舞台を“そのまま”撮影し、映像化された『ハミルトン』
トニー賞11部門受賞をはじめ、グラミー賞、ローレンス・オリヴィエ賞、ピューリッツァー賞と主要賞を数々獲得したブロードウェイ・ミュージカル『ハミルトン』が、ついに映像化。2020年6月11日より日本でもサービス開始となったディズニー公式動画配信サービス「Disney+ (ディズニープラス)」にて、2020年7月3日に世界同時独占配信となる。
配信を目前に控え、そのUS版トレーラーが公開。大迫力の映像に、期待は高まるばかり。
なお、世界同時配信を実現するために、配信開始のタイミングでは英語音声のみとなる。日本語字幕版の配信については、今後発表予定。
リン=マニュエル・ミランダとトーマス・ケイルの記者会見コメントが到着
今回、製作・脚本・音楽・作詞、さらに主演までも務める、リン=マニュエル・ミランダ、そしてトーマス・ケイル監督を迎え6月16日にリモート上で行われ、スタッフ&キャスト11名が参加したオンライン記者会見での二人のコメントが到着した。
舞台のために書かれた本作が映画公開用に作りなおされ、更に、ディズニープラスで世界同時配信されることについて、リンが本作制作時、ディズニーアニメーション『モアナと伝説の海』の楽曲制作を兼務していたこと、映画版『ハミルトン』公開が1年早まったため各国語字幕が間に合わず、まずは英語版のみの配信となることなど、二人が本作に対する熱い想いを語った。その全貌を、Q&Aでご紹介!
Q:元々は映画館で公開される予定だった本作が、ディズニープラスで7月3日に配信されることになったことについて
A(リン=マニュエル・ミランダ):まず、この舞台が評価されてヒットもした2015年のある時点で、スタッフ・キャスト全員がありえないようなすごい状況に置かれることになった。週に8回ショーをやっている間に僕ら全員に起きたことは、これまでまったく経験したことがないクレイジーな状況だった。
そして、かなり初期の頃に僕らが気づいたことが2つあった。1つは、もしショーを若い人たちにも観に来てもらうことができなければ、意味がないということだ。それで、僕らはHamilton Education Program Experienceというのを作って、どんなにチケットがショップで高騰していても学生たちが『ハミルトン』を観に来れるようにしたんだ。
そして、2つ目は劇場キャパの問題だった。リチャード・ロジャース劇場で1回に観てもらえるのは1,300人で、ずっと見たくても見られない状態が続いていた。だから、この素晴らしい舞台を記録して残せるように、すごく一生懸命努力したんだ。それで、僕を含むオリジナルキャストが去り始める前の週に、ショーをやっている間に撮影することが出来たんだよ。
そのおかげで、舞台を観ることが出来ない今、このショー、この瞬間のスナップショットという贈り物を手に出来たんだ。僕はそのことを本当にありがたく思っているよ。
Q:仕事を兼務することについて。リン、あなたは(同時期に)『モアナと伝説の海』の曲を書いていたんですよね?
A(リン=マニュエル・ミランダ):そうなんだ。映画の中で僕はとても疲れて見える。そういうふうに見えるだけのことをやってたんだよ。
Q:監督へ。これは舞台のために書かれたもので、あなたはそれを映画公開用に作りました。そして今、人々は本作を家で観ることになります。舞台のために作られたこの作品を映画的な作品にするために、あなたはどういう工夫をされましたか?
A(トーマス・ケイル監督):僕が最初にやらないといけなかったことはとても簡単だった。それは、舞台上のみんなや、ショーを作った人々を信頼することだった。なぜなら、もし題材が良ければ、それを讃えて表現しようとするのに適切な形態を見つけられるからだよ。僕にとって、この機会を使って、視聴者に同じ席を与えようとすることは早い段階から重要だった。劇場へ観に行くと、座席は前後左右さらに2階席やバルコニーまであって観客が見る地点がかなり違う。それは、劇場にいることの素晴らしさの一つなんだ。これまで一度も会ったことがない人々のグループと一緒に暗闇の中に座って、自分だけの経験をできるんだ。
そして、これは、映画にすることによって、それを観ている他のみんなとの関係を、視聴者に与えられる機会だと感じられた。なぜなら、それは同じものだからだよ。僕らは3日間にわたって撮影した。ライブ・パフォーマンスは日曜日のマチネーと、火曜日の夜とで、2回、通しで撮影した。ショーを止めたりしなかった。それから、日曜の夜と、月曜日丸1日、そして火曜日の朝とステージに行って、ショーの中に入り込む違う撮影をした。
僕の目標は、ショーの中に入り込んで、カンパニー全員によって、本質的に、美しく、作られたショーを讃えることだった。これは、舞台上でみんながストーリーを語るショーなんだ。映画の中で、クローズアップは、観客に親密さを与えてくれる。でもそれはまた、全体像を見るのを妨げることになりうる。だから、映画を作っている間ずっと、僕らは劇場にいるんだということを決して忘れないようにするにはどうすればいいか、深く話し合ったよ。もちろん、劇場にいるということには、劇場が閉まっている今は違う重要性がある。なぜなら、今僕らはこのショーを劇場で上演することが出来ないし、観客も劇場に行くことが出来ないからだよ。
このカンパニーは、何かを週に8回上演するというのがどういうことか、それらをも体現している。僕らは3日間にわたって撮影したけど、彼らはすでに何百というパフォーマンスをやっていたし、そこに行き着くために、何百、何千というパフォーマンスを、週に6日、週に8回のショーをやってきたんだ。
その背景までを記録して公開することが、僕の責任だったんだ。劇場に観に行くのがとても大変というハードルを下げて、もっと多くの人々に本作を見てもらえるようにするためにね。
Q:『ハミルトン』は、アメリカでとても高く評価されています。でも今回の映像作品は、ディズニープラスで多くの他の国々でも配信されます。アレクサンダー・ハミルトンのストーリーは、アメリカ以外の観客にとっても重要なものであり続けると思いますか?
A(リン=マニュエル・ミランダ):そう願っているよ。『レ・ミゼラブル』はフランスのお話しだけど、フランス以外の国々の観客の共感を呼ぶのと同じようにね。革命は普遍的なんだ。与えられた人生で何をするかというストーリーも、願わくば、普遍的だ。今日は、謝るのにちょうど良い機会だね。当初、来年10月に映画館で公開する時に、多言語版をつけようと思ってたんだ。でも、公開時期が繰り上がったから、各国語の字幕は、出来るようになって、準備が出来たものから足していくことになるよ。だから、それは今後引き続き作業を進めていくことになる。このショーの中の何千という言葉を翻訳しないといけない人々には申し訳なく思うよ。
でも、僕らが願っていることは、、、僕はこの話を何度も話したことがあるんだ。日本の『屋根の上のバイオリン弾き』のオープニングナイトに、観客がスタッフのところにやって来て言ったんだ。「すみません。あなたたちはこのショーに関わっているんですか?」と。彼らは「そうだ」と答えると、その観客は「この舞台はアメリカのミュージカルだと聞きました。なぜそんなことが可能なんでしょうか?これはすごく日本的ですよ」と言ったんだ。だから、僕らが願っているのは、もし僕らが十分な技能を持って語っていれば、それは、生まれた国を越えて、人々の共感を得るだろうということだよ。
Q:リン、今回の舞台を撮影した映像作品ではなく、あなたは以前に『ハミルトン』の映画版を作りたいという話もしていましたが、その予定は?
A(リン=マニュエル・ミランダ):そのことについて考えるのは難しい。なぜなら僕は、今回の映像作品をとても誇りに思っているからだよ。6年、7年かけて書いた舞台を、こんなに素晴らしい映画的ビジョンで、世界中の多くの人々に見てもらえるなんて、すごく稀なことだからだよ。僕は、世界中の人々に今回の映像作品を見てもらえるようになったことを、本当に誇りに思っているよ。
いよいよ、配信まであと3日に迫った『ハミルトン』。この注目作は、ディズニープラスで2020年7月3日に世界同時独占配信予定。また、リン=マニュエル・ミランダ出演のディズニー映画『メリー・ポピンズ リターンズ』や、『ティモシーの小さな奇跡』、彼が音楽でかかわっている『モアナと伝説の海』、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』もディズニープラスで配信中。(フロントロウ編集部)