ホアキン・フェニックス、役作りに苦悩
映画『ジョーカー』で、現代社会が抱える闇を、1人の男性アーサー・フレックがジョーカーになる過程を通して表現するという難解な演技を見事こなし、第77回ゴールデン・グローブ賞主演男優賞を受賞したホアキン・フェニックス。
台本を読まずに役になりきりたいという信念を持つホアキンらしく、『ジョーカー』の撮影現場では多くのアドリブも行なわれたけれど、ある時期にはスランプのような状態に陥ったという。
撮影中のある時期、ホアキンは同じシーンの撮影を何度も繰り返すことになってしまったという。そんなホアキンを前にフィリップス監督は「もう一度やってみよう」と言うだけだったそうで、ホアキンは、「監督は具体的なことは言わなかった。監督は、僕が自分でアイディアを見つけないといけないと分かっていたからだと思う」とパームスプリングス国際映画祭で振り返る。
ホアキン・フェニックス、苦悩の先に見つけたもの
ホアキンと撮影陣は撮り直しを続け、ついにホアキン自身もフィリップス監督も納得する演技が出来たという。「いいテイクだった」と満足げな監督から「今のはなんだったんだ?」と聞かれたホアキンは、「誠実さだよ」と答え、そんなホアキンに監督は「だったら君はもう少し誠実になった方がいいね」という言葉をかけたという。
しかし残念ながら、最終的にそのシーンは本編からはカットされてしまったそう。とはいえ、ホアキンにとってそのシーンは1番重要なシーンだと語る。
「でもそれは、映画の中で1番重要なシーンとなったんだ。なぜならその撮影は、僕が誠実さを見つけるのに役立ったから」
『ジョーカー』のアーサーは、正体不明の不気味な悪役ジョーカーではなく、現代社会の闇を鏡のように映し出す1人の人間。その演技のなかでは、誠実さも重要な要素の1つだったと考えるホアキンにとって、その演技にたどりついたシーンは忘れがたいものなよう。
反骨精神あふれる俳優として知られ、ゴールデン・グローブ賞の授賞スピーチでも放送禁止用語を連発したホアキン。しかしパームスプリングス国際映画祭では、「監督は僕が失敗することを良しとしてくれた」と語ったホアキンは、ゴールデン・グローブ賞の授賞スピーチでも、「僕は本当に手の焼ける奴なんだ。僕のような人間を我慢してくれたなんて信じられない」とフィリップス監督にふたたび感謝の気持ちを述べていた。
(フロントロウ編集部)