人気衰えぬ“お仕事ムービー”『プラダを着た悪魔』
『プラダを着た悪魔』は、2006年にアン・ハサウェイとメリル・ストリープのW主演で公開された映画。ファッション雑誌の鬼編集長ミランダのもとに新人アシスタントとして雇われた主人公アンディが、ファッション業界で奮闘しながら成長していく過程を描いた同名小説を映画化したもの。
約41億円の予算で制作された本作は、約326億円もの興行収入を記録する大ヒットに。ファッションだけでなく、仕事や恋愛、人生についてまで考えさせられるストーリーは多くの人々の共感を得て、今もなお愛され続けている。
そんな『プラダを着た悪魔』でメリルが演じたミランダのトレードマークは、豊かな白髪。うねるようにセットされたその白くて短い髪の毛は、厳しくも気品のある女性像を演出している。けれどもこの白髪は当初、配給会社から「映画を台無しにする」と考えられていたそう。
メリル発案の美しい白髪への反発
メリルの役柄のモデルとなっているのは、1988年からアメリカ版『Vogue』で編集長を務めたアナ・ウィンターだと言われている。アナは若い頃から変わらずパッツン前髪のボブヘアーを維持しており、70歳を迎える現在でもそれは変わらない。
それにもかかわらずメリルは、イギリスの俳優ヘレン・ミレンにインスピレーションを受けた短い白髪を提案。そのアイデアを知った配給会社の20世紀フォックスは、メリルのキャラクターを白髪にすることは「悲惨」だと考えていたことを、監督のデヴィッド・フランケルが米DGAで明かしている。
デヴィッドは『プラダを着た悪魔』を制作していたフォックス2000ピクチャーズ社長のエリザベス・ガブラーに「メリルが白いカツラをかぶることになれば、映画は台無しになる」と言われ、そのことをメリル自身に伝えるよう命じられたという。
しかしデヴィッドはそれに対し、「あなたが伝えてください」と答えたそう。社長とは言え、大女優であるメリルに面と向かって反対意見を口にするのは気まずかったようで、その後誰1人としてメリルに「白髪はダメだ」と伝えることはないまま撮影が終了し、メリルの提案はミランダのトレードマークとして定着することになった。
つまりメリルが演じたミランダのトレードマークである白髪は、配給会社がビビってメリルにNOと言えなかったから誕生していた。
結果的に、メリルの計画は大成功。映画に大きな利益をもたらした一因となった。(フロントロウ編集部)