カリスマ的な人気を誇るラッパーのカニエ・ウェストが、11月に行われるアメリカ大統領選挙に出馬する意思を表明。けれど、実際に出馬するには色々と問題が…?(フロントロウ編集部)

カニエ・ウェストが大統領選出馬を表明

 音楽界で最も名誉ある賞と言われるグラミー賞をこれまでに21回も受賞し、さらに自身が
クリエイティブ・ディレクターを務めるアパレルブランド「YEEZY(イージー)」を大成功に導くなど、本業以外でも活躍するラッパーのカニエ・ウェストが、今から約4ヵ月後の11月3日(火)に行われるアメリカ大統領選挙に出馬する意向であることがわかった。

画像: カニエ・ウェストが大統領選出馬を表明

 米現地時間7月5日に自身のツイッターを更新したカニエは、そこで「俺たちは今、神を信頼し、みんなが持つビジョン(未来像)を統一し、未来を築くことでアメリカの約束を果たさなければならない。俺はアメリカ大統領に立候補する。#2020VISION」と唐突に宣言。

 カニエのこの発言が本気かどうかはわからないが、彼の妻でリアリティスターのキム・カーダシアンはこのツイートに“アメリカの国旗の絵文字”で反応し、以前からカニエと親しくしているテスラ社やスペースX社のCEOを務めるイーロン・マスクは「私は君を全面的に支持する」とコメント。また、新曲「Ego Death(エゴ・デス)」でカニエとコラボしている後輩ラッパーのタイ・ダラー・サインも、「イェ(※カニエの愛称)を大統領に」と“カニエ・ウェスト大統領誕生”に乗り気な様子を見せている。

 ラッパーとしてカリスマ的な人気を誇るカニエが米大統領選への出馬を表明したことに、彼の身内やネット上はかなり盛り上がっているが、音楽では一流でも政治に関してはまったくのど素人であるカニエが、大統領選本番まで4ヵ月をきったこのタイミングで出馬の意思を見せたことに不快感を示す人たちも。

 もし先ほどの発言が本気なら、カニエは独立系候補として出馬し、民主党の候補者でオバマ政権時代に副大統領を務めたジョー・バイデン氏と、これまでカニエが公に支持してきた現職のアメリカ大統領で共和党の候補者であるドナルド・トランプ大統領と対峙することになる。しかし、仮にそうなった場合、トランプ大統領の支持者がカニエになびく可能性は低く、必然的にバイデン氏の支持者がカニエに“鞍替え”をして、本来、バイデン氏が獲得するはずだった票がカニエに流れることが予想される。そのため、トランプ大統領に有利な展開になることを懸念する人たちから、出馬を大反対する声があがっている。

画像: 左からドナルド・トランプ大統領、カニエ・ウェスト、ジョー・バイデン元米副大統領。

左からドナルド・トランプ大統領、カニエ・ウェスト、ジョー・バイデン元米副大統領。

 また、出馬を表明するのは自由だが、いざ本当に出馬するとなれば、連邦選挙管理委員会への登録や公約の提示、一定数の有権者による署名が必要とされるほか、すでにテキサス州、ノースカロライナ州、ニューヨーク州、メイン州、ニューメキシコ州、インディアナ州では独立系候補者の登録を締め切っているため、選挙の際にこの6つの州では投票用紙にカニエの名前は記載されない=不戦敗が確定している。

 例えば、米BallotPediaによると、カニエの自宅があるカリフォルニア州の投票用紙に彼の名前が記載されるようにするには、8月7日までに196,964人の有権者の署名を集める必要があるという。

2015年に「2020年の大統領選出馬」を宣言していた

 ご存じの方も多いと思うが、カニエが大統領選への出馬意欲を見せたのはこれが初めてではなく、2015年に出席したMTVビデオ・ミュージック・アワード(VMA)で行なったスピーチで、「俺は2020年の大統領選に出馬にすることを決めた!」と声高に叫んだことがすべてのはじまり。

 ビッグマウスで知られるカニエの発言を当時は誰も本気にしていなかったが、2016年の大統領選で公職経験ゼロのトランプ大統領が当選したことを受けて、「私たちを救えるのはカニエしかいない」「トランプだったらカニエの方がいい」といった声が相次ぎ、2020年の大統領選にカニエを推す「#Kanye2020」というハッシュタグまで誕生した。

カニエの妻キムの異父妹でリアリティスター兼実業家のカイリー・ジェンナーが2015年に行なった投稿。

 また、2020年ではなく、2024年の大統領選への出馬を匂わせるポスターが、ロサンゼルスやニューヨーク、シカゴをはじめとするアメリカの主要都市に貼られたこともある。

過去に「政治的な問題発言」を連発

 元祖・お騒がせセレブとして、これまでに度々問題発言を連発してきたカニエ。セレブゴシップへの関心が深い人たちにとっては、シンガーのテイラー・スウィフトとの“世紀のバトル”が代表的だが、そのほかにも今後政治に関わるつもりがある人間としては致命的な言動を繰り返してきた。

「奴隷制度が400年間も続いていたんだ。400年もあったら選択肢のように感じる」

「アメリカ合衆国憲法修正第13条を廃止し、刑務所から出所した人たちにも仕事を供給する」(※のちに「廃止」ではなく「改正」と言いたかったと釈明)

「俺たちは洗脳されてる。もう何年ものあいだ民主党の奴らはフードスタンプ(※)で俺たちを釣って、民主党に投票させてきたんだ。(中略)そして俺たち(黒人)に子供を中絶させた。(旧約聖書のモーセの十戒に)“汝殺すなかれ”とある」(※アメリカで低所得者向けに行われている食料費補助対策で公的扶助のひとつ)

 これらはほんの一部にすぎないが、今こういった過去の発言が掘り起こされて、再び問題視されている。たとえ現在の彼の考えや思想がこの頃とは変わっていたとしても、実際に出馬することになれば、説明責任を果たす必要がある。果たして、カニエは本当に2020年のアメリカ大統領選挙に出馬するのだろうか? 続報が待たれる。(フロントロウ編集部)

 

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