ストリッパーの描き方にこだわり
ストリップクラブで出会って意気投合したストリッパーたちが、裕福なクライアントから金を騙し取る計画を企てるという実話を描いた、映画『ハスラーズ』(※PG-12指定)のローリーン・スカファリア監督にフロントロウが特別にインタビュー。物語の中心であるストリッパーを描くにあたって、「最も気をつけたこと」について質問をした。
「ストリッパーを描くうえで、下品なイメージにならないようにとても気をつけました。じつは、社会的に彼女たちはストリッパーであることで、差別を受けたりしています。ですが、私の高校時代の友人には学生ローンを払うためにストリッパーをやっていた子もいます。彼女たちには様々な事情があるんです。そういう意味では、社会から誤解されている人たちも多い。ですから、実際のストリッパーたちと会い、より現実に近いストリッパーの世界を描きたいと思ったんです。ストリッパーの世界は女性がコントロールしている世界なので、カメラの動かし方など撮影の仕方も意識して行いました。ラモーナのエントランスのシーンもそれを意識していて、彼女は観客も含めて全ての人の視点をコントロールしているんです」
性労働者(セックスワーカー)的なイメージが強いストリッパーを、単に性を売りにする女性ではなく、ストリッパーという職業にプライドを持って働く女性として描くことを意識したというスカファリア監督。本作では、“エロ”や“セクシーさ”よりも、ストリッパーとして生きることを選んだ女性たちがどういった事情でストリッパーとして働き、どのようなバックグラウンドを持つのかという点にスポットライトを当て、同じ女性ならではの視点で主人公たちの人物像がより丁寧に描かれている。
さらに、「シスターフッド(女性同士の連帯)」が本作のひとつのテーマになっていることから、見た人にどのようなことを感じ取って欲しいか尋ねると、こんな答えが返ってきた。
「(コンスタンス・ウーが演じる主人公の)デスティニーは貧しい環境で孤独に生きていました。でも、ストリップクラブという世界で仕事をすることによって女性の仲間、自分を守ってくれる人たちを見つけました。女性同士の友情というのは、ある種、男性パートナーや親と子の関係よりも強い絆であると私は思っています。でもそれはある意味脆くもあります。そして、永遠に続くものでもありません。そういう意味ではこの映画は、(ジェニファー・ロペスが演じる)ラモーナとデスティニーという二人の女性のラブストーリーでもあるのです。デスティニーはラモーナとの関係から愛を得て、母と娘のような関係性でもあります。お互いに分かち合うものがあるという、女性ならではの経験も表したかったんです」
これまでのステレオタイプを覆すリアルなストリッパーの姿に加え、スカファリア監督が言っていたデスティニーとラモーナを中心とした女性同士の友情や絆といった心温まるシーンも満載の本作は、ガールズパワー映画として多くの女性から高い支持を得ている。
映画『ハスラーズ』あらすじ
幼少の頃母に捨てられ、祖母に育てられたデスティニー(コンスタンス・ウー)は祖母の介護のため、ストリップクラブで働き始める。そこで、数多くいるストリッパーたちのなかでひときわ輝くラモーナ(ジェニファー・ロペス)と運命の出会いを果たす。ラモーナや同じクラブのベテラン、ダイヤモンド(カーディ・B)からストリッパーとしての稼ぎ方を学び、安定した生活を得ることができるようになるが、2008年に起きたリーマン・ショックの影響で世界経済は冷え込み、ストリップクラブで働く彼女たちにも不況の波が押し寄せることに…。
「真面目に働いても生活が苦しいのに、経済危機を引き起こした張本人であるウォール街の金融マンたちは、なぜ相変わらず豊かな暮らしをしているのか」と不満を募らせたラモーナは、デスティニーやクラブの仲間たちと、世界最高峰の金融地区ウォール街の裕福なクライアントたちから大金を騙し取る計画を企てる。
(フロントロウ編集部)