『イット・エンズ・アス』裁判に決着——和解に踏み切った本当の理由


人気女優ブレイク・ライブリーと映画監督ジャスティン・バルドーニの間で争われた性的ハラスメント訴訟が、米国時間2026年5月4日に和解で終結した。公判開始の2週間前という土壇場での決着で、1年半近くに及んだ法廷闘争に幕が下りた。(フロントロウ編集部)
セクハラ告発から「デジタルスミア」へ——訴訟の全容
発端は、2024年に公開された映画『イット・エンズ・ウィズ・アス』の撮影現場だ。主演・製作を務めたライヴリーと、監督・主演を兼任したバルドーニが対立。ライヴリーは撮影中の性的ハラスメントを告発したうえで、苦情を申し立てた後にバルドーニ陣営の広報担当者が組織的な「デジタルスミアキャンペーン(ネット上の印象操作)」を行ったと主張した。
じつはこの訴訟が世界的な広がりを見せたのは、米ニューヨーク・タイムズがバルドーニ陣営の広報担当者によるテキストメッセージを報じたことがきっかけだった。メッセージにはライヴリーのイメージをおとしめる戦略が記されており、「スミアマシン(印象操作機械)」の実態が明らかになった。バルドーニ側も名誉毀損で反訴し、法廷の場での全面対決となった。
10の訴因が棄却されても戦い続けた理由
しかし裁判の経緯は、ライヴリーにとって平坦ではなかった。米国時間2026年4月、連邦裁判所の裁判官が13の訴因のうち10を棄却し、残ったのは「報復」と「契約違反」の2つのみとなった。それでもライヴリーは戦い続ける姿勢を表明した。
米Varietyによると、ライヴリーの弁護士は「スミアマシンの実態を公の場で暴いた時点で、すでに目的は果たされた」と語った。訴訟の勝敗よりも、業界の慣行を世に知らしめること——それが真の目的だったのかもしれない。
「誇れる映画だ」——共同声明に込められた意味
和解の条件は非公開とされている。双方が連名で発表した共同声明では「映画『イット・エンズ・ウィズ・アス』は私たち全員にとって誇りだ」と述べ、「ハラスメントのない職場環境への取り組みを続ける」と結んだ。
1年半の法廷闘争を経て生まれた、たった2行の声明。しかしその言葉には、表舞台の和解だけでは語り尽くせない、それぞれの思いが静かに刻まれているかもしれない。












