フランスのカンヌで開催中の第72回カンヌ国際映画祭(以下、映画祭)。華やかなセレブが多く集まる世界最高峰の映画祭のひとつとして知られるイベントだけれど、その一方で近年では男女格差の是正が訴えられている。2015年には、映画祭にフラットシューズで訪れた女性がドレスコードに反しているとして入場を拒否されていたことが発覚し、この方針に異議を唱えるセレブたちが、翌年に裸足やフラットシューズでレッドカーペットに登場した。
そんな「女性差別」と批判された映画祭で、また新たなできごとが。
「子供を連れた母親」の入場拒否
イギリスの映画監督で女優のグレタ・ベラマシーナは、自身が監督と主演を務めた『HurtBy Paradise(原題)』のスクリーニングのため来場。しかし、入場を拒否されてしまった。
グレタが入場を拒否されてしまった理由は、なんと赤ちゃんを連れてきたから。彼女はまず、ベビーカーではメインエントランスを通ることができないと言われ、もし子供を連れて入りたいなら子供の入場料として約3万7,000円(260ポンド)を支払うように命じられたという。
世界最大級の映画イベントであるカンヌ国際映画祭で、自身の作品が初めてスクリーニングされることは、キャリアのハイライトになることは間違いない。映画祭の開催前、グレタは自身のインスタグラムに「カンヌ国際映画祭に映画を持っていけることにワクワクしてるわ」と書き込み、監督を務めた主演作が出品されたことを喜んでいた。
そんなグレタは、言い渡された費用の支払いに応じようとしたけれど、映画祭関係者は48時間かかる書類手続きが必要だと話し、再度入場を拒否した。
これについてグレタは、「時代に逆らうような不条理に怒りでいっぱいよ。私たちの業界において女性の監督はまだまだ平等を受けられないみたいね。皮肉なことに、私の映画はライターとしての仕事と子育てを両立させようとするシングルマザーの話なの。映画のいくつかのシーンで彼女は、見下されるように扱われる。けれど、今日私が映画祭で受けた扱いよりはマシよ」コメントし、怒りをあらわにした。
カンヌ国際映画祭に託児所がオープン
そんな理不尽なできごとが起きてしまったカンヌ国際映画祭だけれど、じつはイベント側は今年から会場近くに託児所を設置。約3,740円(34ドル)を払えば16時間のチャイルドケアを受けられるサービスを開始していた。
これについて一連の騒動後、映画祭側から連絡を受けたというグレタ。「映画祭に関わる人たちが、状況を改善しようとしているのは理解しているの。現場のセキュリティや受付にそれがきちんと伝わっていないことが問題だと思うわ。現場のスタッフは、優しさと思いやりと理解を示してほしい。もし映画祭が母と子どもに対して本当に優しくなりたいと考えているのなら」と話した。
映画界における男女差別をなくそうとする動きが広がるなか、今回のグレタへの対応は時代に沿っていないと批判の声が多く挙がっている。(フロントロウ編集部)