映画『Girl/ガール』あらすじ
映画『Girl/ガール』の主役は、身体は男性、心は女性である15歳の少女ララ。彼女はトランスジェンダーでありながらも、献身的な父の支えもあり、難関のバレエ学校にバレリーナとして入学を許可される。夢に向かって血のにじむ努力を重ねるララだけれど、次第に自分を追い詰めていくようになる。張り詰めた精神状態のララと、そんな彼女を必死に支える父。2人が迎える胸が張り裂けそうになるクライマックスは、観客の心を大きく揺さぶる…。
『Girl/ガール』を見るべき4つの理由
同性愛者とは違うトランスジェンダーの悩み
女性として女性に、男性として男性に恋に落ちる同性愛者とは違い、トランスジェンダーは、心と身体の性別が一致していない。世間の反応の以前に、着替えのたびに、シャワーのたびに、自分の心の性別とは違う身体が見えて、“自分自身”が受け入れられないという、トランスジェンダー特有の葛藤を今作は克明に描いている。
現代社会における問題や葛藤
今作は、社会的に進んでいると言われているベルギーが舞台。LGBTQ+への理解も深く、劇中の女子生徒たちはララを女子生徒の1人として受け入れており、ララが女子更衣室を使用することにも異論を唱える者はいない。しかしそんな環境のなかでも、ララの心を傷つける出来事が起こっていく。LGBTQ+が受け入れられた社会で起こる差別や区別とはいったい何なのか?
家族の愛
ララの父親や親戚は、全員がありのままのララを愛している。LGBTQ+を題材にしている多くの作品は、最も親しい人々の理解が得られず苦しむ当事者の姿が描かれることが多いけれど、この映画でのララと家族の関係は、心を揺さぶられるほど愛で溢れている。とくに、ララを必死に理解しようとして、サポートするために人生を捧げる父マティアスの姿は必見。
ララ役のビクトール・ポルスター
今作の主演を務めるビクトール・ポルスターは、アントワープ・ロイヤル・バレエ・スクールに通うトップダンサー。500人が集まるオーディションを行なってもララ役が決まらず途方に暮れる監督の前に、ビクトールは、ララのクラスメート役のオーディション参加者として姿を現した。トップダンサーだからこそできる、ララの思いを表現したかのようなダンスシーンや、その透明感は、監督を虜に。異性愛者の男性がトランスジェンダーのララを演じたことには賛否両論があったけれど、今作にモデルとなったトランスジェンダーのバレリーナ、ノラ・モンセクールからもその存在感にお墨つきをもらっている。
トランスジェンダーを深く描写し、その葛藤を描いた今作。次世代のLGBTQ+映画として、一見の価値あり。(フロントロウ編集部)