自叙伝で壮絶な過去を告白
総合格闘技団体UFCきっての美人ファイターとして、格闘技ファンのみならず人気を博しているペイジ。
大手スポーツブランドのリーボック(Reebok)とスポンサー契約を結んだり、幼少の頃からバレエやジャズダンス、ヒップホップなどのさまざまなダンスを習っていた経歴を活かして人気ダンス・コンペティション番組『ダンシング・ウィズ・ザ・スターズ』に出演したりと幅広い活躍を見せている。
そんな彼女が、自身のこれまでの生い立ちや格闘家としてのキャリアについて綴った自叙伝『Rise: Surviving the Fight of My Life(ライズ:サバイビング・ザ・ファイト・オブ・マイ・ライフ)』を発表。
同書のなかで、14歳の頃に受けた集団レイプやいじめについて赤裸々告白した。
当時、学校に友だちがおらず、いつも1人ぼっちで過ごしていたというペイジ。しかし、ある日、同じ学校の生徒に誘われてパーティへ出かけることに。アルコールを口にし、抵抗ができないほどに酔ってしまった彼女に対し、複数の男子生徒たちが集団で性的暴行を加えたという。
この時の凄惨な体験について「彼らは私の体を動かし、ポジションを変えたりしていました。抵抗を試みようとするたびに失敗しました。私の手足は濡れたセメントのように重く、頭の中はまるで濃い霧に覆われたようでした。起きていて意識もありましたが、私の体は死んだようでした」と生々しく振り返ったペイジは、「何が起きているかは分かっていたけれど、それを止めさせることがどうしてもできませんでした。その時の私には声も選択肢もなく、ただ屈服し、この時間が早く終わって欲しいと祈ることしかできなかったのです」と当時味わった無力感と敗北感を表現している。
あらぬ疑いによるいじめがスタート
この事件がウワサになると、クラスメイトや学校中の生徒たちからのいじめが始まったという。
「合意のもとで複数の男子生徒と肉体関係を持ったのではないか」と疑われたペイジは、彼女の本当の姓である「スレッテン(Sletten)」を「アバズレ」などの意味をもつ「スラット(Slut)」という言葉とかけて「スラットン(Slutton)」と呼ばれるなど、被害者であるにも関わらず、あたかも彼女に非があるかのような非難を浴びせられ、心理的に追い込まれるように。
ある時には、彼女の自宅の庭木にまるでクリスマスオーナメントかのようにコンドームが吊るされていたこともあったという。
ヴィクティム・ブレ―ミングに耐えきれなくなった彼女は、家族とともに事件のあったオレゴン州からネバダ州へと引っ越すことに。姓を現在の「ヴァンザント」に変え、心機一転、新しい生活をスタートさせた。
そんななか、新天地でもダンスを始めようと教室を探していたペイジが偶然見つけたのが、元UFCスーパーファイト王者のケン・シャムロックが主宰するジムだった。以来、いじめから身を守るための護身術を兼ねて総合格闘技とボクシングにのめり込むようになった彼女は、18歳でアマチュアデビュー。24歳となった現在は、2017年に新設された女子フライ級の注目選手として活躍している。
今回、自伝本の中で、過去のレイプ被害やいじめについて打ち明けようと思った理由について、世界中で活性化している「#Me Too」や「#Time’s UP」などのセクハラ・性差別撲滅運動に感化されたことを挙げているペイジ。「本の中で語ることで、前に進みたいと思ったのです」、「私の物語を知ることにより、誰かの人生を変えることができたらと願っています」と、自身と同じようにいじめやレイプ被害に苦しんでいる人たちの支えになりたいと語っている。