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映画などでのLGBTQ指数を測る「ヴィト・ルッソ・テスト(Vito Russo Test)って何?欧米のプライド月間である6月に、映画やドラマでのLGBTQ+の描かれ方にフォーカス。(フロントロウ編集部)

ヴィト・ルッソ・テストとは

 「ヴィト・ルッソ・テスト」は、作品のLGBTQ+指数を測るために、GLAAD(中傷と闘うゲイ&レズビアン同盟)が考案したテスト。映画・ドラマ・小説などの作品がどれだけ男女平等であるかを測る「ベクデル・テスト」をマネて作られた。

画像: 2018年公開の映画『Love, サイモン 17歳の告白』はヴィト・ルッソ・テストに合格している。©FOX 2000 PICTURES

2018年公開の映画『Love, サイモン 17歳の告白』はヴィト・ルッソ・テストに合格している。©FOX 2000 PICTURES

 ヴィト・ルッソ・テストに合格するには、以下の3点をクリアしなくてはいけない。


・レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、クィア(LGBTQ)のキャラクターが最低1人出演している

・そのLGBTQキャラクターの役柄の設定が、性的指向やジェンダーアイデンティティのみではない

・そのLGBTQキャラクターがストーリーの成り行きに影響する(その役柄がいなくなった場合にストーリーに影響が出るほどの規模の役柄でなくてはいけない)


画像: ヴィト・ルッソ・テストに合格している『デッドプール2』には、史上初めてLGBTQ+のスーパーヒーローが大作映画に登場して歴史を作った。©Marvel Entertainment/Twentieth Century Fox

ヴィト・ルッソ・テストに合格している『デッドプール2』には、史上初めてLGBTQ+のスーパーヒーローが大作映画に登場して歴史を作った。©Marvel Entertainment/Twentieth Century Fox

 ハリウッド映画では、LGBTQ+キャラクターの起用が増えているとは言え、“面白いコメントをするゲイの友人”や“隣に住むゲイのカップル”といった、ステレオタイプな役がまだまだ多い。映画史学者でありGLAADの共同創設者であるヴィト・ルッソの名前をつけて同テストを考案したGLAADは、LGBTQ+キャラクターを起用する場合の分かりやすい指標としてヴィト・ルッソ・テストを使ってもらいたいとしている。

 ただ、ここで注意点が。GLAADではヴィト・ルッソ・テストはあくまで最低ラインだとしており、映画『ズーランダー2』のように、テストに合格しても、LGBTQ+キャラクターのセクシャリティを笑いのネタにしたり、差別的な描き方をしたりしている作品は存在するとしている。

2019年は過去最高の合格率

 では、ハリウッドの映画は、どれだけの数がヴィト・ルッソ・テストに合格しているのか?GLAADが2019年5月に発表した、2018年1~12月に米大手配給会社(※)が公開した映画のデータから見る。

画像: 2018年に公開されてアカデミー賞を受賞した映画『女王陛下のお気に入り』は大手配給会社の作品ではないため統計には入っていないが、ヴィト・ルッソ・テストには合格している。

2018年に公開されてアカデミー賞を受賞した映画『女王陛下のお気に入り』は大手配給会社の作品ではないため統計には入っていないが、ヴィト・ルッソ・テストには合格している。

 まず、2018年に公開された110本の映画のうち20本にLGBTQ₊キャラクターが登場した。全体の18.2%にあたるこの数はGLAADの統計が始まって以来2番目に高い数値で、前年より5.4%アップした。さらにこれまでの統計では映画に登場するLGBTQ+のキャラクターは白人のゲイ男性が過半数を占めていたが、今年は統計が始まって以来初めてゲイとレズビアンの比率が平等に。一方で、バイセクシャルは約15%(映画3本)という水準を変わらず維持しており、トランスジェンダーのキャラクターにいたっては前年と同じくゼロという結果となった。

画像: www.glaad.org
www.glaad.org

 今回の結果から、2018年は5~6本に1本の映画にLGBTQ+キャラクターがしたことが分かったが、ではその中でヴィト・ルッソ・テストに合格した映画は何本あったのか?

 LGBTQ+キャラクターが登場した20本中、ヴィト・ルッソ・テストに合格したのは13本。全体の約65%という割合は過去最高の水準で、2017年の14本中9本、2016年の23本中9本、2015年の22本中8本という数字から一気に増加した。

 つまり2018年のハリウッドは、LGBTQ+の起用が増えただけでなく、LGBTQ+の描き方でも変化が見られたということ。

※米大手映画配給会社:20世紀フォックス、ライオンズゲート、パラマウント・ピクチャーズ、ソニー・ピクチャーズ、ユニバーサル・ピクチャーズ、ウォルト・ディズニー・スタジオ、ワーナー・ブラザース。

ヴィト・ルッソ・テストに合格した最新映画

 2018年公開の大手配給会社の映画の中から、ヴィト・ルッソ・テストに合格したのはこの映画。

『Love,サイモン 17歳の告白』

大手配給会社の作品として史上初めてゲイのティーンロマンスにフォーカス。カミングアウト、初恋、イジメ、デジタル世代の悩みといったLGBTQ+のティーンが直面する問題を描き、同性愛者であるサイモン自身が抱えるホモフォビア(同性愛嫌悪)な感情にも触れている。LGBTQ+の黒人俳優を複数起用しているという点でも評価されている。


『デッドプール2』

X-メンの一員であるネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッドに、ユキオという彼女がいることが明かされ、米大手配給のスーパーヒーロー映画に史上初の同性愛者のスーパーヒーローが登場。同役を演じるブリアナ・ヒルデブランドも同性愛者で、ライアンにこの脚本の流れを聞かされたときには、「最高だと思う。やろうよ!」と即答したという。


『アナイアレイション -全滅領域-』

ナタリー・ポートマン主演、『エクス・マキナ』のアレックス・ガーランド監督のSF映画。“シマー”と呼ばれる未確認エリアの調査部隊に所属するアニャ・ソーレンセン(ジーナ・ロドリゲス)は同性愛者としていう設定だが、それが彼女の役柄の主軸ではなく、同性愛者というアイデンティティの紹介もいたって自然に描かれている。


『グリーンブック』

1960年代のアメリカ中西部を舞台に、黒人のピアニストと白人の運転手兼ボディガードの関係を描き、第91回アカデミー賞作品賞を受賞。しかし同作は、ドン・シャーリーの遺族が内容に異を唱えるなど、批判も多い。劇中では黒人に対する人種差別が白人の視点から描かれており、60年代のアメリカで黒人の同性愛者であることがどれだけ厳しかったかという現実にも深く触れていない。


『蜘蛛の巣を払う女』

ベストセラー3部作『ミレニアム』シリーズの続編の実写版。サスペンス・アクション映画である同作で、主人公のリスベット・サランデルは、ソフィアという女性とロマンスしている。大作のアクション映画の主人公は白人男性であることが大半なだけに、バイセクシャルの女性を主人公にした同作の貢献度は大きい。同作は2019年のGLAAD最優秀映画賞(大作)を受賞した。


『ブロッカーズ』

プロム(卒業記念パーティー)の日にバージンを失う約束をした3人の10代女子と、それを止めようとする親の物語を描いたコメディ。コメディ映画はセクシャリティを笑いのネタに使うことが多いジャンルだが、同作では、異性の話で盛り上がる友達に合わせようと自分を偽るなど、10代のLGBTQ+が直面する問題が笑いの中にちりばめられている。


『トゥルース・オア・デア 〜殺人ゲーム〜』

トゥルース(真実)を言うか、デア(挑戦)をするか、どちらかを遂行しないと死が待っている呪いのゲームに大学生たちが翻弄される、ルーシー・ヘイル主演のホラーサスペンス。ホラーは、LGBTQ+キャラクターの登場が極端に少なく、登場しても悪者として描かれることが多いジャンルだが、同作では同性愛者の男性が大学生グループの1人として自然に登場する。


『Nightschool(原題)』

ケヴィン・ハートとティファニー・ハディッシュ主演のコメディ。高卒のテディが日本の大検にあたるGEDに合格するために夜間学校に通い、教師のキャリーや仲間とのドタバタ劇を繰り広げる。ネタバレになるため多くは言えないが、LGBTQ+キャラクターのセクシャリティをギャグにしていない、コメディ界では珍しい作品。


『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』

※1作目のネタバレが含まれます

ABBAのヒットソングを歌って大ヒットした2008年の映画の続編。1作目にドナの元恋人でソフィの2人目の父親候補として登場したハリー(コリン・ファース)は、ご存じのとおり、前作のラストでゲイであることをカミングアウトした。続編ではフェリーの係員に色目を使うシーンがあり、次回作が作られる場合は、ほかの主要キャラクターと同じようにハリーのロマンスもより具体的に描いてほしいとGLAADはしている。


『クレイジー・リッチ!』

ニューヨークで出会い付き合っていた彼氏が、じつは母国シンガポールでは有名な財閥の御曹司だったというラブコメディ。オリヴァーという、“主人公のゲイの友人”というステレオタイプにギリギリ留まらないほどの活躍をするキャラクターが登場する。演じるのは、ゲイであることをカミングアウトしている俳優のニコ・サントス。


『ボヘミアン・ラプソディ』

クイーンのフロントマンでありLGBTQ+アイコンであるフレディ・マーキュリーの自伝映画。映画ではフレディの長年のパートナーだったジム・ハットンが登場し、バイセクシャルであるフレディの性的指向にも触れられた。ただ一方で、フレディのHIVとの闘いについての描写が薄すぎたという指摘も。死後に彼の名のもと多くの啓もう・慈善活動が行なわれて、彼のHIVとの闘いがどれだけ彼や他人の人生にインパクトを与えたかを考えると、描写が足りなかったとされている。


『Superfly(原題)』

主人公ヤングブラッド・プリーストが裏社会から手をひこうとする、1972年に公開されたクライム映画『スーパーフライ』のリメイク版。オリジナルではプリーストにジョージアという彼女とシンシアという愛人がいたが、リメイク版では女性同士も恋愛関係にあるという設定に。とは言え、ジョージアとシンシアの関係についてGLAADは、「男性の妄想の観点から描かれている」と指摘している。


『レッド・スパロー』

ジェニファー・ローレンスがロシアのスパイに扮する映画。ステファニー・ブーシェ(メアリー=ルイーズ・パーカー)という政治家がレズビアンとして登場するが、“悲劇の結末を迎える”という長年ハリウッド映画が用いてきたLGBTQキャラクターの描き方をしているとして、GLAADからの評価は低い。

 ヴィト・ルッソ・テストを含む最新のハリウッド映画でのLGBTQ+の描かれ方は、2019 GLAAD Studio Responsibility Index(英語のみ)にて閲覧できる。(フロントロウ編集部)

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