伝記映画『ジュディ 虹の彼方へ』
13歳のときに専属契約した映画業界大手MGMの肝いり女優として、1939年にミュージカル映画『オズの魔法使』の主人公ドロシー役で大ブレイクしたジュディ・ガーランド。
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美声を持つ天才パフォーマーとして伝説のごとく愛される大女優でありながら、体形維持のために10代の頃からMGMに処方されていた覚せい剤の副作用による神経症や精神不安に悩まされ、プライベートでは結婚と離婚を繰り返すなど、栄光の裏で波乱万丈な人生を生きて47歳という若さで亡くなった。
![画像2: 伝記映画『ジュディ 虹の彼方へ』](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783100/rc/2020/01/10/ac881550ddf2db80c4dd1be92afe46a80184a553_xlarge.jpg)
日本で3月6日に公開されたジュディの伝記映画『ジュディ 虹の彼方へ』では、そんなジュディの晩年を映画化。ゴールデン・グローブ賞ではレネーがドラマ部門の主演女優賞を受賞した。
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映画に登場するゲイカップルは実在したか?
『ジュディ 虹の彼方へ』は伝記映画のため、ジュディのほか、2番目の夫との子供であるライザ・ミネリ、下の子供2人の親権争いをしていた3番目の夫シドニー・ラフト、5番目の夫ミッキー・ディーンズ、ロンドン公演でジュディの世話係を務めたロザリン・ワイルダーなど、実在の人が次々と登場する。
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そんななか、メインキャラクターではないものの、強い印象を残した2人のキャラクターがいた。それが、ジュディの大ファンであるゲイカップルのダンとスタン。
劇中ではジュディが、出待ちをしていた2人と意気投合し、2人のアパートへ行く。そしてそこでスタンが、男性間の恋愛そのものが違法で刑務所に送られる人もいたイギリスで、同性愛者として暮らすことの苦労と、ジュディの歌声に救われたことを涙ながらに話し、ジュディと心を通わせる。
We are delighted that JUDY has received an Outstanding Film – Wide Release nomination from the @GLAAD Media Awards!#GLAAD #JudyTheFilm #JudyGarland #RenéeZellweger #RupertGoold pic.twitter.com/2DryJOhTJC
— Judy (@JudyGarlandFilm) January 9, 2020
※ Λ 同性愛者であるという理由で恋人であるダンが刑務所に入れられていた過去を明かすスタンをジュディが慰める映画のワンシーン。
では、この2人は実在したカップルで、これは実際に起きたことなのだろうか?
答えは、ノー。ダンとスタンの構想は、観客から見たジュディの姿をどう映画に入れようかと相談していたときに脚本家のトム・エッジが思いついたそうで、監督のルパート・グールドは「素晴らしいアイディア」と、米The Wrapでその考えを絶賛した。
また、プロデューサーのデヴィッド・リヴィングストーンは、「スタンとダンはユーモアと愛と魔法をもたらした映画のハイライトと言えます。ジュディのアイコンとしての役割を理解させてくれるとともに、ファンのジュディ愛の大きさを知ることができますから」と、この2人のキャラクターの重要性を認めた。
ジュディ・ガーランドとLGBTQコミュニティ
LGBTQ+コミュニティに触れずに、ジュディ・ガーランドのキャリアは語れない。
![画像1: ジュディ・ガーランドとLGBTQコミュニティ](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783100/rc/2020/01/10/bb593b155549575a768f518096f0f41333cbf5d3_xlarge.jpg)
ジュディは究極のゲイアイコンとして、『オズの魔法使』で演じたドロシー役と共に長年愛されており、同性愛が違法だった時代には、「Are you a friend of Dorothy(君はドロシーの友達なの)?」は「君は同性愛者なの?」の隠語として使われた。
![画像2: ジュディ・ガーランドとLGBTQコミュニティ](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783100/rc/2020/01/10/03155c8a904d1c0231278b7cff8622c63241b496_xlarge.jpg)
LGBTQ+コミュニティの象徴として知られる虹色のレインボーフラッグの起源は諸説あるけれど、そのうちの一つには、ジュディの代表曲である『オズの魔法使』の劇中歌「虹の彼方に」がインスピレーションを与えたとするものがある。
![画像3: ジュディ・ガーランドとLGBTQコミュニティ](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783100/rc/2020/01/10/cf23a70de597903450cfc40227d3e12379f631b4_xlarge.jpg)
また、LGBTQ+コミュニティの権利拡大運動が激化するきっかけとなった歴史的事件ストーンウォールの反乱は、ジュディが睡眠薬の過剰摂取で亡くなった直後の1969年6月28日にはじまった。
ジュディはなぜ究極のゲイアイコンなのか?
人々を感動させる天才的なパフォーマーだったこと以外に、LGBTQ+コミュニティの心を揺らしたジュディの魅力とは何なのだろうか? これに関して、ジュディを演じるレネーがLGBTQ雑誌である米Outで触れて、いくつかの理由を挙げた。
![画像: 『ジュディ 虹の彼方へ』では「ジュディ・ガーランド(左)が憑依したかのよう」と称賛されたレネー・ゼルウィガー(右)の演技。本作でアカデミー賞主演女優賞を獲得した。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783100/rc/2020/01/10/25d7b7c57ebe387bf5f4622dcbbefc5df17da8f6_xlarge.jpg)
『ジュディ 虹の彼方へ』では「ジュディ・ガーランド(左)が憑依したかのよう」と称賛されたレネー・ゼルウィガー(右)の演技。本作でアカデミー賞主演女優賞を獲得した。
理由1 『オズの魔法使』のメッセージがLGBTQ+が抱える気持ちとリンクするから
「誤解されている、居場所がない、自分は十分じゃないと感じている子供たちは、『オズの魔法使』を見て、誤解されていて不完全だと感じているドロシーと彼女のはみ出し者の友達が自分は自分で十分なんだと気づく旅を共に歩むんだと思う。子供の想像力にとって、それってとてもパワフルなことだと思うの。とくに追放されていると感じる子供にとっては、ものすごいことでしょう」
理由2 ジュディの人生とリンクするから
「彼女の人生と重なる部分もあると思う。だって彼女自身が、誤解されていると感じ、サバイバーであり、どんなチャレンジがあっても乗り越える人だったから。何があっても希望を持つことをやめなかった。世界は自分の味方じゃないと感じる人にとって、それってすごくインスパイアされることだと思う」
理由3 ジュディの曲に励まされたから
「彼女は、個人的な葛藤から、家を持つ夢、愛、自分だけの何かを持つこと、存在を認めてもらうことなどを歌った。彼女が歌うと、観客は自分を理解してもらえたと思うの。自分の存在を認めてもらえたと」
理由4 ジュディがLGBTQ+を愛したから
「彼女はあの当時には珍しく、(LGBTQ)コミュニティを認めた。感謝と愛を持ってね。当時(のLGBTQにとって)それがどのくらいの価値があることだったかは、計り知れないわよね」
愛し支え合った、ジュディとLGBTQ+コミュニティ。伝記映画である『ジュディ 虹の彼方へ』に登場したダンとスタンというフィクションのキャラクターは、ジュディ・ガーランドという偉大なアイコンの真実を的確に示すために不可欠な演出だった。
映画『ジュディ 虹の彼方へ』は、日本では3月6日に全国ロードショー。
(フロントロウ編集部)