黒人女性が手がけるコスメブランド
米WWDによると、黒人女性は、美容製品に年間でおよそ75億ドル(約8,167億円)も費やしているとされており、平均して一般女性の市場よりも化粧品に80%多く、スキンケアには2倍近い金額を使っている試算となる。
しかし、美容業界には、長年多様性を認めてこなかった背景がある。数十年前までは、当たり前のようにドラッグストアやデパートのコスメコーナーは「明るいトーン」のファンデーションで埋め尽くされ、有色人種のためのファンデーションは圧倒的に限られていた。
全くないワケではないけれど、せいぜい1つか2つの「暗め」のトーンがあるだけで、当然ながら肌の色に合わないものも多く、悲しい思いをしてきた人も少なくない。
これらは、何年にもわたって黒人女性たちが経験してきた出来事のほんの一部でしかない。美における“多様性の問題”は多岐にわたっており、他の分野にも大きな影響を及ぼしている。実際に業界に根強く残るキャンペーンのイメージ、トークニズム(形だけの黒人差別撤廃)からも、その片鱗を垣間見ることができる。
しかし、世界中には過去に不平や不満を言うのではなく、美への憧れを前向きに捉え、力強く進歩し続けている女性たちも数多くいる。今回は、美容業界において“日陰”の存在となっていた有色人種のために立ち上がったコスメブランドを5つご紹介。
カラーレイン・コスメティクス
「カラーレイン・コスメティクス(Coloured Raine Cosmetics)」は、2013年に創業したメイクアップブランド。創業者のロレーン・ダウディは、肌の色や年齢、性別に関係なく楽しめるコスメを作りたいという想いから金融業界での仕事を退職。誰にとっても明るく高品質なコスメ作りを開始した。
現在は、リキッドルージュ、アイシャドウパレット、ファンデーションなど幅広い商品を展開。なかでもニュートラルなベーシックカラーから大胆なアクセントカラーまで12色のアイシャドウをセットした「ザ クイーン オブ ハーツ アイシャドウパレット」は根強い人気を誇っており、パレット1つで幅広いアイメイクが楽しめる。
ビューティー・ベーカリー
2011年にシングルマザーのカシミア・ニコルによって創業されたコスメブランド「ビューティー・ベーカリー(Beauty Bakerie)」。“お菓子作り”をテーマにしたパステル調のキュートなパッケージと、ほぼ全ての肌色に対応した豊富なカラーバリエーションのコスメを取り扱っている。
肌に優しい低刺激性のスキンケア製品も取り扱っており、いま話題のマルラオイルを配合した美容オイル「ウェイク アンド ベイク ハイドロティング フェイスオイル」は、多くのビューティー好きから支持を集めている。
デヒヤ・ビューティー
「デヒヤ・ビューティー(Dehiya Beauty)」は、古代アフリカの美の伝統とハーバリストたちからインスパイアされた植物由来のスキンケアブランド。創設者のミア・チェ・レディは、モロッコで北アフリカ固有の植物について学び、その優れた美肌効果を自身のスキンケア製品に取り入れようと考えた。
現在は、乾燥した肌にうるおいと栄養を与えるといわれる、モロッコ産のアルガンオイル、マルラオイル、ババスオイルなどを配合したクレンジング剤、美容液、フェイスマスク、美容ツールなどを発売。最近ではリップチークやハイライトなど、肌に優しいコスメ作りにも力を入れている。
ソウルタニカルス
6歳の子供をもつ母親である創業者のアヨ・オグンは、毎日、娘が涙を流しながら髪をほぐしているのを見かねて一念発起。カーリーヘアの悩みやニーズに応えたビーガンヘアケアブランド「ソウルタニカルス(Soultanicals)」を創業。頭皮と毛髪に嬉しい植物由来の美髪成分をたっぷりと配合したヘアケア製品を多数取り揃え、健やかな美髪へと導いてくれる。
スキンバター
モデルのタチアナ・エリザベス・プライスによって創業された「スキンバター(skin BUTTR)」は、ホイップシアバターをベースにしたボディクリームやスクラブを取り扱うボディケアブランド。天然由来の美肌成分をたっぷり配合し、気になる傷跡やセルライト、妊娠線を予防してくれるそう。ストロベリーココナッツやローズなどのフレッシュな香りも人気のひとつ。
黒人女性たちの手がけるコスメブランドは、数々のビューティートレンドを生み出してきているにもかかわらず、いまだに美容業界でのけ者にされたり、満足のいく収益が得られなかったりすることがある。
みんなが化粧品や美容を心地よく楽しめる多様性のある社会を目指すためにも、人種や性別に関係なく、それぞれのコスメブランドが描く理想に耳を傾け、サポートしていくことが大事だと言えるだろう。(フロントロウ編集部)