被害者が続々とセクハラを告発
連日、アメリカのみならず世界中を騒がせている、「映画界のドン」こと大物プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインのセクハラ騒動。
映画『恋に落ちたシェイクスピア』や『シカゴ』のプロデューサーとしてアカデミー賞を受賞したこともあるハーヴェイは、いわゆる映画界の権力者。これまでに数々のヒット作をプロデュースしてきた実績に加え、何人もの俳優や女優を自身の作品に出演させ、大スターに育てあげてきた功労者でもある。
そんな大物が、過去30年にわたってセクハラ行為を行ってきたことを告発する記事を今月5日米New York Times誌がスクープしたことで、これまで表に出てこなかった業界にひそむセクハラの実態が次々に明らかに。
これをきっかけに、今まで被害を公にできずにいた人たちも続々とハーヴェイのことを告発。女優のアンジェリーナ・ジョリーやグウィネス・パルトロウなど、名前をあげたらきりがないほど大勢の女優やモデル、関係者らがハーヴェイのこれまでの愚行について声を上げた。
業界内でセクハラ被害を黙殺
ここでひとつ浮かぶのは、実はみんなこの件について知っていたのではないかということ。
たしかにこれほどの被害者がいるのに、今日にいたるまでハーヴェイが裏で女性たちを食い物にしていたことを業界の人たちが知らなかったというのは、少々無理がある。
しかし、俳優のジョージ・クルーニーや女優のメリル・ストリープなど、今回の件を受けて声明文を発表したセレブや業界関係者の多くが口をそろえて「(セクハラの件について)一切知らなかった」と発言。
その一方で、1番最初にハーヴェイの悪事を告発したNew York Times誌は、何年も前からセクハラの事実を把握していたことを明らかにしているほか、声明文を発表したセレブになかにも、ハーヴェイの悪いウワサについて知っていたことを打ち明けた人たちもいる。
例えば、女優のジェシカ・チャステインは声明文のなかで「女優としての仕事を始めた時から、ハーヴェイに関して忠告を受けていた」と証言。
また、2013年にアカデミー賞のノミネーションを発表するイベントで司会を務めた俳優のセス・マクファーレンは、ノミネートされている女優の名前を読み上げる際に「おめでとう!これでこの5人はハーヴェイに媚を売る必要はないね」と発言していた。
この時のことについてセスは、「知人女性からハーヴェイにセクハラされたことを打ち明けられ、黙っていることができず、あのジョークを言った」と、つい最近自身のSNSで明かしている。
これらの証言をふまえて考えると、セレブをふくむほとんどの業界関係者がセクハラの実態を知っていたと考えるのが妥当。
被害が公にならなかった理由とは?
ではなぜ、みんなそのことについて今まで黙っていたのか? その理由は簡単。ハーヴェイが映画界で絶対的な権力者だったから。
ハーヴェイほどの人物ともなればハリウッドで活躍する俳優や女優、監督のキャリアをつぶすことは容易だったに違いない。その結果、多くの被害者やその事実を知る人物たちが声を上げられずにいたというわけだ。
その証拠に、人気女優のケイト・ベッキンセールは、ハーヴェイの誘いを何度も断ったことが原因で、罵られ脅されたことを自身のインスタグラムで告白。また、女優のロザンナ・アーケットはハーヴェイからの性的な要求を断ったところ、その後仕事が激減したことを米New Yorker誌に明かしている。
「仕事」や「キャリア」を人質に、この十数年間、ハーヴェイは何人もの女性たちに性的な関係を要求し、口止めしてきたのだろう。被害にあった女性たちと同様に、彼が裏で何をしていたのかを知っていた関係者や周囲の人物たちも、彼の権力に太刀打ちできず口をつぐんでいたというわけだ。
しかし、これまでに何度も揉み消されてきたハーヴェイの悪事だったが、勇気ある女性たちの告発によって、ついにその卑劣な犯行が公に。これをきっかけに、業界にひそむ膿が出し切られることを願う。