不買運動が勃発
人気スポーツブランド、ナイキ(NIKE)のスニーカーを燃やす様子を撮影した動画や写真をSNSに投稿する人が急増。
これらの投稿には「BoycottNike(ナイキをボイコットせよ)」、「Never Nike(ナイキに明日はない)」などのハッシュタグが添えられており、同ブランドに対する不買運動を呼びかけている。
First the @NFL forces me to choose between my favorite sport and my country. I chose country. Then @Nike forces me to choose between my favorite shoes and my country. Since when did the American Flag and the National Anthem become offensive? pic.twitter.com/4CVQdTHUH4
— Sean Clancy (@sclancy79) 2018年9月3日
@Nike two Nike shirts and one pair of sneakers SO FAR!! #NeverNike pic.twitter.com/Mp8fRY2nUa
— Mark House (@MarkHouse_TBFL) 2018 年9月4日
ナイキへの不快感を露わにする理由
ナイキに対して敵対心を剥き出しにしているのは、同ブランドが人権活動家として知られるNFL選手コリン・キャパニックを新広告塔として起用したことに反発する人々。
キャパニック選手は、昨年9月、黒人をはじめとする有色人種への差別に抗議するためNFLの試合の国歌斉唱中に起立することを拒否し、国歌斉唱中にひざまずく「Take a knee(テイク・ア・ニー)」と呼ばれるアクションを起こしたことで、スポーツ界を代表する人権活動家として注目を浴びるようになった。
キャパニック選手の行動によって広まったムーブメントは、たくさんの人々の賛同を得たものの、一方では、彼の行動を「国家への侮辱」だと捉えた人々も。
そのなかには、ドナルド・トランプ米大統領もおり、当時、政治集会での演説や自身の公式ツイッターを通じて選手たちやNFLオーナーを猛烈批判。さらに今回、ナイキがキャパニック選手を広告塔に起用した件についても、トランプ大統領は「(キャパニック選手の起用は)全くの無意味。とても不快なメッセージを送っている」と米The Day Callerにコメントしている。
人種問題や移民問題に対して厳しい姿勢を貫くトランプ政権を支持し、キャパニック選手の存在を“悪しき象徴”と捉える人々が、見せしめとしてナイキのスニーカーやTシャツを燃やし、靴下から同ブランドのロゴを切り取るなどの過激な行動に出ているのだ。
キャパニック選手の主導で「テイク・ア・ニー」が広まり始めた際、俳優のジョージ・クルーニーがアメリカの現状を憂いたポエムを米Daily Beastに寄稿。
そこには、彼にとって選手たちの「ひざまずく」という行為は、国家への侮辱などではなく、人種差別の無い未来や国家の団結などのために「祈りを捧げている」ように見えるといった表現があった。
そんな、ある意味“平和への祈り”の象徴であるキャパニック選手への称賛に対して、「物を燃やす」、「破壊する」という憎悪に満ちた行動で返す反対派の主張から見るに、アメリカという国が抱える闇は底知れぬほど深いよう。
多くの経済評論家たちは、今回のナイキに対する不買運動は一時的なもので、やがて収まるだろうと見込んでいる。
ウェドブッシュ・セキュリティーズのアパレル業界アナリスト、クリストファー・スヴェジア氏は「ナイキは主な顧客層が14~22歳だということをよく理解しています」、市場調査会社NPDグループのマット・パウエル氏は「ナイキの主要ターゲット層は、(トランプ政権支持派)に多い“年配の怒れる白人男性”ではありません」とそれぞれ米ロイターにコメントし、最後に笑うのは、キャパニック選手の若者からの支持の高さに目をつけたナイキだろうと分析している。
(フロントロウ編集部)