新型コロナを予言したような映画『コンテイジョン』
2011年に公開された映画『コンディション』は、映画『オーシャンズ11』や『マジック・マイク』の監督、スティーブン・ソダーバーグによるスリラー映画。
本作は、香港への出張から戻ってきたアメリカ人女性が体調不良を訴えたのちに死亡し、同様の事例が世界各地で相次ぐなか、パニックに陥る人々や、ワクチン開発に取り組む医療関係者、デマを広めるジャーナリストなど、パンデミックの恐怖をドキュメンタリータッチで描いたフィクション作品。
このストーリーが、新型コロナウイルスの蔓延によって引き起こされている状況とそっくりだと話題を呼び、2020年に再注目されている。「人は通常1日に2000~3000回、自分の顔を触る」というセリフや、感染防止による学校閉鎖で問題となる子供たちの処遇、調査員の感染、買い占め、「ウイルスに効く」といったデマ、ロックダウン…。物語に登場する様々な状況が、新型コロナウイルスが流行する現在とリンクすることばかり。世界中で、「映画そのままだ」と驚きの声が止まらない。
ジュード・ロウ、マット・デイモン、グウィネス・パルトロウ、ブライアン・クランストン、マリオン・コティヤール、ケイト・ウィンスレットなど、多くの有名キャストが出演していることでも知られる『コンテイジョン』は、現実とどう似ているのかご紹介。
感染源が同じ
現在世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスは、コウモリが持つコロナウイルスが野生動物を介して人間に感染するようになったという説がある。
実は映画『コンテイジョン』の感染源もコウモリから。映画の中で「MEV-1」と名づけられたウイルスは、コウモリと豚が持つウイルスの掛け合わせだった。これが、まるで今の状況をピタリと言い当てたようだと言われている。
症状がそっくり
『コンテイジョン』で猛威を振るったウイルスの「MEV-1」と、新型コロナウイルス「COVID-19」が引き起こす症状は極めて似ている。
発熱、咳、謎の発作、頭痛、そしてひどい場合には死も…。また、映画では発作や口元から泡を吹くという症状もあったけれど、新型コロナウイルスではそのような症状は確認されていない。
ちなみに映画の中では、やっとのことでワクチンが作られたものの、抽選方式となった。
感染方法が一緒
新型コロナウイルスが人と人との接触によって引き起こされているように、映画『コンテイジョン』の中での感染ルートも接触によるものだった。
映画のタイトルになっている『コンテイジョン(contagion)』は日本語に訳すと「接触感染」という意味。映画の中には、「クラスター」や「ソーシャル・ディスタンス」という言葉も出てきて、まさに同様の感染方法で広まっていく様子が描かれている。
キーパーソンも感染
現在、最前線で新型コロナウイルスと闘う医療従事者の感染が心配されているが、『コンテイジョン』でも、感染症や医療の専門家であっても被害を受けないわけではないことが描かれている。
『コンテイジョン』の監修を担当した感染症の専門家、W.イアン・リプキン医師は、2020年3月24日に米Fox Businessに、新型コロナウイルスに感染したことを、自宅からのライブ映像で報告。
現在68歳のイアン氏は「皮肉なこと」と言いながら自分が感染してしまったことを告げ、「ひどい頭痛や咳が続いている」と言いながら、苦しそうに咳をする様子も見せ、「私たちが当たり前にしていたことは、もはやしなくなるでしょう」「私たちが行なってきた文化的なこと、握手やキスなどのいくつかは変わるかもしれませんが、必ずしも悪いことだとは思いません。これにより、将来のパンデミック、将来の大発生を防ぐことができるとも言えます」と語った。
『コンテイジョン』が新型コロナウイルスの状況とリンクする点が多いのは、映画が、“ウイルスのパンデミック”を深く理解したうえで作られているから。本作の再ヒットを受け、スティーブン監督は、アメリカの映画監督や演出家が所属する米監督協会の命により「ハリウッドのコロナウイルス対策委員会」の指揮をすることが2020年4月17日に発表された。『コンテイジョン』でつながった専門家の意見を取り入れつつ、今後の方針を決めていくとされている。(フロントロウ編集部)