日本発で世界的に大きな注目を集めている、日本の職場における女性のハイヒールの着用義務の廃止を求めるムーブメント。セクハラ撲滅運動MeToo(ミートゥー)と「靴・苦痛」という言葉を合わせたKuToo(クートゥー)というハッシュタグを合言葉にしたオンライン署名活動は、2月の立ち上げから約4ヵ月で2万5,000を越える署名が集まっている。
しかし、6月に入って厚生労働大臣がヒール強制を容認する発言をして物議に。ただ、それがきっかけでKuTooの話題が世界的に報じられ、現在、ベルギー大使館やイギリスの名門大学UCLの生徒など、世界各国からKuTooを支持する声が上がっている。
ベルギー大使館の職員は、自分が履く靴を自由に選ぶことができます。ハイヒールを履くことを強要しません!私たちは平等・多様性・選択の自由を尊重します。#KuToo #ハイヒール #MeToo
— Belgium in Japan (@BelgiumEmbJapan) June 4, 2019
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世界では、ハイヒールについてどんな呼びかけが?
ハイヒールやパンプスの着用義務は、世界でもたびたび問題になっている。話題になった事例を紹介。
ノルウェー航空
女性の客室乗務員がヒールのない靴を履く場合は、医者からの診断書を肌身離さず持ち歩かなくてはいけないとされていたノルウェー航空。しかし、女性だけがヒールを履かなくてはいけないことや、化粧をしなくてはいけないこと、そして男性は化粧をしてはいけないことは性差別だとして、2019年5月に、女性がいつでもフラットシューズを履いて良いこと、化粧をしなくても良いこと、男性でも化粧をして良いことが、ノルウェー航空の声明で発表された。
イギリス
2016年に、イギリスの大手会計事務所で受付をしていた女性がハイヒールを履いての業務を拒否したところ、給与なしの帰宅を言い渡された。この事件をきっかけに、英政府にヒール着用強制を禁止するよう求めた署名は、15万人以上にのぼった。また、イギリスの大手新聞社Telegraphが行なったウェブ上のアンケートでは、82%がヒール着用の強制は性差別であると回答。この嘆願書はその後、政府によって拒否された。
カナダのブリティッシュ・コロンビア州
カナダのブリティッシュ・コロンビア州では、2017年にハイヒールの着用を職場で強制することを禁止する法律が定められた。ブリティッシュ・コロンビア州の元労働相シャーリー・ボンドは、「職場の履物に求められるのは安全性です」と声明を発表している。
ドバイのナイトクラブ
アラブ首長国連邦のニュース社Gulf Newsが伝えたところによると、日本にもある世界的有名クラブ1Oakの1Oak Dubaiに入ろうとした女性が、ハイヒールを履いていなかったことを理由に入店を拒否された。先に入店していた彼女の夫はスニーカーだったという。また、ドバイに住む他の女性からも、「ドバイのクラブは『安全性』のために、女性にだけハイヒールを履かせるみたい。確信を持って言えるけど、ハイヒールを履いたほうが危険」と自身のツイッターでコメント。Gulf Newsによってコメントを求められたクラブ側は、ヒール着用は強制でないとしながらも、クラブに相応しい恰好を求めるとしている。
カンヌ国際映画祭
フラットシューズを履いていた女性が、ケガが理由だった場合でも入場を拒否され問題になっているカンヌ国際映画祭。2016年には、多くの女優が裸足やフラットシューズを履いてカンヌ国際映画祭に非難の意を示した。しかし、今年2019年のカンヌ国際映画祭では、ふたたびフラットシューズを履いていた女性が入場を拒否されてしまった。
女性にだけ課されるハイヒール着用の強制に異議が出はじめたのは、20世紀の終わりごろ。2000年には、眠らない街ラスベガスで働く女性たちが、健康上の理由であってもハイヒール着用を義務づけるカジノ側に声を挙げ、「Kiss My Foot(キス・マイ・フット)」というキャンペーンを開始した。
それから約20年のあいだに前述 のように世界各国で同じように 強制への異議が起こりつづけ、今回、日本でKuTooというスローガンのもと議論が盛り上がりを見せている。(フロントロウ編集部)