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2018年の映画賞レースで最有力作品のひとつである自伝映画『アイ、トーニャ』。映画の題材になったトーニャ・ハーディング本人が、アメリカで炎上を続けている。
画像: 2018年度ゴールデン・グローブ賞でのトーニャ・ハーディング。

2018年度ゴールデン・グローブ賞でのトーニャ・ハーディング。

「なぜ授賞式に招待したんだ」
「トーニャ・ハーディングを被害者として扱うのはおかしい」
「女性を襲った人間を称えるなんて」

 自伝映画『アイ、トーニャ』の題材になった元米女子フィギュア選手のトーニャ・ハーディング(47)が1月のゴールデン・グローブ賞に出席したとき、ツイッターには彼女に対するネガティブなコメントが殺到。名前が世界トレンド入りするほど炎上してしまった。

 ここまで嫌われているトーニャ・ハーディングとは、いったい誰なのか?

1994年五輪ライバル襲撃事件

 トーニャ・ハーディングは、アメリカ人として初めて公式戦でふたつのトリプルアクセルを成功させたフィギュアスケーター。

 ただ彼女が全米の注目を浴びたのは、選手としての功績よりも、ナンシー・ケリガン襲撃事件がきっかけ。

 ナンシー・ケリガン襲撃事件とは、トーニャと共にリレハンメル・オリンピックの代表入りを目指していたフィギュアスケーターのナンシー・ケリガン(当時24)が、全米選手権の練習を終えて控室に戻ろうとしていた時に、男に右ひざを警棒で殴打され負傷した事件。

 襲われた直後に泣き叫ぶナンシーの映像がニュースで放送されたこともあり、事件は全米を震撼させた。

画像: Nancy Kerrigan Attack - Raw Footage - January 6, 1994 www.youtube.com

Nancy Kerrigan Attack - Raw Footage - January 6, 1994

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 そして事件後、実行犯を雇った黒幕として逮捕されたのが、トーニャの元夫ジェフ・ギルーリーと彼の友人。

 オリンピック代表選を巡るライバル襲撃事件は米オリンピック史に残る大スキャンダルへと発展し、トーニャは一貫して関与を否定したものの、米国民の多くが彼女を首謀者として疑い、トーニャはアイススケート界のヒールになってしまう。

 そしてさらに驚くことが起きる。

 事件の首謀者と疑われながらも証拠が乏しく当時起訴されていなかったトーニャが、リレハンメル・オリンピックの米代表に選ばれてしまう。しかも、チームメイトにはケガから回復した被害者ナンシーがいた。

画像: 1994年リレハンメル・オリンピックでのトーニャ・ハーディング。

1994年リレハンメル・オリンピックでのトーニャ・ハーディング。

 リレハンメル・オリンピックでは、トーニャが演技中に靴紐の不具合を訴えて審査員に泣きながら演技のやり直しを求める騒動が発生。

 結果的にトーニャは8位になり、一方のナンシーは銀メダルを獲得した。

 帰国したトーニャは、彼女を首謀者として起訴する証拠が足りなかった警察と司法取引をし、"実行犯の訴追を妨げた罪"で有罪を認める。その結果、実刑は逃れたが、アメリカフィギュアスケート協会から永久追放された。

『アイ・トーニャ』で半生が映画化

 しかし2018年、トーニャがアメリカ国民の前に戻ってきた。

 そのきっかけが、映画『アイ、トーニャ(原題)』。

画像: I, Tonya Trailer #1 (2017) | Movieclips Trailers www.youtube.com

I, Tonya Trailer #1 (2017) | Movieclips Trailers

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 トーニャの半生を映画化した同作は、母から受けたネグレクトと虐待、夫のジェフ・ギルーリーからの暴力など、これまで知られてこなかったトーニャの苦悩が明らかになる。

 映画はこれまでに80以上の映画賞にノミネートされており、ゴールデン・グローブ賞ではトーニャの母役を演じたアリソン・ジャニーが助演女優賞を受賞した。

画像: トーニャ(左)が映画で自身を演じたマーゴット・ロビー(右)と。

トーニャ(左)が映画で自身を演じたマーゴット・ロビー(右)と。

ゴールデン・グローブ後も炎上

 ただ映画の高レビューとは反比例して、米国民のトーニャに対する反応は厳しい。

 11日に放送されたドキュメンタリー『Truth and Lies: The Tonya Harding Story』でトーニャが母からの虐待や貧しい家庭環境、さらに襲撃事件について語ると、「加害者を美化するのはおかしい」「なぜ彼女が映画やテレビで取り上げられるんだ」「よく平気な顔して喋れるな」といった意見が殺到。

 元米男子フィギュアスケーターのジョニー・ウィアーも意見を投じており、「貧しい地域に生まれたからって理由で、悪者を美化する行為には飽き飽きしているよ。つらい生い立ちだったかもしれないけど、アスリートはそれぞれが色々な人生を経て、功績を残して成功してるんだ。暴力ではなくてね。僕はナンシーの味方。トーニャのことは称賛しない」とツイートしている。

 一方、被害者のナンシーは突然のトーニャ騒動に対して冷ややかなコメントをThe Boston Globeにしている。「コメントすることは何もありません。(映画を)観ていないので。私は忙しいので。今週は全米選手権だったのでゴールデン・グローブ賞も観ていません。映画も観ていません。私は自分の人生で忙しいんです」。 

 90年代にアメリカ国民に忌み嫌われた女性アスリートに同情的な角度からスポットライトをあてたことで、炎上を続けるこの騒動。

 物議をかもす映画『アイ、トーニャ(原題)』は1月末に発表されるアカデミー賞でノミネートが予想されており、日本では初夏に公開を予定している。

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