おじさん俳優が若くなる!
10月25日に日本全国ロードショーされた映画『ジェミニマン』は、「現在のウィル・スミス」と、VFX技術を駆使した23歳のウィル・スミス」を見ることができるということで話題になっている。“50歳の史上最強スナイパー”と“23歳の若きクローン”という設定の本編は、これまでにないリアルさで、観客を驚かせている。
(あらすじ)
ウィル・スミス演じる史上最強のスナイパー、ヘンリーは政府に依頼されたミッションを遂行中、何者かに襲撃される。自分の動きを全て把握し、神出鬼没で絶対に殺せないと評される最強のターゲットをヘンリーは追い詰めるが、襲撃者の正体が秘密裏に作られた“若い自分自身”のクローンだという衝撃の事実を知る。国防情報局のエージェント、ダニーの協力も得てヘンリーは、政府を巻き込む巨大な陰謀に巻き込まれていく…。
「VFX」、「SFX」、「CG」の違いって?
最近、映画関係の記事やメイキングなどで見かけることも多くなってきた「VFX」や「SFX」という言葉。「CG」という言葉を聞いたことはあっても、そういった専門用語について詳しくない人も多いのでは。年々盛んになってきている「CG」、「VFX」、「SFX」について簡単に解説!
「CG」とは?
「コンピュータ・グラフィックス」の略で、コンピュータを使って作られた映像のこと。CGを先駆けて使った映画のひとつに、映画『ジュラシック・パーク』がある。天気予報のように、何もない空間の背景にグリーンやブルーの背景色を作って合成する「グリーンバック(ブルーバック)」と呼ばれる撮影もCGのためのもの。
「VFX」とは?
最近耳にするようになった「VFX」は、「ビジュアル・エフェクツ」の略で、日本語では「視覚効果」という。CGとの違いは、「CGはコンピュータで作られた映像」のことで、「VFXはコンピュータで作られた映像を、実際に撮影した映像と組み合わせたもの」というところ。
例えば、「実際には降っていない雪を降らせる」シーンや、「現実の街並みに宇宙船が浮かんでいるシーン」、さらには「映像内の鏡に映りこんだ人物を消してしまう」シーンも、VFX。
「SFX」とは?
「SFX」は、「スペシャル・エフェクツ」のことで、日本語では「特殊効果」や「特殊撮影」と呼ばれている。
これは、「ワイヤーアクション」や「特殊メイク」、「ミニチュア撮影」などの、現実のものに対して効果を施すもの。
「VFX」にも「SFX」にもそれぞれいいところがあるので、監督や製作者によって取り入れ方はさまざま。
「VFX」で若返った俳優のビフォーアフター
1、ブラット・ピット『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(2008)
ブラピが20代から80代までを演じたことで観客を驚かせた本作。アカデミー賞美術賞、視覚効果賞、メイクアップ賞の3部門で受賞した。80歳のような姿で生まれ、どんどん若返り赤ちゃんの姿で死んでいくという斬新なストーリーは感動。
2、ロバート・ダウニー・Jr.『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)
当時「魔法だ」とも言われたこの若返り映像。ロバート演じるトニー・スタークがMITでスピーチする場面はほんの数分しかなかったけれど、この再現だけで約4000ものフレームに技術を施したという。
3、サミュエル・L・ジャクソン『キャプテン・マーベル』(2019)
マーベル映画のなかでは、これまでも『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』でカート・ラッセルが、『アントマン』シリーズでマイケル・ダグラスやミシェル・ファイファーが「若返り」処理を受けてきた。けれども、『キャプテン・マーベル』がこれまでの作品と全く異なっているのは、「若返り技術が、本編の大部分に施されている」というところ。本編の約3分の2に登場するサミュエルは、しわを取り除いたりメイクアップの力によって、スタントなしで25歳若返らせることに成功。VFXチームは、サミュエルの肌つやの良さにびっくりしたという逸話も。
4、ウィル・スミス『ジェミニマン』(2019)
『ジェミニマン』は、ウィルの表情や肌、眼球の動きなどを徹底的に分析して作られた。ウィルの若い頃の写真や映像を収集し、どうやって若いウィルを生成するかについて深く掘り下げたという。この方法のおかげで、撮影したウィルの顔をVFX加工するのではなく、完全にフルCGで構築することに成功。ちなみに、映画『ターミネーター4』の若返りシーンでは、アーノルド・シュワルツェネッガーの若い頃の顔を別人の体に合成していたという。
『ジェミニマン』の撮影時にウィルは、若い頃の自分の動きを再現するように意識したけれど、それが上手すぎて監督のアン・リーに「そんなにうまくやらないでよ」と笑ったそう。
5、ロバート・デニーロやアル・パチーノ『アイリッシュマン』(2019)
マーティン・スコセッシ監督の『アイリッシュマン』は、『ジェミニマン』と公開が近いけれど、まったく異なる手法を使っているという。『ジェミニマン』では、ウィルの顔や体を徹底的に分析する手法で撮影を行ったけれど、『アイリッシュマン』では逆に、俳優には必要最低限のことしかしてもらわなかったそう。顔にマークを付けたり、ヘルメットを着用せず、3台の特殊カメラとソフトウェアで、「若返り」に成功。機材は総額、1億5000万ドルもするという。
現在公開中の『ジェミニマン』では、ウィル・スミスの若い時と現在を、同時に見ることができる。今週末は劇場に足を運んで、映像技術の変化を体感してみては。(フロントロウ編集部)