プログラミング言語に変化
黒人コミュニティが存在する各国で起こっている、黒人差別撤廃を訴えるBlackLives Matter(ブラック・ライヴズ・マター)をうけて、Microsoft傘下でソフトウェア開発のプラットフォームを提供するGitHubのCEOナット・フリードマン氏が、プログラミング言語として使用されている「マスター」や「スレーブ」といった単語を使わないように取り組んでいくことを発表した。
マスター(主人)とスレーブ(奴隷)は、奴隷制度や差別に関連する単語であり、GitHubでは、マスターの代わりに「メイン/デフォルト/プライマリー」を、スレーブの代わりに「セカンダリー」を使うと見られる。また、ブラックリストとホワイトリストの代わりには、アローリスト、デナイリスト、エクスクルードリストが挙げられている。
言葉には影響力がある
このような言葉に関しては、差別のつもりで使っていないという意見もある。しかし人間が歴史のなかで作り出してきた言葉には、それ自体にも歴史があり、影響力がある。
黒人俳優でアクティビストのオジー・デイヴィスは、「白さ」という単語の類義語は134個あり、そのうち44個はポジティブな意味で、10個がネガティブな意味を持つ一方で、「黒さ」という単語の120の類義語では、60個がネガティブな意味を持ち、ポジティブな意味を持つものはないと指摘する。
アイルランドのリムリック工科大学のフランク・ホートン教授はオジーのこの指摘を引用し、とくに捕食出版(※)の分野でこのような単語を使い続けることは、「人種差別の文化を反映するだけでなく、それを合法化し、永続させることになる」と、2018年に発表した論文で指摘している。
※研究論文を、内容の検証なしにそのままオープンアクセスの学術誌で出版する行為。
また、日本語でも夫のことをマスターと同義の“主人”や“旦那”を用いて呼ぶことがあるけれど、そこには配偶者間での主従関係の意味が含まれている。そのため、一部の保育サービスでは、ご主人や旦那さんという呼びかけの使用を禁止したことが話題となった。同企業では、それに加えて女性差別の意味合いがある“嫁”や“家内”の使用も禁止することも検討しているという。(フロントロウ編集部)