12月1日は世界エイズデー
12月1日は世界エイズデー(WorldAIDS Day)。エイズ(AIDS)の蔓延防止と患者や感染者に対する差別と偏見の解消のために、WHO(世界保健機関)が1988年に制定したこの記念日を中心に、毎年、世界各国でエイズに関する啓発活動が行なわれる。
【エイズとHIVの違い】
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)の感染によって、免疫に大切な細胞が減り、さまざまな病気を発症する状態をエイズ(AIDS)=後天性免疫不全症候群という。エイズを発症してしまうと命を脅かす重度の症状を引き起こしやすくなる。一方で、HIVは近年の医療の発展とともに早期に適切な服薬治療を受ければ、免疫力を落とすことなく通常の生活を送ることが可能になってきた。
レッドリボンがシンボルの世界エイズデーを前に、ドナルド・トランプ米大統領の息子ドナルド・トランプ・ジュニアのツイートが大きな波紋を呼んでいる。
トランプ・ジュニアの無礼すぎる発言
トランプ・ジュニアは、LGBTQ+を専門に扱う米ウェブサイトQueertyが掲載した「HIVの人とセックスしないことによってあなたが失うもの(What you standto lose by not having sex with people with HIV)」という記事が添付されたツイートに対して、「いや、思い浮かぶことはただひとつ」とコメント。
Well I can think of one thing. https://t.co/A34xY74OYc
— Donald Trump Jr. (@DonaldJTrumpJr) November 23, 2019
400万人以上ものフォロワーがいるツイッター上で、あたかも“HIV患者と性行為したら死ぬ”とでもいうような、偏見に満ちたコメントをしたことに批判が殺到。
そもそも、HIV陽性=死というイメージは、現代において誤った認識。医療の開発が進んだ現代社会では、HIV陽性と診断されても、適切な治療を受けていれば普通の人と変わらず長い人生を送ることができる。
さらに、エイズに関連した死亡者の数は年々減少しており、数年前には国連が2030年までにエイズを撲滅できる可能性があると発表したことがあるため、エイズはもはや「死の病気」ではなくなってきている。
それにもかかわらず、大統領息子として多大な影響力のあるトランプ・ジュニアは、HIV/AIDSを死の病気という差別的な考えを人々に発信して、HIV/AIDS患者に対するスティグマ(ネガティブな固定概念)を助長した。
いまだに残るHIV/AIDSへの偏見
トランプ・ジュニアがコメントした米Queertyの記事は、HIV感染者がデートアプリ上でHIV陽性であることを公表しただけで拒絶されることから、HIV陽性の人のセックスライフにまつわる誤解を解こうと、HIVに対するスティグマについて問題提起したもの。
「HIVは咳やくしゃみ、キスからでも移る」という偏見がいまだにあるが、唾液に含まれるHIVは他人に感染するほどのウイルス量はないため、唾液による感染はないと言える。事実、日常生活においてセックス以外で人にHIVを移すことはないと断言する日本の医療団体もある(※)。
※歯ブラシとカミソリの共有は勧めないとしている。
また、HIVの感染は、性行為や注射器の共有などによってHIVを含んだ体液(血液・精液・膣分泌液・母乳など)が相手の血流に入ることで起きるが、現在は、HIVに感染する前から予防する薬や、予防に失敗した時に対処する薬が普及しているほか、母子感染の確立を劇的に減らす薬や療養も開発され、感染のリスクを減らすことができるようになった。
このように、エイズの蔓延に終止符を打つという目標は、ますます現実味を帯びてきており、それに平行して、より多くの人々がネガティブなレッテルを貼られたHIVについて正しく理解することが大切になってきている。(フロントロウ編集部)