「この質問」に対する答えが『ノー』なら…
バラク・オバマ元米大統領の妻で、半生を綴った自伝『マイ・ストーリー(原題:Becoming)』が話題のミシェル・オバマ夫人が、ドラマ『スキャンダル 託された秘密』などのプロデューサーで知られるションダ・ライムズと行なった米Harper's Bazaarの対談企画で、選挙に行かない&政治に興味がない若い人たちに向けてこんな質問を投げかけた。
「クラブで夜遊びする時の服をあなたはおばあちゃんに選んでもらう?自分の車や一人暮らしする部屋をおばあちゃんに選ばせる?」
よほど理解があって、センスの高い祖母をお持ちの方をのぞいて、答えは間違いなく「ノー」だろう。恐らく、クラブに行く時の服を祖母や祖父に選んでもらったら、自分の理想とは程遠い姿になることは容易に想像がつく。車にしても、住む部屋にしてもそれは同じ。
選挙に行かない、もしくは投票しないことがもたらす結果は、この質問の答えと通ずるものがある。自分の着る服や乗る車、住む部屋は自分で選びたがるのに、今後の人生を左右するかもしれない大きな決断は赤の他人、それも自分とは年齢も考え方も価値観も何もかも違う人に選ばせるのは、矛盾していないだろうか?
税金の額や分配方法、未知のウイルスによる脅威や自然災害が発生した際の対策及び復興計画、子育て支援、雇用支援など挙げたらきりがないが、こういった問題に最終的に決断を下す「誰か」が、自分が投票した選挙で選ばれた「誰か」と、自分が投票しなかった選挙で選ばれた「誰か」では意味が変わってくる。
ミシェルは、「自分が投じた一票が日々の生活に与える影響に気付かない人も多い。いつも通り電車も動いているし、子供も学校に行っているし、仕事もある。“たった一票で何が変わるんだ”って思うわよね?」と選挙に行かない人たちの心理に理解を示しつつも、選挙で投票しないと、自分とは違う価値観の持ち主に自分の人生や生き方を決めることを許可してしまうことになると説明。自分が投じた一票が今すぐ社会に変化をもたらすわけではないが、投票は人々に「発言権を与えてくれるもの」だとして、選挙に行くことの重要性を訴えた。
選挙に行かない&政治に興味ない人が増加
日本でも7月10日(日)に参議院選挙が実施されるが、問題となっているのが若い世代の政治離れ。
今、アメリカでは大統領候補の高齢化が問題視されているが、日本でも政治家の高齢化に加えて投票者の高齢化も加速しており、このままだと未来を担うはずの若者が取り残されてしまう可能性が指摘されている。
しかし、これまで政治にまったく興味がなかったという人でも、新型コロナウイルスのパンデミック下での政府や自治体の対応に不満や不安を抱いた人は多いのではないだろうか。ミシェルも言っていたが、未知の脅威に晒されたことが、皮肉にも一部の若者や政治に無関心だった人たちの意識を変えるきっかけに。とくに、アメリカでは黒人に対する人種差別撤廃を呼びかける抗議運動「Black Lives Matter(ブラック・ライヴズ・マター/黒人の命にも価値がある)」が活発化している影響もあって、若い世代を中心に投票を呼びかける動きが強まっている。
ちなみに、日本では芸能人が政治的な発言をすることはタブー視されているが、アメリカではセレブが政治的な発言をしたり、投票を呼びかけたりするのは普通であり、むしろ有名人という立場を最大限に利用してファンに政治参加を促している。
若い世代の政治離れを食い止める策として、最近ではシンガーのアリアナ・グランデが、アメリカで選挙に投票する前に必ず登録する必要がある「有権者登録」ができる特設コーナーを自身のツアー会場に設置。同じくシンガーで“ティーンのカリスマ”と言われるビリー・アイリッシュも自身のツアーで同様の取り組みを実施しており、若者の投票率向上にひと役買っている。(フロントロウ編集部)