男性版『シンデレラ』が誕生
恵まれない境遇の主人公シンデレラが、ある日、魔法使いの力を借りてお城の舞踏会に参加し、王子様に見初められて幸せをつかむという物語は、現在では女性の成功を揶揄する「シンデレラ・ストーリー」という言葉まで生み出すほど世の中に浸透している。
あまりにも定着しすぎて、今やなんの疑問も感じないこの物語の落とし穴について、ハッと気づかされるアニメがこの春制作された。

『シンデレラ』ならぬ『シンデフェラ(Cindefella ※英語のスラングでfellaは男を意味する)』と題され、「シンデレラがもしも男だったら…」という設定で物語が進行するこのアニメを企画・公開したのは、女性編集者2人が立ち上げた子供向け書籍の出版社レベル・ガールズ。
男性版「シンデレラ」を通じて彼らが訴えかけるメッセージとは?
まずは、アニメを観てみよう。
シンデフェラは意地悪な継父と義理の兄弟にいじめられ、こき使われながら辛い毎日を送っている。

そんなある日、魔法使いのおじいさんが現れ、シンデフェラに魔法をかけて変身させる。素敵なスーツとガラスのローファーを与えられたシンデレラはお城で開かれる舞踏会へ。

お姫様と出会ったシンデフェラは、一緒にダンスを楽しみ、お姫様はシンデフェラに一目惚れするも、魔法の効果が切れる真夜中を目前にシンデフェラはお城を後に。

お姫様はシンデフェラが階段に落としていったガラスのローファーを手がかりに彼の行方を探すよう使用人たちに命じ、ついにシンデフェラを発見! 2人は結婚し、末永く幸せに暮らしましたとさ…

現代の価値観と合わない? 物語の異様さが浮き彫りに
このアニメを観てみて、主人公が男性になるだけで、なんだか不思議な違和感を覚えた人も多いはず。
それは、シンデレラが自らの力で幸せを掴んでいるわけではなく、「魔法使いの力を借りて外見が美しくなったことで、王子様に見初められ、結婚という幸せを掴む」という時代遅れなストーリーラインの異様さが、主人公が男性になっただけで、ぐっと浮彫りになるから。
オリジナルの物語が誕生した当時の「女性は外見がすべて」、「女性は男性に幸せにしてもらうもの」、「待っていればいつか幸せが訪れる」という神話は、現代ではすっかり崩れ去り、まったく違う価値観が生まれている。

アニメの最後には「息子(男の子)にこんな物語を読み聞かせたいとは思いませんよね? じゃあなぜ、娘(女の子)には読み聞かせ続けるのですか?」というメッセージが。
女性だって男性の助けを借りなくとも成功できる
レベル・ガールズ社は、これまでの童話は男の子のキャラクターが大活躍して成功を収める物語が多いのに対し、女の子の主人公が自力で何かを成し遂げるという作品が圧倒的に少ないことを指摘。
小さな女の子たちに「男性の力を借りなくても、女性だって自分自身の力で幸せを掴むことができる」と教えることを目標に、パワフルな女性が主人公の物語ばかりを集めたオムニバス本「ベッドタイム・ストーリーズ・フォー・レベル・ガールズ」(日本からもアマゾンなどで購入が可能<英語版>)を発売している。

©Rebel Girls
この男性版「シンデレラ」は、そのプロモーションの一環として作られたもので、同書は、昨今のフェミニズム運動の流れを受けて、世界各国の娘を持つ親たちの間で人気となっている。