酷評され、笑いものにされ、それでもファンが手放さなかったアルバムがある。マライア・キャリーの『Glitter』が、発売25周年を機に、この作品では初となるアナログ盤で復活する。米国での発売日は2001年9月11日だった。本人が「絶対に信じなかったと思います」と振り返った25年の話。(フロントロウ編集部)
「笑いものになっていくのを見るのは本当につらいものでした」
ユニバーサル ミュージックの発表によると、マライア・キャリーが2001年に発表したアルバム『Glitter』の25周年を記念して、この作品では初となるアナログ盤が2026年10月30日に発売される。あわせて、貴重な音源や未発表録音を含む15曲を追加したデジタル・デラックス・エディションも同日に配信される。
ただ、この発表を「25周年記念盤が出ます」というだけの話として読むと、いちばん重い部分を取りこぼす。『Glitter』は長いあいだ、マライアのキャリアにおける失敗作として扱われてきた作品だからだ。
マライアはこの発表に寄せて、こうコメントしている。
「2001年当時、いつか私が『Glitter』の25周年を皮肉抜きで祝う日が来ると言われても、絶対に信じなかったと思います。このアルバムは本当にたくさんの愛情と心を込めて作ったものだったから、それが笑いものになっていくのを見るのは本当につらいものでした」
「皮肉抜きで」という言い方に、この25年が凝縮されている。
アメリカでの発売日が、2001年9月11日だった
『Glitter』はマライアにとって8作目のスタジオ・アルバムで、彼女がスターを夢見るシンガーを演じた同名のミュージカル・ドラマ映画『グリッター』のサウンドトラックにあたる。映画の舞台となった1983年のニューヨークからインスピレーションを受け、ダンス・ポップ、ファンク、ヒップホップ、R&Bを混ぜ合わせた一枚で、エリック・ベネイ、リュダクリス、ダ・ブラット、バスタ・ライムス、ファボラス、ジャ・ルールといった顔ぶれが参加している。いま並べ直すと、当時のアメリカの音楽シーンをそのまま切り取ったような布陣だ。

問題は、その発売日だった。アメリカでの発売日は2001年9月11日。同時多発テロが起きた、まさにその日である。あまりにも異例の状況下でのリリースとなり、アルバムは真価を理解されないまま否定的に受け止められていった。
流れが変わったのは、それから17年後のこと。2018年、マライアの15作目のスタジオ・アルバム『Caution』の発売を控えたタイミングで、ファンがSNSで「#JusticeForGlitter(グリッターに正義を)」というキャンペーンを展開した。この動きによって『Glitter』はiTunesのアルバム・チャートで1位に浮上。以来、批評面でもカルチャー面でも再評価が続いている。25周年の盤が出るのは、その延長線上にある。
「倉庫の奥に眠っていた音源」から出てきたもの
今回のアナログは、通常盤と限定デラックス盤の2種類。日本ではUNIVERSAL MUSIC STOREで発売される限定デラックス盤に、3曲のボーナス・トラックが収録される。「Out Here On My Own」「Loverboy (Firecracker – Original Version)」、そして「Never Too Far/Hero (Medley)」の3曲だ。
なかでも「Never Too Far/Hero (Medley)」は、チャリティー・コンサート「United We Stand」で初めて披露された1曲。今回、そのスタジオ・ヴァージョンが初めてアナログ盤に収められる。直筆サイン入りリトグラフと箔押しのシリアル・ナンバーが付属する特別商品も、この限定デラックス盤として用意される。

マライアはコメントの最後をこう締めくくっている。「倉庫の奥に眠っていた音源もいくつか見つかったので、10月にみんなと共有できることを本当に楽しみにしています!」。デジタル・デラックス・エディションの追加15曲は、その「倉庫の奥」から出てきたものということになる。
さらに発表に合わせて、収録曲「Didn’t Mean To Turn You On」の新たなリイマジンド・ヴァージョンも公開された。英国系カナダ人シンガー・ソングライターのロシェル・ジョーダンをフィーチャーし、プロデュースはKLSHが手がけている。25年前の曲を、いまの音で鳴らし直す試みだ。
「さらに多くの人たちが、ようやくこの作品を本来の姿のまま聴いてくれたら」。マライアがコメントで願ったのは、記念でも同情でもなく、ただ普通に聴かれることだった。
















