アカデミー賞へエンジン全開の『フォードvsフェラーリ』
映画『フォードvsフェラーリ』は、クリスチャン・ベールとマット・デイモンというハリウッドを代表する2大実力派俳優が共演した作品で、モータースポーツ界で最も過酷だと言われるフランスのレース「ル・マン24時間レース」を題材に扱っている。
「ル・マン24時間レース」とは、その名の通り1台のスポーツカーで24時間走り続け、優勝を争う耐久レース。本作は1966年に実際に起こったドラマの様子を圧巻の熱量で描いているが、まさにカーレースのようにエンジン全開でアカデミー賞候補に突っ込んできた。
そんな『フォードvsフェラーリ』は、全米で11月15日に公開された後3日間で約33億円(3,100万ドル)もの興行収入をたたき出し、2位の『ミッドウェイ(Midway)』と約3.7倍もの差をつけるオープニング成績を記録。
さらに、米映画批評サイトでは批評家によって92%の評価を得ただけでなく、顧客満足度も98%という驚異の高評価で迎えられた。
全米と同時に公開されたロシア、イタリア、メキシコ、アルゼンチン、オーストラリア、香港などの国と地域でも堂々の第1位を獲得し、瞬く間に世界中を大興奮の渦へと巻きこんだ。
本作が人気の理由と見どころは?
監督は『17歳のカルテ』や『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』、『LOGAN/ローガン』などのジェームズ・マンゴールド。本作に、極限のダイナミズムと豊かな人間味を吹き込み、伝説の実話をスクリーンに輝かせる手腕を遺憾なく発揮した。
これまで「カーレース」という題材は、必ずしも作品を成功に導くとは言われてこなかった。例えば、2013年に公開されたクリス・ヘムズワース主演の映画は、F1の危険なレースを題材にして高評価を得た作品だったものの、興行収入的には大きく振るわずに終わった。
そのリスクにひるまず、『フォードvsフェラーリ』は『ラッシュ/プライドと友情』の3倍もの予算を投じて制作され、みごと多くの観客を楽しませる素晴らしい仕上がりとなった。
見どころは、なんといってもレースの緊張感。じわじわと絶頂へと上り詰めるような興奮と、ほっとするような瞬間の緩急が絶妙。
そして、クリスチャン・ベール演じるケン・マイルズの「狂犬」ともいうべき喜怒哀楽と破天荒さも見逃せない。彼が見せる情熱的な演技は、クリスチャンの俳優史上最も素晴らしいとまで評されるほど。
もちろん、マット・デイモンが演じるキャロル・シェルビーが見せる冷静と情熱の間を行き来する円熟の演技も見ごたえたっぷり。
監督のジェームズが米Indiewireに「目を通して魂に侵略する」と語るほどの熱量が込められた『フォードvsフェラーリ』は、2020年1月10日にロードショー。(フロントロウ編集部)