時代を代表するスターとなったビリー・アイリッシュ
2019年にリリースしたデビュー・アルバム『ホエン・ウィ・オール・フォール・アスリープ、ホエア・ドゥ・ウィ・ゴー?』が大ヒットし、今年の第62回グラミー賞授賞式では、史上最年少、女性として初めて最優秀レコード賞、最優秀アルバム賞、最優秀新人賞、最優秀楽曲賞の主要4部門の全てを受賞し、最優秀ポップ・ヴォーカル・アルバム賞を加えた計5部門を受賞したシンガーのビリー・アイリッシュ。
一躍時代を代表するポップスターとなったビリーだけれど、次に彼女のような存在になるアーティストの予想をすでに始めている人たちもいるようで、先日、英Guardianには「次のビリー・アイリッシュを見つけるための競争(the race to find the next Billie Eilish)」と題された特集記事が掲載された。
実際、ビリーの兄で彼女の楽曲制作も手掛けているシンガー・ソングライターのフィニアスもインタビューで同様の質問をよくされているようで、Apple Musicとのインタビューで英Guardianに掲載された特集記事について話を振られると、「次のビリー・アイリッシュは誰か?」という質問は「とても頭にくる」とした上で次のように答えた。
「僕が支持できるあの質問の唯一のバージョンは、『好きなことをやっている人で、次にそれがポップミュージックだと見なされそうな人はだれか?』という質問だよ」とフィニアスは語り、ビリーはあくまでも、“好きでやっていることがポップミュージックだと見なされたに過ぎない”と説明した。
フィニアスが「次のビリー」という言い方を嫌う理由
フィニアスは続けて、「次のビリー・アイリッシュは誰か?」という質問について、「2つのことに危害がおよぶと思う。次のビリーになれるというのは、ビリーにすごく迷惑だと思う。それから、ビリーが次のバージョンだと言われた人にとっても大きな迷惑だよ」と、その人のオリジナリティが尊重されないような質問の仕方に苦言を呈した。
ビリーが比較されることの多いシンガー・ソングライターのラナ・デル・レイや、ビリーと同じく若くして大成したロードの名前を出しながら、フィニアスは「ロードにとっても迷惑だし、ラナにとっても迷惑だ。循環するものではないんだよ。ビリーは最優秀アルバム賞にノミネートされたけど、同じ年にラナもノミネートされたからね。誰かにトーチを渡して、引退するようなものではないんだ」として、アーティストというのは“誰かが誰かを受け継いでいくものではない”と語った。
「僕たちの芸術に対して全体的に好意的な反応をしてもらえたのは、真実味があって、ユニークなものとして感じてもらえたからだと思う。そもそも僕らが目指していたのはそういうところで、こうすべきだとかいう、いかなる先入観にも応じないことだった」とフィニアス。
「ロードも同じことをしたと思うし、ラナだってそう。僕らは間違いなく彼女たちから影響を受けているよ」と、フィニアスはロードやラナから影響を受けたことを認めつつも、あくまでも影響を受けたのは彼女たちのオリジナリティだと説明し、「それに、『誰かの次と言われる人がいるとしたら、その人自身がそうなんじゃないか?』とも思っていた」とした上で次のように続けた。
「誰かが『次のティモシー・シャラメは誰だと思う?』と言っているのを想像してみてよ。ティモシーこそが“今のティモシー・シャラメ”なのにさ」と、フィニアスは俳優として人気が急上昇しているティモシー・シャラメを引き合いに出しながら語り、「次のビリー・アイリッシュは誰か?」という質問を好ましく思わない理由について、一人一人がオリジナルの存在であり、“誰かの次”ではないからだと説得力をもって訴えた。(フロントロウ編集部)