【フロントロウ編集部】
アメリカの映画やドラマはハリウッドがあるロサンゼルスで撮られているというイメージが強いけれど、じつはその多くは遠く離れた州や隣国カナダで撮られている。その背景には、撮影するハリウッド側と場所を提供する都市側の両者においしい事情があった。
あのドラマ1本で400億円
ハリウッド作品の撮影地として有名なのが、隣国カナダのバンクーバー。ロサンゼルスから飛行機でわずか3時間という好立地にあるバンクーバーは撮影誘致に力を入れており、映画やドラマの制作にかかる税金を破格の安さにしている。
バンクーバーがハリウッドを優遇する最大の理由は、ハリウッド作品が地域にもたらす経済効果。
例えばバンクーバーで撮影されている人気ドラマ『ARROW/アロー』は、5シーズンにわたる撮影でバンクーバーにて7,087の新たな雇用を生み出し、撮影に関わる支出だけでも約400億円の経済効果を生んでいることが、カナダの経済団体MNP LLPの調査で分かっている。
『ARROW/アロー』はシーズン4だけでも雇用に約50億円、設備やサービスの使用に約31億円を使っており、これに各スタッフの生活・交際費を合わせると合計額は計り知れない。
さらに、ハリウッド作品が地域に与える経済効果は制作だけにとどまらず、作品のファンが現地を訪れることからもお金は生まれている。バンクーバーが位置するブリティッシュ・コロンビア州では約825のビジネスが『ARROW/アロー』のおかげで経済的な貢献を受けたと回答している。
ハリウッドにとってもお得
もちろん高額を出しているハリウッド側にも利点は多く、税金や雇用費などはロサンゼルスに比べて格段に安い。カナダで撮影をおこなう場合、ロサンゼルスから主要スタッフを連れていきつつ、現地でも多くのスタッフを雇用するのはそのため。
業界関係者はフロントロウ編集部に、「カナダの安さがハリウッドの映画製作を支えているんだよ」と明かした。
アメリカ国内ではジョージア州が「映画州」と呼ばれるほどハリウッド作品の撮影誘致に力を入れており、これまでに1兆円近い恩恵を受けてきている。しかしジョージア州は2016年に可決された「トイレ法」がLGBT+に差別的だとして多くの配給会社から撮影のボイコットを宣言されており、今後、また新たな州が撮影のメッカとして名乗りを上げる日がくるかもしれない。