不法移民であることを告白
アメリカのテレビドラマや映画で活躍している俳優のバムジャン・バンバが、米ロサンゼルス・タイムズとのインタビューで自身が「不法移民(Undocumented Immignant)」、いわゆる“不法滞在者”であると公表した。
現在35歳のバムジャンは、10歳の頃、母国コートジボワールで起こった内戦から逃れるために両親と共にアメリカに移住。その後、高校生になり、大学進学のための学資援助の申請を試みようとした彼は、自分が正式には移民として登録されていないという事実を知ることに。
不法移民であるという秘密を抱えながらも、ニューヨークの演劇学校で学び、俳優としてのキャリアをスタート。これまでの10年間、映画やドラマのオーディションを受けるたびに「もし自分が不法移民だということがバレたらどうしよう?」、「撮影場所が国外だったら旅することができない」という不安と葛藤してきたというバムジャンは、ついに今回、自分の身の上について語ることを決意した。
公表を決意した理由
その背景には、「もう事実を隠しながら怯えて暮らしたくない」という気持ちと、この秋、ドナルド・トランプ大統領が撤廃を表明したある制度を守りたいという想いがあるという。
現在、アメリカには、2012年にオバマ政権のもと導入された、子供時代に米国に到着した不法移民の強制退去を遅らせるという救済制度が。
「DACA(Deferred Action for Childhood Arrivals)」と呼ばれるこの制度は、16歳になる前に米国に入国したものの、正規の在留資格を得ていなかった若者が対象で、国土安全保障省に登録申請後、連邦捜査局(FBI)の身元調査を通過した人については2年間は強制送還措置が取られないほか、就労、運転免許証の取得などが許可されており、バムジャンもこの制度に登録している。
しかし、今年9月、大統領選中から移民対策に強硬路線をとってきたトランプ政権は、この救済制度を撤廃する方針を発表。直ちにではないものの、これが実現すると米国で生活する約80万人が影響を受けることが予想されており、現在、アメリカ国内で大きな議論が交わされている。
妻と娘を持つバムジャンは、「もしもDACA制度が撤廃されてしまったら娘と離れ離れになってしまうかもしれない」という不安から、制度の撤廃反対を訴えるため、「今しかない」と自身が置かれた状況を世の中の人々に知ってもらう覚悟を決めたという。
思いがけず不法移民となってしまった若者へのサポートを呼びかけ
「移民は犯罪者ではありません。私たちは市民のみなさんを奪うためにここへ来たわけではありません。私たちは(アメリカという国に)恩返しをしたいのです。私たち移民は、あなたの隣人であり、医師であり、教師であり子供です。そして私のように、みなさんがお茶の間で楽しんでいるテレビ番組のお気に入りのキャラクターとして親しまれていることだってあります。私たちは、あなたたちのうちの1人なのです」と語るバムジャン。
彼は、「ハリウッドには夢を現実にするパワーがある」と、同じくエンタメ界で活躍するセレブたちにも、思いがけず不法移民となってしまった若者たちのために救いの手を差し伸べて欲しいと呼びかけている。
彼の告白後、「Stand with Bamba(バンバを支持する)」というハッシュタグが誕生。現在SNS上で彼へのサポートを表明するユーザーたちが相次いでいる。