シンガーのクリス・ブラウンのキャリアは、音楽界でも群を抜くほどきらびやかなものだった。しかし2009年、「あの事件」のせいで彼の人生は激変した。

画像: 「あの事件」の裁判で5年の執行猶予を言い渡されたクリス。

「あの事件」の裁判で5年の執行猶予を言い渡されたクリス。

あれから7年。9月26・27日の来日公演も決まったクリスについて、フロントロウ編集部が特集します。


リアーナDV事件の概要

 事件が起きたのは、グラミー賞授賞式の前夜。

 当時の恋人であるシンガーのリアーナを助手席に乗せて運転していたクリスは、携帯電話に残っていた女性からのメールがきっかけで、リアーナと口論に発展。

画像: 「R&B界のプリンス&プリンセス」ともてはやされていた。

「R&B界のプリンス&プリンセス」ともてはやされていた。

 リアーナが追及をやめないことに激怒したクリスは車内でリアーナの顔を殴り、リアーナが携帯電話でアシスタントに電話をかけて「警察を待たせておいて」と伝えるふりをすると、さらに激昂。

 「今マジでバカなことしたな! お前のことマジで殺してやる!」と怒鳴りながら、リアーナの腕や手を殴り、ヘッドロックをかけるなど、暴行をエスカレートさせた。

画像: 翌日のグラミー賞授賞式では隣の席が用意されていたが、もちろん2人とも出席はキャンセルに。

翌日のグラミー賞授賞式では隣の席が用意されていたが、もちろん2人とも出席はキャンセルに。

 ようやく暴行が終わったのは、リアーナが助けを求めて大声を出した時。

 鍵の場所が分からず車を発進させることができなかったクリスは、大声を出すリアーナをその場に残して徒歩で現場から逃走。

 リアーナは駆けつけた住民の通報で病院に運ばれ、クリスは翌日の夜に自首。逮捕・起訴され、5年間の保護観察、1年間のDVカウンセリング、6ヵ月の社会奉仕活動、リアーナへの接近禁止を命じられた。

画像: 社会奉仕活動をするクリス。

社会奉仕活動をするクリス。

音楽界のクリス復帰作戦

 一方で音楽界では、事件の翌年頃からクリスをカムバックさせる動きが加速。

 2010年の音楽祭BETアワードでは、前年に亡くなったマイケル・ジャクソンのトリビュート・パフォーマーにクリスを抜擢。

画像: BETアワードで、号泣しながらパフォーマンス。

BETアワードで、号泣しながらパフォーマンス。

 これを皮切りに多くの授賞式が彼の起用を始め 2011年にはアルバム『フェイム』でグラミー賞最優秀R&Bアルバム賞を受賞。

 再び音楽界の頂点に立った。


業界がクリスを手放せないわけ

 アンチ派が多いにもかかわらず、音楽界はなぜここまでクリスを重宝するのか? その理由は、彼の才能の確かさにある。

 歌だけでなくダンスもこなせ、さらにソングライターとしてはニッキー・ミナージュや50セントに曲提供するほどの才能を持つクリス。

 大物R&BシンガーのR.ケリーはクリスについて、「間違いなくスーパースターだ」「彼にはマイケル・ジャクソン的な要素がある」と、音楽誌Rap-Up TVで語っている。

画像: アッシャー(右)も、「ここまでの才能は長い間見てこなかった」とクリスを称えている。

アッシャー(右)も、「ここまでの才能は長い間見てこなかった」とクリスを称えている。

 さらにルックスや周囲を惹きつけるカリスマ性など、スターに必要な総合的な素質がそなわっているクリス。

 R&B界では長年クリス級のスター性を若手は排出されておらず、今のR&B界にとって、クリスはなくてはならない存在なのだ。


世間の反応は「楽しみ」「被害者ぶってる」

 そんななか今年、クリスが自身のドキュメンタリー映画『ウェルカム・トゥ・マイ・ライフ』を制作。予告編ではDV事件について言及し、当時自殺を考えたことを明かした。

 映画の予告には「楽しみ」「反省してるから許すべき」という声もあるものの、「加害者が被害者ぶっている」「同情できない」という厳しい意見も多数。

 ただ一方そんな議論のおかげで、ツイッターでは予告編の話題がトレンド入り。良くも悪くも、クリスの話題性は今でも業界トップクラスなのだ。

『ウェルカム・トゥ・マイ・ライフ』予告編

画像: Chris Brown - Welcome To My Life (Trailer) HD youtu.be

Chris Brown - Welcome To My Life (Trailer) HD

youtu.be

 そんなクリスが、じつに9年ぶりの来日公演を発表。9月の公演情報は瞬く間に話題になり、フロントロウ編集部の公式ツイッターでも瞬時に1,000リツイートを超えた。この様子だと、チケットの完売は固そうだ。

 7年の月日を経て、「クリス・ブラウン」はかなりイメージを変えた。しかし、まだまだ音楽界の第一線に立っているのは間違いない。

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