「私たちは犠牲がない時にしか前進しません」
参加者が100万人を超えた今年の「ウィメンズ・マーチ」は、昨年から相次ぐセクハラ騒動の告発により、女性の権利を求める声がより一層強くなった。2年目となる「ウィメンズ・マーチ」に参加したセレブたちは、昨年に引き続き反トランプを訴えるとともに、セクハラがまかり通っていた時代を終わらせることを訴えた力強いスピーチを残した。
映画『スーサイド・スクワッド』のヴィオラ・デイヴィスは、トランプ大統領によって人種差別などの問題が再び過熱してしまっていることについて、黒人差別撤廃に大きく貢献したマーティン・ルーサー・キングJr. 牧師の言葉を引用し、こうスピーチ。
「(これまでに人種差別的な)法律が成立した理由を、マーティン・ルーサー・キングJr.牧師の言葉で説明できると思います。彼は、“時間”についてこう語りました。私は変化が起きるまで100年も200年も待てません。時間は中立なもので、良い方にも悪い方にも使えます。何もしなくても進歩できることは滅多にありません。進歩は人々の熱心さと努力によって手に入るものなのです。そして私たちが努力をやめた時、“時間”は社会の停滞に味方し、古いルールが生きながらえるのです。つまり、つねに正しい行いによって“時間”を助けなくてはいけないのです。
私やあなたの権利を抑圧したジム・クロウ法(=1876年から1964年にかけてアメリカに存在した、有色人種の一般公共施設の利用を禁止した法律)のような法律ができたのも、私たちが深い眠りについてしまったからです。私たちは前進しながら眠ってしまい、置き去りにされている人がいないかと左右を確認することを怠ってしまいました。私たちは犠牲がない時にしか前進しません。しかし何かを犠牲にしなければ、誰も、何も、素晴らしくなることはできないのです」
さらにヴィオラは、セクハラの実態についても語り、セクハラを撲滅させるためには社会の根本から変えていく必要があることを熱弁した。
「18歳になる前にレイプやセクハラ被害に遭っている女性は5人に1人。男子では6人に1人にのぼります。有色人種の場合、18歳未満でレイプされた女性は、66%の確率でまたセクハラ被害に遭ってしまうと言われています。性的な人身売買の被害女子の70%が有色人種で、里親制度に入れられた子や、貧困に苦しんでいる子も少なくないです。これは10億ドル規模の市場。性的な人身売買に関わった彼女たちの多くは、集団強姦されます。
私は今日、“Me Too(=セクハラ体験を告白するムーブメント)”のためだけに話しているわけではありません。これは、私自身が“Me Too”だからです。世の中にいまだに声をあげられない女性が存在することも理解しています。お金がない、憲法がない、自信がない、暴行によって感じる恥のせいで沈黙を破るための自尊心が持てない女性たちがいるのです」
そして最後に、今の権利が「絶対に後退しないように」という願いを明かしたヴィオラは、集まった人たちにこうお願いをした。
「誰かが何か良いことを言った時に拍手したり、歓声をあげたりするだけでは足りませんよ。家に帰ったあともこの運動を生かし続けることなのです!」
「映画評論家が私の胸が大きくなり始めたことを…」
2年連続で、ウィメンズ・マーチでスピーチを披露したナタリー・ポートマンは、代表作『レオン』で主演を務めた13歳の時から経験しているセクハラ気質なメディアの在り方について、自身の経験を告白しながらスピーチ。
「私は、殺し屋と友達になり、殺された家族の復讐を誓う女の子の役を演じた映画『レオン』の撮影現場で12歳になりました。このキャラクターは女性としての自分を発見して成長すると共に自分の意見や欲望を見出しますが、同じころ、私もその過程にいました。13歳の時に映画が公開された時には、自分の作品に対する生身の人からの反応を聞くのを心待ちにしていました。
ドキドキしながら開けた初めてのファンレターには、男性のレイプの空想が書かれていました。あるラジオ局では、私と合法的に性向ができる年として、私の18歳の誕生日へのカウントダウンを始めました。ある映画評論家は、レビューで私の「大きくなり始めた胸」について書きました。自分が少しでもセクシャルの部分を見せれば、安全ではなくなり、男性が私の体について物かのように話してもいいと思ってしまう。13歳の私がそれに気づくのに時間はかかりませんでした。(中略)自分の体を守り、意見を聞いてもらいたいと思ってした選択のおかげで、私は、お堅い女、古風で、オタクっぽくてマジメすぎるというイメージをつけられてしまいました」
衝撃的な人生を明かしたナタリーは、女性が、「身体的な安全や評判を気にせず、自由に着たいものを着て、自由に意見を言えて、自由に望むを語れる世界」になることを望むと、その希望を語った。
(フロントロウ編集部)