少年を守った教師の行動
今年2019年5月に、ある1人の高校生がショットガンを持って高校の教室に乗り込んだ。
事件当時、学生は教師によって取り押さえられたと報じられていたけれど、10月18日に、マルトノマ郡弁護士事務所がその様子が収められた映像を公開。
そこに映っていた教師たちの行動に、多くの人が心打たれている。
映像の始めでは、教室から人が逃げ出す。すると続いて、ショットガンを持つ男性と、男性につめよる若者の姿が。男性は高校で働く体育コーチであり、この時点で、すでに少年からショットガンを取り上げていた。そしてそれを察知した別の教師が、奥からコーチのもとに駆け寄り静かに銃を受け取る。するとコーチは、自由になった両手で少年をきつく抱きしめた。少年は抵抗したけれど、コーチは話しかけ、抱きしめ続けた。そんなコーチの行動によって、少年は泣き出したことが見てとれる。コーチによって保護された少年は、その後到着した警察に引き渡された。
事件を担当したポートランド警察は、「(現場にいた)すべてのスタッフが素晴らしい働きをしてくれました」とコメントしている。
少年は、公の建物での銃の不法所持と、公の建物で装填した銃の不法所持によって、3年の保護観察処分となった。彼は、現場で自殺を考えており、自分以外の人を傷つけるつもりはなかったと話している。
少年をハグしたケアノン・ローは元オレゴン・ダックス フットボールの選手で、現在は高校で、サッカーと陸上競技のコーチ、そして警備員として生徒たちを指導している。ケアノンは米USA TODAYに当時を振り返ってこう語った。
「彼に哀しみを感じました。多くの時に、とくに自分が若い時には、それが終わるまで自分がなにをしているか気がつかないものです」
また、「この話は、悲劇として終わることがほとんどです」としたうえで、米ニュース番組『GoodMorning America(原題)』でこう話した。
「あの部屋に自分がいたことには意味があると感じています。彼は私があの部屋にいるとは知らなかったし、私の人生で起きたことのいくつかは、あの一瞬のために準備されたものだったと思います」
米疾病対策センターによると、アメリカで2016年に銃によって亡くなった人の総数は約3万9,000人。そのうち未成年者は年間1,300人に近いという。さらに拳銃の事件に巻き込まれた人の数は年間11万人に上り、毎日310人が拳銃によって撃たれているとされている。さらに計算上では、1日1件は4人以上が銃によって撃たれる事件が発生しているという。
アメリカでは長年にわたり銃規制賛成派と反対派の対立が続いているけれど、ここ数年で、銃乱射事件を生き延びた高校生を中心に若者たちの間で銃規制を求める声が高まっている。2018年にはアメリカの首都ワシントンで80万人が参加するデモが開催され、2019年8月には、子供を持つ母親たち数百人がホワイトハウス前でデモを行なった。(フロントロウ編集部)