箱根の霧のなかで鳴った「エコーズ」。ピンク・フロイド『おせっかい』55周年盤は当時の帯を復刻


ピンク・フロイドが1971年に発表したアルバム『おせっかい』の55周年記念盤が、10月21日に発売される。オレンジ・マーブルのカラー・ヴァイナル仕様で、日本盤には発売当時の帯を色違いのゴールドで復刻したものが付く。(フロントロウ編集部)
初来日公演の直後に出たアルバム
『おせっかい』は、ピンク・フロイドにとって通算6作目のスタジオ・アルバム。1971年8月、バンドは「箱根アフロディーテ」で初来日公演を行ない、その直後、同じ年の11月にこのアルバムが世に出た。
ほかの国以上に日本で愛されてきた作品で、とくにLPのB面をまるごと使った大曲「エコーズ」は特別な存在だ。箱根アフロディーテでも演奏され、会場を包んだ霧と周囲の自然が溶け合った光景は、いまも伝説のライヴとして語り継がれている。
A面には、ライヴの定番となった「吹けよ風、呼べよ嵐」をはじめ、「ピロウ・オブ・ウィンズ」「フィアレス」「サン・トロぺ」「シーマスのブルース」の5曲を収録。前作『原子心母』と、のちの『狂気』のあいだをつなぐ作品で、ヒプノシスが手がけたジャケットは、水中に沈む人間の「耳」と、水面に広がる波紋で“音の広がり”を表している。
英国の「National Album Day」から生まれた記念盤
今回のカラー・ヴァイナルは、英国の「National Album Day」に合わせて10月17日にリリースされるもの。日本では輸入盤国内仕様として10月21日に発売され、ゴールドの復刻帯に解説・歌詞・対訳が付く。180g重量盤の完全限定盤で、価格は税込4,400円。

サーフ映画に使われた「エコーズ」、その取り決め
発表に合わせて明かされたのが、「エコーズ」にまつわる50年以上前のエピソードだ。1973年のサーフ映画『Crystal Voyager』の最終章を飾った「エコーズ」の映像が、高解像度で修復され、10月17日からピンク・フロイドの公式YouTubeチャンネルで公開される。
映画で脚本とナレーションを担ったサーファーで映像作家のジョージ・グリーノウは、自作した約7.7kgの特殊カメラで波の内側から海を撮った。その映像に合う音楽を探していたとき、母親が買ってきてくれたレコードの最後に入っていたのが「エコーズ」だった。23分に及ぶ演奏時間は、映像の長さとぴたりと重なったという。グリーノウは「聴いた瞬間、『なんてことだ、これこそサウンドトラックだ!』と思ったんです」と振り返る。
とはいえ、映画側には使用料を払う予算がなかった。監督のデヴィッド・エルフィックがロンドンに渡ってバンドと会い、たどり着いたのが「映画は曲を使える代わりに、バンドはその映像をライヴの背景に使える」という取り決めだった。グリーノウは「それからもう50年以上が経ちますが、この映像も音楽も、今なお革新的に見え、革新的に響いています」と語っている。
「エコーズ」は、映画『Pink Floyd Live At Pompeii』でも前後半に分けられて冒頭と結末を飾った。1987年のツアーや、2006年のデヴィッド・ギルモアのソロ・ツアーでも演奏されてきた、バンド初期を代表する1曲だ。
10月21日の発売を前に、「エコーズ」のレストア映像が公開
記念盤の発売に先駆けて、1973年のサーフ映画『クリスタル・ヴォイジャー』の最終シークエンスを飾った「エコーズ」の映像が、最新のレストア版として公開された。ジョージ・グリーノウが撮った約23分の映像で、バンドは魅了されたこの映像を、その後も長年にわたってライヴで「エコーズ」を演奏する際に投影し続けてきた。
ドラマーのニック・メイスンは、初めてこの映像を観たのはオーストラリア・ツアー中だったと振り返る。「メンバー全員が衝撃を受けたのを覚えている」と語り、カメラを胸に固定して波の内側を滑り抜ける映像は、当時まさに驚異的だったという。アルバム『おせっかい』については、専任のプロデューサーを置かずほぼ自分たちだけで作り上げた実験的な作品だったとし、「演奏面では、最も自由な作品のひとつと言っていい」とも語っている。
ピンク・フロイドをめぐっては、昨年『炎~あなたがここにいてほしい』の50周年記念盤が世界各国でトップ10入りし、イギリス、ドイツ、イタリア、スイスでチャート1位を獲得。映画『Pink Floyd at Pompeii – MCMLXXII』のサウンドトラックも、2014年の『永遠(TOWA)』以来となる全英アルバム・チャート1位に輝いている。

















