人生の転換期を追ったドキュメンタリー映画が公開へ
2020年の1月23日から2月2日まで米ユタ州ソルトレイクシティで開催されるインディペンデント映画を対象とする映画祭、サンダンス映画祭で、シンガーのテイラー・スウィフトの人生の転換期を追ったドキュメンタリー映画『テイラー・スウィフト:ミス・アメリカーナ』がプレミア上映されることが明らかになった。
さらに、映像ストリーミング配信サービスのNetflixでも、2020年の上旬に同作の配信がスタートすることも発表された。
テイラーのアーティストとして、そして1人の人間、女性としての成長の過程や、素顔の彼女のエモーショナルな側面なども映し出すというこの作品のメガホンを取ったのは、女性監督のラナ・ウィルソン。
ウィルソン監督は、アメリカで妊娠後期の中絶手術を提供しているたった4人の医師たちに密着したドキュメンタリー映画『After Tiller(アフター・ティラ―)』で2015年のエミー賞の最優秀ドキュメンタリー作品賞を受賞したほか、2017年に発表した、自殺防止活動に取り組む日本人僧侶・根本一徹の日常に密着したドキュメンタリー映画『いのちの呼吸』も、数々の権威ある映画祭でノミネートを果たすなど、高い評価を得ている。
テイラーが映画『テイラー・スウィフト:ミス・アメリカーナ』の制作について初めて明かしたのは、2019年10月に行なった、前所属レーベルであるビッグマシン・レコーズと同社の買収により自身がデビューから2018年末までにリリースした過去の楽曲の原盤権を手にした音楽マネージャーのスクーター・ブラウンに過去の楽曲をライブパフォーマンスすることを妨げられていると告発した声明の中だった。
テイラーは、同作について「こんな形でみんなに伝えるつもりはなかった」としながらも、「ここ数年の私の人生をテーマにしたもの」と明かし、ビッグマシン・レコーズ側は、このドキュメンタリーのために、テイラーの昔の楽曲やパフォーマンス映像を使うことを許可してくれなかったと打ち明けた。
「EGOT」獲得への道が開く
アーティストに密着したドキュメンタリー作品が制作されるのは、とくにめずらしいことではないが、『テイラー・スウィフト:ミス・アメリカーナ』は、テイラーにとっては、キャリアにおけるさらなる飛躍の足がかりとなる可能性を秘めた重要な作品。
というのも、この作品が世に出ることにより、テイラーがエンターテイナーとして得られる最高の栄誉と呼ばれる「EGOT」を達成する道が開けるから。
「EGOT」とは、テレビ界最高峰のアワードであるエミー賞、音楽界最高峰のグラミー賞、映画界最高峰のアカデミー賞、演劇&ミュージカル作品の最高峰のトニー賞という米ショービズ界において最も栄誉ある4大アワードを制覇することをいう。
それぞれのアワードの頭文字(※)をとって、「EGOT」と呼ばれるこの偉業を達成した人物は、2019年末現在までにわずか15人。
※Eはエミー賞、Gはグラミー賞、Oはオスカー(アカデミー賞)、Tがトニー賞。
そのリストには、映画『ローマの休日』などで知られる俳優のオードリー・ヘップバーンや『キャッツ』など数々の名作ミュージカルを手がけた作曲家のアンドリュー・ロイド・ウェバー、黒人女性として史上初の達成者となった映画『天使にラブソングを…』の俳優ウーピー・ゴールドバーグ、そして、2018年のエミー賞受賞により黒人男性初の達成者となったシンガーのジョン・レジェンドら、錚々たるメンバーが名を連ねる。
女性アーティストの中で、テイラーと同じく、EGOTを達成する可能性があると言われているのは、ビヨンセやレディー・ガガ、シェール、アデル、ジェニファー・ハドソンら。
すでに過去に10回ものグラミー賞受賞歴があり、2015年には、ヒット曲「ブランク・スペース」のMVのセットを360度カメラで撮影し、ファンがその中を探索することができるというユニークな手法の映像作品『アメックス・アンステージド:テイラー・スウィフト(AMEX Unstaged: Taylor Swift Experience)』でエミー賞の受賞を果たしたテイラーは、EGOTを達成するには、あとトニー賞とアカデミー賞を獲得する必要があるが、映画『テイラー・スウィフト:ミス・アメリカーナ』が高く評価されれば、アカデミー賞の受賞も視野に入ってくる。
14歳からスタートしたキャリアにおいて、いくつもの輝かしい功績を残しているテイラーだけに、今よりもさらに上を目指そうとするなら、ショービズ界の頂点とも言えるEGOTを狙っている可能性も十分にあり得る。
テイラーがドキュメンタリー作品の新鋭ウィルソン監督とタッグを組んだ『テイラー・スウィフト:ミス・アメリカーナ』が一体どんな作品となるのか、同作の中でテイラーがどんな素顔を見せてくれるのか、公開が待ちきれない。(フロントロウ編集部)