ジェームズ・ボンドお気に入りのカクテル
大人気スパイアクション映画『007』シリーズは、1962年に第1作目の映画『007 ドクター・ノオ』が公開されてから、2020年11月20日に公開される最新作『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』まで、25作品にわたって続いてきた長寿シリーズ。
『007』(ダブルオー・セブン)の名で親しまれている本作は、イギリスの諜報機関MI6のエージェントである主人公のジェームズ・ボンドを演じる俳優を入れ替えながら代々続き、現在はダニエル・クレイグが6代目のボンドを演じている。ダニエルがボンドとして登場したのは2006年公開の映画『007 カジノ・ロワイヤル』から。
大人な雰囲気が溢れ出すボンドは、ウォッカ・マティーニというカクテルを注文するのがお気に入りで、「ウォッカ・マティーニを。ステアせずシェイクして」という名ゼリフがある。
この「ウォッカ・マティーニ」とは一体どんなカクテルで、「シェイクではなくステアで」とはどういう飲み方で、なぜその飲み方をするのか知っている?
ボンドお気に入りのウォッカ・マティーニとは
マティーニは、カクテルの中でも格式が高く、「カクテルの王様」と呼ばれることもある。映画『007』シリーズのジェームス・ボンドや映画『7年目の浮気』のマリリン・モンローなど、数々のスターが映画でこのカクテルを飲んでいたことから世界中で広まり人気となった。
1910年代にニューヨークで生まれたマティーニは、元々はジンに「スイートベルモット」と呼ばれるハーブやスパイスの風味がつけられたワインを加えた甘口のカクテルだった。しかし時を経て、現在はジンに「ドライベルモット」と呼ばれる、辛口(ドライ)のワインを加えた辛口のカクテルに変化した、歴史のあるカクテル。
銀幕のスターに憧れてバーで注文する人も多いけれど、非常にアルコール度数が高く、刺激的で複雑な味わいのため残してしまう人も多いという、なかなかチャレンジ度が高いお酒であることも知られている。
マティーニを作る時にはまず、ベースと呼ばれるアルコール度数の高い蒸留酒を用意する。マティーニのベースは一般的には「ジン」と呼ばれる蒸留酒だけれど、ボンドが好きなのは、ジンを「ウォッカ」に置き換えたもの。
「ステアではなく、シェイクして」とは?
まず、シェイクとはよく映画やドラマでバーテンダーが銀色の容器を上下にシャカシャカと振ってお酒を作ること。シェーカーと呼ばれるあの銀の容器に氷と材料を加えて振ることで、冷たくまろやかな味わいのカクテルに出来上がる。
対するステアとは、ミキシンググラスと呼ばれる容器に材料を入れマドラーで材料を混ぜ合わせること。実はマティーニはステアするのが本来の作り方。急激には冷やせないけれど、ベースの味やアルコール度数を保ったままカクテルを楽しむことができる。
そのため一部では、マティーニをステアではなくシェイクにすることは型破りで、アルコール度数も少し薄まるため、「邪道」と捉えている人もいるけれど、ボンドはシャカシャカ振ってキンキンに冷やしたウォッカ・マティーニが好き。
ボンドがシェイクしたマティーニを好きな理由
そもそもこの、ステアではなくシェイクしたウォッカ・マティーニをボンドが飲むというシーンが初めて登場したのは、『007』シリーズの原作小説を手掛けたイアン・フレミングが1953年に書いた小説『カジノ・ロワイヤル』から。
ファンの間では、ボンドがマティーニをステアではなくシェイクで頼む理由を「わざとアルコール度数が弱い飲み物にして、感覚を鋭く保つため」という人もいるけれど、映画の中のボンドはアルコール度数などまるで無視の大酒飲み。
また、他のファンは「ボンドは冷たい飲み物が好きなんだ」や「質の悪いウォッカを薄めるためだ」など様々予想している。
けれども、そんなファンの熱心な推測に反し、ボンドがウォッカ・マティーニを好きな理由は単純明快。それは、著者であるイアンが熱心なカクテルの愛好家であり、あるときその飲み方を勧められ試してみたら、気に入ってしまったからだと、米Alcohol Professorはしている。
さらにボンドは小説の中ではいつもシェイクしているわけではなく、普通の飲み方もするし、シャンパンやウイスキーも好き。ダンディーな大人の男に見せかけて、無類の酒好きの可能性も示唆されている。
もし機会があれば、ボンドのようにウォッカ・マティーニをキンキンに冷やして飲んでみては。『007』シリーズの最新作、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』では、お決まりのセリフは飛び出すのだろうか。(フロントロウ編集部)