『ジョーカー』BGMを制作したのは服役囚
DCコミックスの悪役ジョーカーを主役におき、そのダークな内容から賛否両論を巻き起こしている映画『ジョーカー』。
主演ホアキン・フェニックスの怪演も注目されているけれど、そのBGMも映画を効果的に彩る要素のひとつ。
かの喜劇王チャールズ・チャップリンの「スマイル」や、フランク・シナトラの「センド・イン・ザ・クラウンズ」、クリームの「ホワイト・ルーム」などが使用されるなか、ある1つの音楽が問題となっている。
それは、映画において重要なシーンのひとつに使用された、イギリス人シンガーのゲイリー・グリッターによる「ロックン・ロール・パート2」。
じつは、楽曲そのものが批判を浴びているわけではなく、ゲイリーの楽曲ということが問題視されている。
というのも、ゲイリーは過去に児童に対する性犯罪を何件も起こしており、現在は服役中だから。
1944年生まれのゲイリーは、1997年に、数千件の児童ポルノをパソコン上に所持していたことで4ヵ月の実刑判決を受けてイギリスで性犯罪者として登録された。この時、ゲイリーは1970年代にも未成年者と性的な行為をしたという疑惑が出ていたが、無罪となった。2000年には、スペイン、キューバ、カンボジアで児童虐待の罪に問われ、国外追放に。そして、その次に向かったベトナムにおいて、2005年に18歳以下の児童複数人とわいせつな行為をしたとして逮捕。さらに11歳の少女をレイプした罪に問われ、少女の家族に賠償金を支払った。翌年の2006年には、10歳と11歳の少女とわいせつな行為をしたとして3年の実刑判決が出され、その後ベトナムからイギリスへ強制送還された。
そして2012年、一旦は無罪となっていたゲイリーが1970年代に犯した未成年者との性的行為の証拠が再発見され事態はふたたび動き出すことに。ゲイリーが過去に犯したレイプ、未成年者に対するわいせつ行為、さらに13歳以下の少女と1975年から1980年の間に性的関係を持ったとして、16年の実刑判決が出された。ゲイリーは現在、その罪によって服役している。
『ジョーカー』で“児童虐待者”の音楽使用は問題
そういった背景があることから、ゲイリーに映画への使用料としてお金が支払われること、さらに、DVDやサウンドトラックの売り上げによっても印税が発生することが問題視されている。
作家のダレン・ムーニーは、「『ロックン・ロール・パート2』の使用は、『ジョーカー』におけるモラル的に1番無責任な問題だ」とし、「小児性愛者へ印税を払うという決断には、弁護の余地はない」と断言。
以下、映画『ジョーカー』のネタバレを含みます。
ライターのサイモン・ラゴーナナンは、「ゲイリー・グリッターは『ジョーカー』によって印税を得ることになる。(『ジョーカー』の制作者たちは)児童虐待の結果を描いた映画で、彼の音楽を使うために、小児性愛者に金銭を支払ってるんだぞ」と怒りのツイートをした。
ジョーカーは、ゴッサムシティに住むアーサー・フレックがジョーカーになっていくまでを通して、現代社会の闇を描いた作品。アーサーが幼少期に受けていた虐待が彼の人生に大きな影響を及ぼすことから、数々の児童虐待の罪を犯してきたゲイリーの楽曲が使用されていることに納得できない批評家が相次いだ。
『ジョーカー』は、悪役を主役においたことで、社会に悪影響を及ぼすのではないかとの議論が公開前から加熱。ジョーカーを演じたホアキンは、「もし誰かが精神のバランスを崩していたら、彼らはどこからでもキッカケを見つけられると思う」と、凶悪犯罪に手を染め る人間はいつどんなきっかけからスイッチが入るかわからないため、映画が悪いとは一概に言えないと米IGNのインタビューで話している。
『ジョーカー』は、アメリカ国内での10月のオープニング成績で、歴代最高を更新した約100億円を記録。全世界ですでに約260億円を突破している。(フロントロウ編集部)