歴史に残る重要な書物を取り揃えるアメリカ議会図書館
アメリカ議会図書館は、1800年に設立され、現在も米ワシントンD.C.にある図書館。館内に保存されている物品は1億47,00万アイテムにのぼり、世界最大規模となっている。ちなみに、日本の国立図書館である国会図書館のアイテム数は4,342万6450点。

アメリカ議会図書館の所蔵品は、書籍に限らず原稿類、地図、新聞、楽譜、マイクロフィルム、映画、写真、レコード、版画、絵画など様々な資料が含まれている。最新のテクノロジーを解説したものから非常に古い書物もあり、日本でも有名な伊能忠敬が制作した地図、『大日本沿海輿地全図』なども大切に保管されている。

1950年代のアメリカ議会図書館
そんな「後世に語り継がれるべき」資料の中には、なんと26作品のホラー映画が貯蔵されている。その作品を解説つきでご紹介。
アメリカ議会図書館に所蔵されている、26本のホラー映画
『オペラ座の怪人』(1925)

©︎Ewing Galloway/Newscom
まだ映画に音声がついていない時代に制作されたサイレント映画。現代は「特殊メイク」の技術が発展しているけれど、当時はメイクで再現した怪人の顔を見て叫び声をあげたり気絶したりする観客もいたそう。
『魔人ドラキュラ』(1931)

©︎United Archives/IFTN/Newscom
映画に音声がついた「トーキー」と呼ばる作品が始め急速に普及し始めた頃の作品。本作は、1922年に公開された『吸血鬼ノスフェラトゥ』を研究して作られた。
『フランケンシュタイン』(1931)

©︎NIVERSAL PICTURES / Album/Newscom
額が張り出した典型的なモンスターを世界に印象づけた本作。フランケンシュタイン役のボリス・カーロフはこの後2作品にわたってフランケンシュタインを演じた。
『フリークス』(1932)

©︎METRO GOLDWYN MAYER / Album/Newscom
本作に登場するのは、当時本物の見世物小屋で働いていた身体障害者の人々。あまりにも残虐な内容だったため、90分の内容は64分にカットされた。90分バージョンは残っていない。
『透明人間』(1933)

©︎World History Archive/Newscom
本作は非常に巧みな特殊効果により透明人間の姿が表現されていることで有名。物語の最後で透明人間の透明効果がなくなるが、浮かび上がったその顔が彫刻のように美しい。
『キング・コング』(1933)

©︎RKO / Album/Newscom
1930年代に発生した世界大恐慌が猛威を振るう時代に公開された本作は、世相を反映する様々な隠喩があるとして歴史的に評価されている。
『フランケンシュタインの花嫁』(1935)

©︎UNIVERSAL PICTURES / Album/Newscom
1931年の映画『フランケンシュタイン』の続編。アメリカ議会図書館は「文化的、歴史的、審美的に重要」として保管している。
『キャット・ピープル』(1942)

©︎RKO / Album/Newscom
自分が猫人間の末裔であり、キスをするだけで豹に変身し男性を殺すと信じたヒロインの話で、サイコスリラーの古典。
『凸凹フランケンシュタインの巻』(1948)

©︎UNIVERSAL INTERNATIONAL / Album/Newscom
1931年の『フランケンシュタイン』の続編。当時、バッド・アボットとルウ・コステロの二人組からなるお笑いコンビが大人気で、凸凹コンビと呼ばれていた。本作はそんな2人が登場。
『遊星よりの物体X』(1951)

©︎RKO / Album/Newscom
ジョン・W・キャンベルによる1938年のSF小説『影が行く』の映画化。本作は、1982年に『遊星からの物体X』というタイトルでリメイクされた。
『肉の蝋人形』(1953)

©︎WARNER BROTHERS / Album/Newscom
偏光フィルターのメガネをかけて見る3Dカラー映画として公開された。1952年〜1953年の間にこの手法の映画が大流行。
『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』(1956)

©︎ALLIED ARTISTS / Album/Newscom
ジャック・フィニイのSF小説『盗まれた街』をドン・シーゲル監督が映画化。本作は現在に至るまで4回のリメイクが行なわれている。
『アッシャー家の惨劇』(1960)

©︎Glasshouse Images Glasshouse Images/Newscom
エドガー・アラン・ポーの小説『アッシャー家の崩壊』をロジャー・コーマン監督が映画化。ロジャー監督は「B級映画の帝王」と呼ばれ、今でも愛好家が多い。
『サイコ』(1960)
アルフレッド・ヒッチコック監督によるサイコ・スリラー。誰しも聞いたことのある戦慄の効果音の元ネタになっている作品。
『鳥』(1963)

©︎Alfred J. Hitchcock Productions / Album/Newscom
こちらもアルフレッド・ヒッチコック監督によるホラー作品。大量の鳥に襲われる恐怖を描いた本作は、本物のカモメと人形のカモメが混在しており違和感があるというのにもかかわらず、人を納得させる力のある名作。
『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968)

©︎MARKET SQUARE PRODUCTIONS / Album/Newscom
ゾンビものの金字塔。ニューヨーク近代美術館にも所蔵されるカルト・クラシックな本作は、ジョージ・A・ロメロ監督によるホラー作品。
『ローズマリーの赤ちゃん』(1968)

©︎PARAMOUNT PICTURES / Album/Newscom
ロマン・ポランスキー監督による衝撃作。ローズマリーを演じたミア・ファローの病んだようなアイメイクが怖すぎると話題に。
『エクソシスト』(1973)

©︎Warner Bros./Hoya Productions / Album/Newscom
悪魔と神父の凄まじい戦いを描いた代表作。第46回アカデミー賞の脚色賞と音響賞を受賞し、興行的にも成功。悪魔が乗り移った少女の演出は、色あせない怖さがある。
『ヤング・フランケンシュタイン』(1974)

©︎20TH CENTURY FOX / Album/Newscom
メル・ブルックス監督のホラー・コメディ映画。これまでに何度も制作された『フランケンシュタイン』映画のパロディとなっている。
『ジョーズ』(1975)

©︎UNIVERSAL PICTURES / Album/Newscom
スティーヴン・スピルバーグ監督による元祖サメ映画。パニック、ホラーなどに分類され、サメ映画フリークで『シャークネード』のプロデューサー、ポール・ベールスも自身のツイッターで「いい映画」と評価している。
『ロッキー・ホラー・ショー』(1976)

©︎20TH CENTURY FOX / Album/Newscom
ホラー・ミュージカルの『ロッキー・ホラー・ショー』を映画化した作品。カルト的人気を誇っており、2005年にアメリカ国立フィルム登録簿に永久保存登録された。
『イレイザーヘッド』(1977)

©︎AFI/LIBRA / Album/Newscom
「カルト映画の帝王」デヴィッド・リンチによる長編映画デビュー作で、1人で製作・脚本・監督・美術・編集などを務めたという作品。作中に登場する異形の赤ん坊は、ぬめり気やウネウネ感が異様にリアル。
『ハロウィン』(1978)

©︎United Archives/Impress/United Archives/Newscom
ジョン・カーペンター監督、作曲のホラー作品。本作で殺人鬼として登場したブギーマンは、現在でも人気のキャラクター。冒頭の素晴らしい長回しシーンは一見の価値アリ。
『エイリアン』(1979)

©︎20TH CENTURY FOX / Album/Newscom
リドリー・スコット監督によるSFホラー映画。2017年までにスピンオフを含めて8作品が制作されている。本作は、「強い男につき従う弱い女性」という、女性につきまとうステレオタイプを排しているとして有名。
『シャイニング』(1980)

©︎WARNER BROTHERS / Album/Newscom
スタンリー・キューブリック監督、ジャック・ニコルソン主演で制作された傑作サイコホラー。2019年に続編『ドクター・スリープ』が公開されて話題になった。
『羊たちの沈黙』(1991)

©︎ORION PICTURES / Album/Newscom
ホラー映画にその名を刻んだ「レクター博士」を生み出した本作。ジョナサン・デミ監督は、ベルリン国際映画祭監督賞とアカデミー監督賞をダブル受賞。アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞、主演女優賞の5部門を制覇した。
多種多様なホラーの名作が取り揃えられているアメリカ議会図書館。今後新たな作品として加わるのは一体どの作品になるのだろうか。(フロントロウ編集部)