ウクライナで児童に対する性犯罪を行なった加害者に、化学的去勢を義務づける法案が可決された。(フロントロウ編集部)

小児性犯罪者に厳しい制裁

 ウクライナ議会は7月11日、小児性犯罪者に化学的去勢を義務づける法案を可決した。この法律は、子供に対するレイプや性的虐待を犯した全ての加害者に適用される。

 この法律によって子供に対する性犯罪を行なった犯罪者は、抗男性ホルモンを投与されることになる。薬物を投与された場合は性的関心が減少するが、投与をやめると男性ホルモンは再び生成されるようになるという。

画像: 小児性犯罪者に厳しい制裁

 ウクライナでは2017年に320件の児童レイプが報告されたが、小児性愛者による性的虐待は数千以上と見られている。ウクライナの警察署長は、「24時間で5人の子供が4つの別々の地域でレイプされるという痛ましい事件が起こったこともあります」と英Metroに明かし、「この国で、どれだけの数の子供に対する性加害が隠されているのかは、私たちはただ推測するしかできません」と話した。

 さらに先月6月に、レイプに抵抗した11歳の少女が、22歳の男にレイプされた後に殺害される事件がウクライナ南部で起こった。ウクライナでは、この事件をきっかけに、深刻化する児童虐待を問題視する声が過熱しており、本法案はその矢先の可決となった。

 ウクライナ政府は強制的な化学的去勢の法律の他にも、児童レイプや未成年者への性的虐待で逮捕された小児性愛者の公的リストを制作し、出所したあとは警察によって生涯ずっと監視されるよう計画している。

『強制』案には賛否両論が巻き起こっている

 ウクライナの有権者からの支持は高いとされている本法案。一方で、医師や法律の専門家からは反対意見が多くでている。

 この法案を指揮したのは、先の選挙で議会に存続するために必要な5%の支持率を獲得できない可能性が高いとされている急進党党首のオレグ・リャシコ氏。

 当時ウクライナ議会では、児童への性的犯罪を行なった者への刑期の厳罰化や、非公開で公的リストを作ること、自発的な化学的去勢を導入することなどが協議されていた。しかし最終協議の段階でリャシコ氏の代替え案が採用された。化学的去勢が自主的から強制的に書き換えられた法案に専門家の考察は含まれていなかったそうで、英Independentが賛成票を投じた議員らに聞き取り調査を行なったところ、多くの議員がどのような法案に投票していたかを完全には理解していなかったと認めたという。

画像: 『強制』案には賛否両論が巻き起こっている

 この新法案に対し、最初の法案をまとめた犯罪学者は「化学的去勢は罰として使われるべきではありません。もしそうであれば、それは拷問でしょう」と英Independentに語り、政府の決定を批判した。

 一方で強制的な化学的去勢の提案者であるリャシコ氏は、法案の説明文で、「ウクライナの法律は、子供に対する性加害において終身刑も死刑も適用できません。しかし、レイプ加害者は出所したあと、彼らの『ビジネス』に戻ることはないとは言えません」と、義務化の意図について話している。

 この法律が法令集に記載されるためには、さらに議長と大統領の署名が必要になる。

 世界では他にも、ポーランドで児童または親族に対する性犯罪者に化学的去勢を強制できる法律がある。スウェーデンでは、本人の同意のもとで性犯罪者への化学的去勢を認めているが、精神障がい者に対しては非自発的な化学的去勢も認めている。先月2019年6月には、アメリカのアラバマ州で、小児性犯罪者が仮出所する際に犯罪者の自己負担で化学的去勢を義務づける法律が成立した。(フロントロウ編集部)

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