人気ブランドのシャネルがコスメの広告塔にトランスジェンダーのモデルのテディ・クインリヴァンを起用した。(フロントロウ編集部)

トランスジェンダーモデルが勝ち取った広告

 ディオール(Dior)やメゾン・マルジェラ(Maison Margiela)、ヴァレンティノ(Valentino)といった一流メゾンのランウェイを歩き、ファッションショーを中心に活躍しているモデルのテディ・クインリヴァンは、2017年に自身がトランスジェンダーであることを告白。

画像: トランスジェンダーモデルが勝ち取った広告

 それ以降も数多くのブランドのランウェイを歩いてきたテディが、シャネル(Chanel)のコスメラインの広告塔に起用されることに。

 シャネルがコスメラインの広告塔にトランスジェンダーであることを公言しているモデルを起用するのは、はじめてのこと。テディは自身のインスタグラムにこの快挙についてこう述べた。

「悲しい時は涙を流さないのに、おもしろいことに勝利の瞬間は涙が流れることに気づきました。これは私にとって勝利の涙を流した瞬間でした。私は人生を通して戦ってきました。学校では一貫していじめられてきて、子供たちは私を殺すと脅し、どう殺すかを事細かに説明してきました。父親は私をファゴット(男性同性愛者や女性的な男性に対する侮辱的な蔑称)と呼び、私に暴力をふるいました。仕事現場での性的暴行を公にすると、業界で否定的な反応を受けました。この出来事(シャネルの広告塔になったこと)は、これまでの全てのクソな出来事にも価値があったと思わせる勝利です。私は ひそかに シャネルのショーに2回出たことがあります(ひそかにというのはトランスジェンダーであることを公にしていなかったということ)。カミングアウトした時、いくつかのブランドとの仕事を終えなければならないと分かっていた。私はもう2度とこんなアイコニックなブランドであるシャネルと仕事が出来ないと思っていた。けれど、私はシャネルの広告塔になった。トランスジェンダーであることを告白したモデルとしては初めてシャネルと働くこととなり、自分がこういう形でコミュニティーの代表をすることが光栄で誇りに思います。世界にはあなたを蹴落とし、ツバをはき、あんたには価値がないと思わせる。でもあなたの仕事はそれに立ち向かい、前進し、闘い続けること。なぜならもしあなたが諦めてしまったら、勝利の涙は2度と流すことはできないから。私の夢を実現させてくれたみんなに感謝します!」

 多くの困難を経て、シャネルのコスメブランドの広告塔になったテディ。25歳にしながら様々な経験を積んでどんなことにも立ち向かってきたからこそ勝ち得た瞬間を語り、多くの人に感謝の気持ちを述べた。

トランスジェンダーモデルの活躍の幅が広がる昨今

 現在、モデル業界では、トランスジェンダーの男性・女性が活躍する機会が増えている。2017には、世界的に有名な男性誌であるPlayboyのプレイメイトにトランスジェンダーモデルのイネス・ラウが抜擢。

 さらにこれまでトランスジェンダーモデルの採用に消極的だった人気ランジェリーブランドのヴィクトリアズ・シークレットは、2019年にトランスジェンダーモデルであるヴァレンティナ・サンパイオを起用。雑誌からランウェイまで、様々な方面でトランスジェンダーモデルが起用されはじめている。

 そのほかにも、モデルの卵を発掘するオーディション番組にもトランスジェンダーモデルが出演するなど、トランスジェンダーモデルの活躍の場所は以前に比べかなり広がっていることがわかる。

 トランスジェンダーの受け入れにおいてはまだまだ進歩すべき面が多数あるが、トップメゾンの広告をはじめファッションや美容界においてトランスジェンダーモデルの起用が増えていることは、彼らの活躍の場を広げるだけでなく、世界中に存在するトランスジェンダーの男性・女性にリプレゼンテーション(※)を与えて希望を与える大きな一歩である。

 ※特定のグループを代表する存在のこと。男性大統領しか見たことがない少女は女性でもその
職に就ける チャンスがあると思いにくいように、自分と似た存在(リプレゼンテーション)を表舞台で見ることはそのグループの、とくに若い世代に重要な影響を与えると言われている。

(フロントロウ編集部)

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