子供たちを人種差別主義者にしないために、親たちには何ができる? セレブママ&パパたちが行なっている家庭でのさまざまな取り組みを特集。(フロントロウ編集部)

自分の子供を「人種差別主義者」にしないために

 「Black Lives Matter(ブラック・ライヴズ・マター/黒人の命も価値がある)」(以下BLM)というスローガンを掲げたムーブメントが世界中で活性化するなか、長きにわたって多くの人が見て見ぬふりをしてきた黒人たちへの差別はもちろん、そのほかの有色人種への差別に関しても、ようやくスポットライトが当たり始めている。

 デモ拡大の引き金となった、黒人男性のジョージ・フロイド氏が白人警官により首元を膝で押さえつけられて息絶える“最後の瞬間”を収めた動画や、一部の暴徒化したデモ参加者たちによる略奪行為、警官によるデモ参加者への容赦ない暴力の行使など、テレビのニュースやSNSには、思わず目を伏せたくなるような、ショッキングな写真や映像が溢れている。

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 差別を受けた経験がある当事者でなければ、大人でも根底を理解するのが難しい人種差別問題。この問題について、幼い子供に教えるのは、「まだ早すぎる」、「ヘビーすぎる」といった声もあるけれど、差別の実態については理解できなくても、子供たちが“違い”に気づき、その“違い”を判断基準として行動し始めるのは、親たちが思っているよりもずっと早い。

 1997年にアメリカ心理学会を通じて発表された、200人の黒人と白人の子供たちを対象に行なわれたある研究によると、子供たちが肌の色によって人々を分類できるようになるのは、性別による分類が可能となるのと同じ、生後6ヵ月頃から。

 さらに、2歳半頃、つまり言葉が少しずつ話せるようになる年齢になると、すでに、自分と同じ人種の子供を優先して遊び相手に選ぶ傾向があるという実験結果も報告されている。

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 あらゆる差別は“違い”を受け入れられず、物事に優劣をつけようとすることで起きる。子供の脳や心は、スポンジのように吸収力が高い。だからこそ、平等とは何か、“違い”を尊重するとは何なのかを、かなり幼いうちから教える必要がある。


「人種差別問題」子供にどう話す?セレブママ&パパたちの答え

 ここで浮かんでくるのが、では、一体どんな風にして子供たちに人種差別について教えたらいいのかという疑問。

画像: 「人種差別問題」子供にどう話す?セレブママ&パパたちの答え

 もちろん、児童心理学や道徳教育のエキスパートなどによって書かれた文献や、専門機関からの情報を参考にするのが最も真っ当だが、フロントロウでは、人種差別撤廃を声高に訴え、世間の人々の啓発に熱心に取り組んでいるセレブたちが、自分の家庭で子供たちと一緒に実践している取り組みを紹介する。

クリスティン・ベル
「比較写真や映像を活用して矛盾を認識させる」

 映画『アナと雪の女王』の英語版でアナの声を務める俳優のクリスティン・ベルは同じく俳優のダックス・シェパードとの間に7歳と5歳の娘がいる。

 自身や夫と同じく白人である娘たちを「“反”差別主義者として育てたい」と米The Morning Beatにキッパリと語ったクリスティンは、BLMの活性化を機に、家族間で人種差別や不平等について話し合うようになったと明かしている。

画像: クリスティン・ベル 「比較写真や映像を活用して矛盾を認識させる」

 「ミシガン州で白人たちが警察に向かって怒鳴り散らしたり、銃を向けたりして抗議を行なっても何も起こらない。でも、BLMでは、人々が地面に座って平和的に抗議しているだけでも、警察から催涙ガスをかけられたりしてる。娘たちには、そういう事実を比較して見せてる」と、社会に実在する矛盾を証拠づける写真や映像などを活用しているというクリスティン。娘たちには、「この写真は何が問題だと思う? 何が見える?」と質問し、アメリカという国の制度に深く根付いている人種差別について、わかりやすく教えているという。

 クリスティンは、自分と同じく、子供を“反”差別主義者に育てたいという志を持つ親たちに有効利用して欲しいという思いから、子供たちに人種差別や不平等について説く絵本『The World Needs More Purple People(ザ・ワールド・ニーズ・パープル・ピープル)』を共同執筆している。


コートニー・カーダシアン
「自分が持つ特権について知る」

 10歳の長男と7歳の長女、5歳の次男を持つ3児の母であるリアリティスターのコートニー・カーダシアンは、「悲しみや不安を引き起こすものから自分の子供を守りたいというのは、母親としての生まれながらの本能。でも、人種差別によって引き起こされる痛みや苦悩は決して過去のものではなく、たとえ真実が居心地の悪いものであったとしても、自分には、子供たちに正直に、そして頻繁に、それについて話す責任があると思ってる」と、気まずい話題だからこそ、子供たちと話すべきだとインスタグラムへの長文投稿で綴っている。

画像: コートニー・カーダシアン 「自分が持つ特権について知る」

 「子供たちには白人の特権や黒人の歴史について、しっかりと話して聞かせる時間を取らなくちゃならない」と、自分たちが普通に受けている恩恵が、ほかの人種の人々にとっては当たり前のものではないということを教えたいと続けたコートニー。子供たちから、答えに詰まってしまうような質問をぶつけられることもあるというが、そんな時は「一緒に答えを探してみる」とも明かしている。


ケリー・ワシントン
「黒人の功績を学ぶ」

 6歳の長女と4歳の長男、そして夫の連れ子の14歳の女の子の母親である映画『ジャンゴ 繋がれざる者』のケリー・ワシントンは、黒人たちが虐げられてきた悲しく辛い歴史を知るだけでなく、黒人たちが世界の歴史に残してきた輝かしい功績などを通して、子供たちに威厳を持たせたいと米トーク番組『ジミー・キンメル・ライブ!』で語っている。

画像: ケリー・ワシントン 「黒人の功績を学ぶ」

 「黒人たちが『できない』と言われてきたことを教える前に、黒人の歴史とともに人種という概念を教えるべきだと思う。マサイ族の戦士やガーナの王国、エジプトのネフェルティティ女王やピラミッドとか。人種隔離政策やジム・クロウ法(※)、公民権運動の前に何があったかということも子供たちに教えれば、黒人の歴史が持つ豊かさや美しい複雑さ、優雅さについても理解できると思う。バスの後ろに追いやられることに抵抗を始める前の出来事もね」

※人種差別的内容を含むアメリカ合衆国南部諸州の州法の総称。


ジェイミー・オーティス
「異人種のおもちゃで遊ばせる」

 恋愛リアリティ番組『ザ・バチェラー』のシーズン16に出演したジェイミー・オーティスは、もうすぐ3歳になる長女に黒人の女の子の人形をプレゼント。

画像: ジェイミー・オーティス 「異人種のおもちゃで遊ばせる」

 子供にとって、最も身近な存在である、おもちゃを通して、肌の色の違いなど、本来は何の意味も無く、みんな平等なのだと教えようとしている。


リッキー・マーティン
「今起きている事の真実を伝える」

 夫のジュワン・ヨセフとの間に代理母出産を通じて授かった11歳の双子の息子たちと1歳の長女、0歳の三男を持つシンガーのリッキー・マーティンは、子供たちからの人種差別問題に関する質問に、嘘偽り無く正直に答え、真実を伝えるようにしているという。

画像: リッキー・マーティン 「今起きている事の真実を伝える」

 「子供たちから何が起きているか聞かれたら、親は率直に真実を伝えるべきだ」と米USA Todayとのインタビューで語ったリッキーは、「今は、不公平さについて話すべき時。肌の色が理由で扱いが違うなんて」と、人々の間にある“類似点や違い”についても子供たちと語り合い、それについて、いろんな考えを巡らせるのを後押ししているという。


ファーギー
「平和的デモに一緒に行く」

 元夫で俳優のジョシュ・デュアメルとの間に6歳の息子アクセル君がいるシンガーのファーギーは、ロサンゼルス市内にある自宅の近所で行なわれたBLMの平和的デモにアクセル君を同伴。

画像: ファーギー 「平和的デモに一緒に行く」

 友人家族の子供たちと一緒に、「人種差別はストップしなくてはならない」などと書かれたプラカードを持って通りを練り歩き、道行く車に向けてメッセージを発する様子を撮影した動画をインスタグラムで公開した。

 大人が密集する混雑した大規模のデモに子供を連れていくのは、さすがに少し不安があるが、近所で行なわれる小規模なデモならと、子供と一緒に平和的抗議に参加するセレブはほかにも。

 テレビドラマ『マッドメン』などで知られる俳優のジャニュアリー・ジョーンズは8歳の長男を、リアリティ番組『バチェラ―』に出演したアマンダ・スタントンは6歳の長女を連れてそれぞれ近所で行なわれたデモに参加する様子をSNSで公開していた。

画像: 左:ジャニュアリー・ジョーンズ、右:アマンダ・スタントン

左:ジャニュアリー・ジョーンズ、右:アマンダ・スタントン

 背景にある文化や人種により、各家庭ごとの取り組み方は違うけれど、子供たちが平等で平和な社会を愛する大人へと成長して欲しいと願う気持ちは、どこの親も同じ。そして、子供たちに何かを教えたいなら、まずは親自身がそれに関して理解と知識を深めることが大前提となる。これからの時代は、ますます国際化が進み異人種間の交流も増える。まずは、自分にできることから始めてみては? (フロントロウ編集部) 

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