Photo:ニュースコム,シンクストック/ゲッティーイメージズ
 60年以上に渡り、「黄金の腕」でたくさんの新しい命を救ってきたオーストラリア人男性が人生最後の”救済活動”を終えた。

「黄金の腕を持つ男」

 14歳の頃に肺の半分を摘出する大手術を受けたジェームズ・ハリソンは、その際に自分の命を救ってくれた「献血」という人命救助の方法に心から敬意を表するように。

 その後、18歳になり、献血が可能な年齢になった彼は、自分の血が妊娠中の女性や胎児を襲う深刻な「Rh血液型不適合妊娠」に対して有効なワクチンを作ることができる特殊な血液であることを医師から知らされた。

 「Rh血液型不適合妊娠」とは、母親と胎児の血液型が異なるだけでなく、母親に胎児の赤血球に対する「抗D抗体」という抗体ができ、攻撃してしまうことで、最悪の場合、赤ちゃんに脳障害をもたらしたり流産を引き起こしてしまうという状態。これを防ぐために「抗D人免疫グロブリン製剤」と呼ばれるワクチンが1960年代に誕生したが、そのドナー第1号となったのがジェームズだった。

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 以来、ジェームズはほぼ毎週欠かすことなく500~800mlを献血。約60年間の間に1172回もの献血を行ってきた。

 合計で240万人を超える赤ちゃんの命を救ってきた彼は、いつしか「黄金の腕を持つ男」として世間に広く知られるように。1999年には、その多大な貢献を評価され、オーストラリア政府から勲章を授与されている。

 現在81歳という高齢で、ドナーとなる年齢制限を超えていたジェームズ。医療機関の判断により、彼の健康を優先するため、5月11日の採血が生涯最後の献血となった。

 1173回目となった採血の現場には、彼の血をもとに作られたワクチンにより命を救われた赤ちゃんとその母親たちの姿も。

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 ジェームズは自身の献血人生について「誰かに『あなたのおかげで助かったんです』、『あなたは私のヒーローです』なんて言われると、なんだか照れくさい気持ちになるよ。私はたまたまこうすることができたっていうだけで、まあ、1つの才能みたいなものかな。僕に与えられた、才能はこれくらいしかないんだけど」とCNNに対して謙虚に語っていた。

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