友人同士という2人が、本作で見せる自然体のやりとりは、笑いと涙を何度も交互に呼び起こす。
舞台は韓国南部の港町・南海。60年ぶりに故郷を訪れたウンシムは、グムスン、そしてかつて想いを寄せられたテホと再会する。共に過ごすひとときは、まるで時間が巻き戻されたような穏やかさに満ちているが、その裏にはそれぞれの“秘密”と“覚悟”が潜んでいた。
特筆すべきは、イム・ヨンウンの楽曲「Grain of Sand」が流れるクライマックス。観る者の感情をそっとすくい上げるそのメロディと、咲き誇る草花の中を歩くふたりの姿は、記憶に焼きつく美しさを持つ。
人生の最後に、誰と何を共有したいのか。そんなシンプルで切実な問いを突きつけるこの映画は、観たあとにそっと誰かに会いたくなるような、そんな余韻を残す一作だ。

映画『最後のピクニック』予告編60秒【9月12日(金)全国ロードショー】
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