Photos: ゲッティイメージズ、ニュースコム
オーストラリアで広範囲を焼き尽くし、多くの命を奪っている森林火災。現場に足を運んだカメラマンたちは、逃げ遅れた動物たちの姿や、都市が煙に包まれる様子など、火災の猛威を写し撮った。(フロントロウ編集部)

※注意:この記事にはセンシティブな写真が含まれます。

10億以上の動物が犠牲になっている森林火災

 記録的な猛暑がつづいているオーストラリアで長期かつ深刻な森林火災が発生している。

画像: 森林が燃え、空が赤く染まる(イースト・ギップスランドにて2020年1月2日に撮影)

森林が燃え、空が赤く染まる(イースト・ギップスランドにて2020年1月2日に撮影)

 すでに韓国と同じ大きさに匹敵する1,030万ヘクタール以上が消失しており、消火にあたっていた消防士を含む27人が死亡。とくに犠牲になっているのは哺乳類、鳥類、爬虫類などの野生生物で、当初シドニー大学によって約5億匹と発表されていた被害は1月8日の時点で約10億匹にひきあげられた。

 被害を受けたエリアからはひどいやけどを負ったコアラやカンガルーといった動物が多く保護されているほか、焼け野原となった火災後の現場からは、逃げ遅れた動物の亡きがらが多く回収されている。

画像: レスキューされたコアラを抱く看護師の女性(アデレード・コアラ・レスキューにて2020年1月8日に撮影)

レスキューされたコアラを抱く看護師の女性(アデレード・コアラ・レスキューにて2020年1月8日に撮影)

画像: ポート・マッコリー・コアラ病院で保護されたやけどを負ったコアラ(コアラ病院にて2019年11月29日に撮影)

ポート・マッコリー・コアラ病院で保護されたやけどを負ったコアラ(コアラ病院にて2019年11月29日に撮影)

 火災が収束した一部の森林地帯へ赴き、現場でフェンスに絡まり焼死したカンガルーの亡き骸を見つけたカメラマンのブラッド・フリートは、米Peopleにこう語る。

「鳥の音も聞こえなければ、他の生命を見つけることも出来なかった。そして、動物たちが殺された匂いが感じられることもありました。その苦しみは瞬時に起きたように見えますが、あのカンガルーが炎の迫る谷からどれだけの距離を逃げたのかは分かりません。どれだけの間フェンスを乗り越えようとしていたのかはわかりません」

 また、火事の被害を受けていないエリアでも野生動物たちは命の危機と闘っている。オーストラリアでは12月に気温が50度に迫り、史上最暑日を記録。それが原因でオーストラリアは深刻な水不足水に悩まされており、水を求めてさまよう動物の姿が各地で目撃されている。

 今回の森林火災によって動物の生息地の広範囲が消失してしまったため、食料不足など、生き延びた動物たちの危機は長期的につづくこととなる。

画像: 食料となる草がなくなった焼け野原に立つカンガルー(ニューサウスウェールズで2019年11月11日に撮影)

食料となる草がなくなった焼け野原に立つカンガルー(ニューサウスウェールズで2019年11月11日に撮影)

画像: 動物たちに食料や住処を提供する森の回復が急がれるが、広範囲に及ぶ被害の復旧は長期化する見込み(ニューサウスウェールズで12月30日に撮影)

動物たちに食料や住処を提供する森の回復が急がれるが、広範囲に及ぶ被害の復旧は長期化する見込み(ニューサウスウェールズで12月30日に撮影)

火災の深刻化は何が原因?温暖化の影響

 現在が夏の南半球に位置するオーストリアでは、夏の森林火災は例年起こっている。問題なのは、火事の規模が近年大きくなっていること。その原因として、温暖化の影響があると考えられている。

画像: 山火事の影響でオーストラリア各地の空は煙で覆われ、有害性が心配されている(シドニーのオペラ座前にて2020年1月8日に撮影)

山火事の影響でオーストラリア各地の空は煙で覆われ、有害性が心配されている(シドニーのオペラ座前にて2020年1月8日に撮影)

画像: 山火事の煙がダウンタウンにも充満(キャンベラにて2020年1月5日撮影)

山火事の煙がダウンタウンにも充満(キャンベラにて2020年1月5日撮影)

 気候科学者であるピーター・グリック氏は、英Timeにこう語る。

「気候変動が、このような火災を引き起こしたのかどうかが疑問なのではありません。火災は自然が原因でも、人間が原因でも起こりますからね。私たちが着眼しているのは、オーストラリアの火災を前代未聞なほど悪くしている条件についてです。記録的な暑さ、未曾有の干ばつ、雨不足、これらはすべて燃料を乾燥させ、火災を悪化させています。火災はいずれにせよ起きていたかもしれません。しかしその深刻さや激しさは、気候変動がなかった場合より、比べものにならないほど悪くなっています」

 またオーストラリアでは、温暖化の影響は、陸だけでなく海にも出ている。海水温の上昇によって、オーストラリア北東部のグレート・バリア・リーフでは、誕生した海ガメの99%がメスとなったり、サンゴ礁の白化・死滅が起きたりしている。

 オーストラリア以外でも、温暖化の影響とみられる変化が続々と起きている。2018年夏の北欧スウェーデンでは通常の平均気温より15℃以上も高い32.5℃を記録。アメリカのカリフォルニア州では毎年発生している山火事の規模と期間が拡大しており、2019年は多くの人の生活に影響が出た。日本でもここ数年、勢力を増した台風が各地を襲っている。

画像: オーストラリアでも、気候変動に対して早急な対策を求めるデモはたびたび開催されている(シドニーにて2018年11月30日撮影)

オーストラリアでも、気候変動に対して早急な対策を求めるデモはたびたび開催されている(シドニーにて2018年11月30日撮影)

 世界各地で前例のない規模の異常気象や災害が報告されているなか、10億匹にのぼる野生動物が犠牲になっている今回のオーストラリアでの山火事は、人間の生活の影響がどれほど大きな犠牲を自然環境に与えているかを浮き彫りにさせた。

 いまだに勢いが衰えないオーストラリアの森林火災へ、日本から支援金を寄付する方法はこのページで日本語解説つきで説明している。

※注意:以下のアルバムにはセンシティブな写真が含まれます。

(フロントロウ編集部)

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