アンジェリーナ・ジョリーが、新型コロナウイルスの影響で実施されている外出自粛によって、家庭内暴力(DV)の被害が増えていることを危惧。その被害者は、女性だけでなく子どもたちも。(フロントロウ編集部)

在宅のストレスはDVに繋がる

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、イギリスやアメリカの主要都市で外出禁止令が出され、日本でも外出自粛が呼びかけられている。世界的流行となったウイルス対策として不可欠の外出禁止だけれど、ずっと家にいなくてはならない状況は、別の問題を深刻化させている。それは、パートナーや子どもに対する家庭内暴力(DV)。

 俳優のアンジェリーナ・ジョリーは、外出禁止によって仕事を失うストレス、そしてそれが原因で引き起こされるDVを案じていると、米Timeへの寄稿で語る。アンジェリーナは国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の特使を務め、これまでに何度も中東の難民キャンプを訪れているため、住環境のストレスがDVの発生率を高めることを目にしてきた。

画像: 2014年にレバノンを訪れたアンジェリーナ・ジョリー。

2014年にレバノンを訪れたアンジェリーナ・ジョリー。

 また、閉鎖された空間では、パートナー間で暴力が発生した時に子供がそれを目撃してしまい精神的なダメージを受けることも。アンジェリーナによると、アメリカ国内で親しい人物による暴力に何らかのカタチで触れたことのある子どもの割合は15人の1人。その子どもたちのうち90%は、暴力を目撃するというカタチだった。

“隔離”はDV加害者にとって“燃料”

 また、隔離生活は意図せずDVの加害者の味方をしていると、アンジェリーナはこう分析する。

「家族や友人から被害者を引き離すことは、加害者が被害者をコントロールするために行なう良く知られた策略です。つまり、新型コロナウイルスを止めるために不可欠な隔離は、うかつにも、傷つきやすい子どもたちを苦しませ、トラウマをより多く生み出す燃料となってしまうのです」

画像: 2011年にチュニジアを訪れたアンジェリーナ・ジョリー。

2011年にチュニジアを訪れたアンジェリーナ・ジョリー。

 自宅隔離生活や在宅勤務によって、世界的にDVの被害件数は増加しており、WHO(世界保健機関)も各国に対策を求めている。しかし加害者がずっと自宅にいるため、助けを求められない被害者もかなり増加していると見られており、被害者シェルターの増設などのほかに、通報システム自体の改善も求められている。

 カナダは家庭内暴力の被害者支援のために約30億円の予算をあてることを決定。アメリカは州ごとにも取り組みが見られ、イリノイ州では、約1億3,000万円の予算が捻出された。

1人1人がサポートしあうことが必要

画像: 2005年にパキスタンを訪れたアンジェリーナ・ジョリー。

2005年にパキスタンを訪れたアンジェリーナ・ジョリー。

「ロックダウンとなり、私たちが身体的には離れているとはいえ、家族や友人に連絡することはできます。とくに、誰か攻撃されやすいかもしれないと心配になる人がいるのであれば。ストレスや家庭内暴力を受けていると思われるサイン、なにを見張るべきか、そしてどう真剣に向き合うかを自分で学びましょう。地域にある家庭内暴力の被害者シェルターを支援することもできるでしょう」

 そう語り、1人1人が友人や地域の人々に気を配るよう呼びかけたアンジェリーナは、専門機関や団体が公開している被害者をサポートするための方法やガイドラインをチェックし、必要であれば連絡するよう指示した。

 6人の子どもを育てるアンジェリーナは、DVが、被害者だけでなく子どもにも深刻な影響を与えることを危惧しており、「子ども1人育てるには、1つの村が必要だと言います。子どもたちを守り育てるには、1つの国として努力が必要となるのです」と語る。

画像: 2015年にミャンマーを訪れたアンジェリーナ・ジョリー。

2015年にミャンマーを訪れたアンジェリーナ・ジョリー。

 アンジェリーナは今回のパンデミックをうけて、給食に頼っている子供たちのために食料を配給する活動を行なう団体No Kid Hungry(ノー・キッド・ハングリー)に、約1億1,000万円を寄付。アフガニスタン、カンボジア、ケニア、そしてナミビアの学校にも支援を送っているほか、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)とともに、世界中の子供たちが、休校中も遠距離から教育を受けられるよう支援する団体の設立に携わっている。(フロントロウ編集部)

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